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勇者?魔王?いいえ村人です。  作者: 蒼伊悠
二章
26/27

11:合流

本日8話目……!?



 「ソフィアさん、近いですよ」

 「カイト殿! 本当にですか!」

 25階層にやってきた俺とソフィアさんの二人、ファフニールの存在を段々と近くに感じるようになってきた。

 思ったよりも早く縮まっているように感じるって事は向こうも俺を探してるって事か。


 

 「カイト殿、屍鬼です」

 地下に下っている間にもモンスターは現れる。


 屍鬼と呼ばれる灰色の獣のような相貌のモンスターだ。


 発達した筋肉から発せられる瞬発力は高く。意外と素早いモンスターだ。



 だが、時間なんてかけていられない。


 黒剣に魔力を流しすれ違い様に一閃させる。

 首を跳ねると屍鬼は地面に倒れてジタバタとする。

 高い生命力のため死にはしないがこうすれば暫くの間は戦闘不能になる。



 「カイト殿、何か段々と剣速が早くなっているような……」

 「ソフィアさん、そんな事よりも急ぎま……いえ、大丈夫ですね」

 急激にその存在を近くに感じるようになってくる。間もなくって所か、その予想は正しかった。



 「カイト」

 下の階層へ行くための階段からファフニールが姿を見せる。

 見えるのはファフニールだけだ。


 「ファフニール殿、お一人ですか……」

 見えるのはファフニールだけだが、ソフィアさんは聞かずにはいられないのだろう。

 

 「一人? 何を言うておるのじゃ」

 「……はぁ、はぁ、早く……すすんで」

 「あ、押すでないわ」

 前に押し出されるようにファフニールが移動するとその後ろには水色髪の少女がいた。

 あの幼い感じは今でも覚えている。ミリアさんだ。



 「ミリア殿!!」

 その姿を認識した瞬間ソフィアさんは弾けるようにミリアさんに駆け寄っていく。


 「ソフィ……ただいま」

 「よかった。ミリア殿、よかったよぉ」

 ソフィアさんとミリアさんはお互いに抱き合い涙を流している。


 抱きついている二人を尻目にファフニールが俺の元へとやってくる。


 「のう、カイト、我等もあれやるか?」

 「茶化すなよ……でも、ファフのお陰でミリアさんの場所もわかった。ありがとうな」

 「よいのじゃ、あやつと出会ったのは偶々よ。それよりカイト、お主に伝えないといけないことがあるのじゃ」

 「伝えないといけないこと……?」


 ファフニールが真剣な様子で話そうとしている。

 ミリアさん捜索が終えて、更に嫌な予感がしてくる。

 


 「おい、ミリアとやら、お主が全て見聞きした事じゃ、お主が話すがよい」

 「ちょ、ファフ!!」

 今は感動の再会中だというのに、少しは空気を読んでくれ。


 「そう、だった。ソフィ、大変な事になってる。街が、きけん」

 ミリアさんはファフニールの言葉で思い出したのか慌ててソフィアさんから離れる。



 「ミリアさん、無事でよかったです。俺の事、覚えていますか?」

 ミリアさんも話す気になったようなので、挨拶だけはしておく。最後に会ったのは半年以上前だ。忘れているのならそこから話す必要もでてくる。


 「おぼえてる、最初に死んだ、来訪者だし、色々と衝撃だったから、覚えている」

 「ああ、唯一の村人ですもんね」


 強力な職業やスキルを持つ来訪者の中で唯一の村人、逆に覚えているのかもしれない。


 「それだけ、じゃないけど。ま、いい。話す」

 気になる事を呟いたミリアさんだが、そのまま話始める。

 内容は、一週間前に気づいたら神殿のような所にいたということ、そこには他にも何人か行方不明になったであろう人物たちがいたこと、そこで迷宮の主とやらがいたこと。そして、迷宮のモンスターが迷宮のモンスターを食べるという異常があったこと。

 ミリアさんはこれまでの経緯を話した。


 「____それで、逃げていた所でファフに会ったと」

 「うん、そう」

 「ソフィアさんは迷宮のモンスターが迷宮のモンスターを襲う理由って分かりますか?」


 「いや、わかりません。何の為に『食べて』いたのか、皆目見当つかないですね」

 「そうですか……」


 また、この迷宮の謎が増えた。

 迷宮の主とやらが悪巧みをしているとファフニールに言ってる事から無関係とは云えないだろうが、その意図が分からない。


 それに、気がかりな事がもう一つ。


 「なぁ、ファフ。迷宮の主とやらは、自分は魔王の配下と言ってたんだよな」

 「ああ、そうじゃ。我は誰かは知らんが、魔王の配下というのは間違いじゃないじゃろ」 


 「そうか……」

 「なんじゃ? 引っ掛かりがあるのか?」

 「いや、これは俺の世界での話なんだけど、魔王というのは勇者と敵対しているからな。勇者の天神が迷宮にいたというのに何で魔王の配下の奴が、天神を放置しているのかなって」


 もし、魔王と勇者が敵対関係ならば天神に対して何かしらの手は打てた筈だ。天神が迷宮に潜った頃なんてまだまだ弱かった筈だろうし、放置していた意図が分からない。


 手を出せない理由があるのか、はたまた、悪巧みとやらの存在をばれないために放置したのか、そもそもこの世界において魔王と勇者は敵対関係にないのか。


 やはり、勇者関係の事を調べておくべきだった。

 


 「いえ、カイト殿。この世界でも大昔から魔王が人々を脅かし、それを勇者様が退治しているんで敵対関係にはありますよ」

 

 「ソフィアさん。それって裏を返せば勇者が現れている以上魔王もまた現れている可能性が高いって事ですよね」

 「あっ……だから、来訪者の皆様は王都に」

 「そうだと思います」


 恐らくそうだろう。眼鏡男は勇者が現れている以上魔王も現れていると考察した。だから、危機を伝える為に王都へと向かったんだろう。だが、分からないのは何故3ヶ月前後もの間王都へと向かわせなかったということだ。魔王の存在なんていの一番に伝えるべき事だというのに。


 まぁ、今考えても詮なき事か。


 「しょう、ねん。」

 「はい?」

 ミリアさんが声をかけてくる。見た目は幼いミリアさんが俺を少年呼ばわりしてくるのは違和感が凄い。

 というより、この人は幾つなんだろうか。


 「助けに、きてくれて、感謝する」

 「いえ、ソフィアさんの頑張りにつられただけです。それに、無事だったのも一週間もの間に耐え続けたミリアさんの頑張りです」


 恐らく行方不明になった他の者達はとうに亡くなっている筈だ。一週間もの間モンスターがいる空間で生き延びるのはそう簡単ではない。

 


 「そういえば、ミリアさん。俺を最初に死んだ者って、他にもいるような口振りでしたね」

 

 「……マナブとチズル。優しい二人、だった」

 「そうですか。迷宮で?」

 「……そう」

 迷宮のモンスターは様々な種類がいる。初見では対処しずらいモンスターもいるだろうし、全員無事なんてのは都合が良すぎたか。いや、二名の犠牲で済ませたのは凄い事なのかもしれない。



 「カイト、親しいものじゃったのか?」

 「いや、同郷の者。関係で表すならそれだけだったよ」


 高橋学と紀勢千鶴。二人とは別段友達という関係ではなかった。高橋について知っているのも眼鏡をかけた気弱そうな男というのと園芸部に入っているということしか知らない。

 紀勢についても少女漫画をよく読んでいた位しか知らない。


 だけど、思いの外ショックを受けていた。

 この世界は死が身近だと魔の森で散々感じてた筈なのにだ。



 「少、年。私からも一ついい?」

 「え、はい。どうぞ」


 俺の傍に近寄ってくるミリアさん____俺はそのミリアさんに剣を突きつけていた。


 「カイト殿!!」

 俺の行動にソフィアさんが驚いている。だが、そちらを見ることはしない。

 

 「どういうつもりですか」

 俺に近づいてきた瞬間、ミリアさんは魔力を練り上げていた。

 殺気と共に俺へと向けようとしているのは明らかだった。


 「驚いた……気付かれるとは……だからこそ、きく。貴方達は何者だ」

 「言ったでしょう。俺はカイト、ミタライ。只の村人ですよ」

 「村人は、私が練り上げた魔力を察する事もできない。それに、あのモンスターはそこの少女、を知っていた。どう、説明する」

 あー、これはやってしまった。

 エイファスと名乗るモンスターとファフニールのやり取りを見ればファフニールが普通の少女ではないというのはわかってしまう。ミリアさん目線ではファフニールもモンスターの同類と見られてしまうのか。


 ただ、龍だというのは明かせない。

 彼女らがもし誰かにその正体を伝えてしまっては、ファフニールを討伐しようと刺客を差し向けられるかもしれない。



 「カイト、もうよいのじゃ」

 ファフニールが何を言おうとしているのか、分かってしまった。止めることは出来ない。彼女だって理解しているのだ。俺が何を言ってもミリアさんの警戒を解くことは出来ないと、話によるとミリアさんさファフニールの力の一端を目の当たりにしてしまったのだから。



 「我を知りたいじゃと? なら、とくと見るがよい。人間」

 ファフニールは左腕を突き出す。透き通るような白い肌が黒く染まっていく。黒い肌には鱗がビッシリと這っており、指先が鋭くなっていく。


 「ファフニール殿!」

 「っ!」

 ソフィアさんとミリアさんがファフニールの変化に驚愕している。俺も驚いていた。俺も人間体から一部を変化させるのを見るのは初めてだった。


 「我は暗黒龍ファフニール。それが我の真の姿じゃ!」


 黒く光沢のあるその腕はまさしく、かつて、俺達の前に現れた龍の腕そのものだった。


 

 「ファフニール殿か、ど、ドラゴンですと……」

 「おどろいた。まさか、いや、でも、あれはドラゴンの腕」

 「……ふぅ、仕方ないですね」


 ミリアさんに突きつきていた黒剣を鞘にしまう。

 バレてしまったのなら説明するしかない。


 「ソフィアさん。転移魔法の誤作動で俺だけ違う所に飛ばされたといいましたけど、あれ嘘です。俺は龍であるファフニールに命を救われたんですよ」

 

 「ファフニール殿にですか??」

 ソフィアさんが困惑するのも分かる。何せ、俺達を襲ってきたファフニールが襲う対象である俺を助けたのは矛盾している。


 「まぁ、色々あって助けてもらったんですけど、迷宮の主と俺達は無関係。これだけは断言できます」


 ミリアさんに視線を向ける。未だに警戒を解いていないのは彼女だけだ。


 「少年、それは不可解。ドラゴンが少年を助けた事も少年がこの街に戻って、くることも。不可解。タイミングが余りに良すぎる」


 「それは、そうですね。でも、ミリアさんはファフと迷宮の主が敵対しているのは目撃しているんですよね。それに、俺達の目的は簡単ですよ。来訪者の皆に会いに来たんです」


 ミリアさんの視線が一段と鋭くなる。


 「それは、置いていった、ことの復讐の、ため」

 「そう、捉えられましたか。違いますよ、まぁ、文句を言いたい気分ですけど、クラスメイトに、来訪者に復讐する気なんて欠片もありませんよ」


 「……そう、わかった」

 信じて貰えないとも考えていたが、ミリアさんは呆気なく警戒を解く。あまりに早く納得されることにこっちが驚くレベルだ。


 「考えるのメンドイ、敵対しないなら、もういい。そもそも、敵対するなんて言ったら、殺されちゃう」

 先程までキリッとしていたのに、急に瞼をだらしなく下げて眠たげな雰囲気に変わる。


 「殺しませんよ。というより、悪巧みとやらの対処しましょうよ」

 「そ、そうですね!! 私よく状況について行けてませんが、カイト殿の言う通り今は迷宮の主の対処を考えましょう」

 ソフィアさんもファフニールの正体を知っても特に敵対してくる様子がないのは助かる。発言していた通り、迷宮の主の事に集中しているのかもしれない。



 「なんじゃ、我をもっと恐れると思っておったのに、つまらんのじゃ」

 正体を表したのに大したリアクションを得られずにいるファフニールの反応もどうかと思うが、取り敢えずはよしとしておこう。



 

 

後一時間位で書き終わりそうなんで、終わったら投稿します!!


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