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勇者?魔王?いいえ村人です。  作者: 蒼伊悠
二章
22/27

7:ミノタウロス

本日4話目かな?

まだまだ投稿しますよ!!


 扉を開けた先にそいつはいた。

 四つの円柱に石畳の床。闘技場のような部屋の真ん中には身長五メートルをも越えるであろう巨漢に顔が牡牛のモンスターが屹立していた。

 異常な程膨れ上がった筋肉と俺の背丈の倍近くある黄金の戦斧を握っている。


 ミノタウロス。迷宮のボスとしてこれだけ相応しいモンスターもそういないだろう。

 地球では化物と呼ばれた神話のモンスターが目の前にいる。


 ここまで迷宮の中で出会ってきたモンスターよりも遥かに強大な圧力を放つミノタウロスに思わず笑みを浮かべてしまう。


 「ファフ、本当に俺が貰ってもいいんだよな」

 「ああ、よいぞ」

 今さら撤回しても遅いがファフニールは了承してくれた。

 良かった。心おきなく戦える。



 「カイト殿、待ってください。変です」

 戦闘モードに切り換えた俺にソフィアさんが声をかけてくる。


 「変とは?」

 「ボスであるミノタウロスです。私は何回か戦った事がありますがどれも二メートル程の背丈でしたしあそこまでの威圧感等ありませんでした……なんなのだあれは」

 ソフィアさんは冷や汗を滴ながらミノタウロスを注視している。


 ソフィアさんの言っている事が正しいのなら確かに変だ。

 目の前のミノタウロスはソフィアさんの情報とはあまりに違い過ぎる。偶然で切り捨てるにはタイミングも悪い。


 「ソフィアさん。この迷宮事態にも異変が起きているのかもしれないですね」

 「カイト殿?」

 「リリアさんが言ってたんです。最近のモンスターはおかしいと。それならば迷宮のモンスターに異変が起きても何らおかしくないでしょう」

 理由は分からないが目の前のミノタウロスに異変が起きてるのは確実だ。


 「カイト殿、ここは全員で慎重にいきましょう。目の前のあれは未知数すぎます」

 「エルフごときが我が旦那を侮辱するでないわ。カイトが一人で行くといったんじゃ、カイトに任せればなんの問題もないわ!!」

 ミノタウロスを見てもなおファフニールは俺の方が上と判断しているのかその言葉に嘘は感じられない。


 正直な所、俺自身もミノタウロスに負ける気が微塵もしなかった。


 だが、俺はまだ自分の力をソフィアさんに示していない。

 ソフィアさんは俺が一人でいくことに難色を示していた。


 「駄目です。あれは危険すぎます! 貴方は平気かもしれませんが、カイト殿は村人なのです!! 危険な目に合わせる事などできません!


 そう、ソフィアさんの危惧は間違っていない。

 俺は村人なんだ。目の前のミノタウロスクラスを相手するのは本来無謀だ。


 ソフィアさんは間違っていない。

 

 「お主は何もわかってらんのぉ」

 だが、ソフィアさんの言葉を間違いと断じてくれる人が俺にはいる。

 

 「カイトは我の認めた男ぞ。あの程度精霊の力に頼らずとも倒せるわ!!」

 青筋を浮かべたファフニールは然り気無くハードルを上げながら叫んでくれる。


 全く庇うならしっかりと庇ってほしいものだ。ハードルを上げやがって。でも、そうだな。お陰でやる気はみなぎってきた。


 「ソフィアさん。俺いきますよ」

 「な、カイト殿! 駄目です、危険すぎます! 私はもう仲間を失いたくないんです! せっかく貴方が生きていると知ったのにまた失ってしまったら私は……」

 ソフィアさんは涙を流しながら掴んでくる。

 そうか、彼女はミリアさんの二の舞になってほしくないと必死に俺を止めようとしてくれてるのか。


 「大丈夫ですよ。ソフィアさん。見ていてください」

 「カイト殿、でも貴方は……」

 「はい、俺は村人です。でも、俺は世界最強の村人なんですよ」


 なんせ、神でさえ笑った程の村人だ。



 「カイト殿……わかりました。ですが、少しでも危険だと思ったら私は直ぐに加勢しますよ!」

 「はい、わかりました」


 扉を越えて一歩ボス部屋へと足を踏み入れる。


 『GUOOOOO!!』

 今まで敵意を向けてこなかったミノタウロスが一歩足を踏み入れただけで敵意を叩きつけてくる。


 「ふは!」

 濃密に叩きつけられる殺気に感情が昂る。

 

 「こいよ、牛肉にしてやる」

 『GUOO!!』

 怒ったミノタウロスがその巨体を屈める。

 起き上がる力を利用して跳ねるようにミノタウロスは突進してくる。


 巨体からは想像出来ないほど速い。

 

 精霊術で迎えうつのは簡単だ。だが、今はファフニールによって精霊術を使えない状態にいる。


 なら、こっちも攻めるしかない。

 足に力を溜めて思い切り地面を蹴る。


 『GUOO!!!』

 駆けてきているミノタウロスは身を捩り戦斧を振るう体勢をとる。

 

 

 『BUMOーーーー』


 ミノタウロスは戦斧を地面に叩きつける。

 その瞬間地面が揺れた____そう錯覚するほどの轟音が響く。

 地面は深く抉りとられ戦斧は地面に埋まり衝撃の凄まじさをひしひしと伝えてくる。


 今のはミノタウロスによるパフォーマンスだ。自分の力はこれだけあるぞと己が力を誇示してきた。



 本当に面白いじゃないか。



 腰に提げていた剣を抜く。

 相手が力を見せてくれたんだ。それならば俺も力を示さないといけない。


 石畳の床を蹴り、ミノタウロスに迫る。


 駆けながら剣に魔力を流していく。

 一歩進む事に魔力を流し、更にもう一歩踏み込む時には更なる強化を施している。ミノタウロスへと辿り着くまでおよそ五歩。

 その間硬度をひたすら高めていく。


 「はぁぁぁぁぁ!!!!!」

 剣を振るう。型も何もあったものではない力任せに叩きつける。


 ミノタウロスとて迫る剣に対して無防備ではいない。

 身を捩り落ちてくる剣を破砕するため戦斧を剣へと叩きつけてくる。


 魔力で硬度を高めた漆黒の刃とミノタウロスから放たれる暴力を含んだ戦斧がぶつかりあう。


 衝撃で石畳の床が陥没し、衝撃波が髪を揺らす。

 

 「あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 『BUMOooooooo______』

 叫んで自身を鼓舞する間にもお互いに交差する刃に力を込めて相手を屈服させようとする。



 ミノタウロスの力は強い。

 素の状態で俺と遜色のないパワーを身に宿している。

 いや、体が小さい分俺の方が圧されるているかもしれない。

 だが、負けられない。この世界には魔力があるスキルがある。


 肉体をどんどん強化していく。

 俺が振り下ろしているのに対して、ミノタウロスは下から中途半端に身を捩っている事もあり、力が戦斧に十全に伝わっていない。


 徐々にミノタウロスの戦斧が押し込まれていっている。



 「どうした? こんなものじゃあないだろ」

 俺はまだまだ余力を残している。戦いはまだ前哨戦に過ぎない。お前だってそうだろう?

 

 身に宿る力をもっと振るいたいはずだ。


 『GUooooooooo____』

 茶色い体毛を生やしていたミノタウロスの毛が真っ赤に染まっていく。ミノタウロスの力が高まっていく。


 「これは、狂化スキルか」

 ミノタウロスが持っているスキルは咆哮と、狂化、戦斧の三つだ。この体全体を赤に染めた現象にはそれしか思い当たらない。



 『BUMoooーーーーーー』


 真っ赤に染まり更なる筋肉の発達を果たしたミノタウロスは戦斧を一気に振り上げる。


 凄まじい暴力パワーに俺の体が宙を浮く。

 宙を浮くということはその瞬間の俺は剣に力を伝える事が出来ない。


 そして、それを見逃す程ミノタウロスは甘くない。


 振り上げた戦斧を有り余る暴力パワーに物を言わせて無理矢理振り下ろしてくる。


 直撃したら只ではすまないであろうそれを宙を浮きながらも剣で受け止める。


 戦斧が剣とぶつかると衝撃の勢いそのままに俺の体が飛んでいく。


 身を翻して地面に着地する。


 「凄いな。やっぱり人型のモンスターは体の使い方が上手い」

 龍やフェンリル等のように大型のモンスターは存在が化物ではあるが、やはり人の形をしたモンスターは体の使い方が人間に似ているため連撃を行ってくる傾向がある。



 知恵もあるから見事に隙を突いてくることもする。

 

 「そっちが狂化ならこっちは強化でいくぞ」

 体に纏う強化を更に強力なものにしていく。

 この状態でオークを殴ったら一発で顔が吹き飛んでしまいそうだ。


 「____お前はそうではないよな」

 『Buooooooo』

ミノタウロスは応えるように叫ぶ。


 「それでいい!!」

 再度、ミノタウロスとの距離を詰める。

 剣の強度も同時に上げていく。

 


 先程は無様な姿を見せてしまったからな。今度こそ俺の力を見せる。


 俺は半年でこれだけ成長出来ましたと____ソフィアさんに見せないといけない。


 未だにソフィアさんは此方を心配そうな眼差しで見てきている。情けない。


 

 「お前は強敵であってくれよ!!」

 その方が力を示せる。

 ミノタウロスがより強靭であればより強力で暴力的であれば俺の箔がつく。



 「はぁぁぁーーーーー!!」

 剣を上段から振り下ろす。先程よりも綺麗に先程よりもより速く。綺麗な剣筋を描くイメージをしながら剣を叩きつける。


 『Bumoooo!?』

 ミノタウロスは剣を向かえうつ。

 そして先刻の光景を焼き写したかのように同じ状況に陥る。


 違うのはミノタウロスの色、俺の刃に籠められた力と速度。

 何より、この後に訪れる結果が違う。


 剣と戦斧がぶつかり合いながらも俺は更に魔力を込めて強化していく。


 『Guoo!』

ミノタウロスの巨体が後ろに下がっていく。

 徐々に俺の足が前に進んでいく。



 俺は剣へと力を込めていき。


 「___ッ!」

 思い切り振り抜く。


 ミノタウロスの斧が地面を破壊し刀身を地面に潜り込ませる。

 埋まった戦斧をミノタウロスは引き抜く為に力を込める。

 だが、それまでの隙を俺は見逃す程甘くはない。


 剣を横に一閃する。

 ミノタウロスの胸に一文字の傷ができ血を噴出させる。

 


 『Gumooooo!!!』

痛みで悲鳴をあげるミノタウロス。 

 だが、まだまだミノタウロスは健在だ。


 止めを指すべく柄を握る手を内側へとやり、魔石を穿つために腕を引いて突きを放つ。


 『____Buo』

ミノタウロスは迫り来る刃に息を吸い込む所作を取る。

 咆哮スキルを使おうとしているのだろう。


 だが、遅い。

 

 ____パキリ。



 俺が放った刃はミノタウロスの胸を穿ち魔石を破壊していた。

 ミノタウロスの体が痙攣し地面に倒れる。


 本来であれば胸を斬られたとき咆哮を使うべきだった。狂化の影響でそこまで頭が回らなかったのかは分からないが勿体なかった。



 戦闘時間は短く力任せという泥臭い戦いではあったが体を思うように動かせたのは気分が高揚する。



 「カイト殿……貴方はどれ程の力を」

 一息吐いた所でソフィアさんが声をかけてきた。


 「ソフィアさん、どうですか。見てくれましたか」

 「ええ、見ていました。素直に驚嘆しました。カイト殿がこれ程の力を得ている事に」

 「必死に鍛練しましたから。これぐらいなら誰でもできますよ」

 

 嘘ではない。パワーはファフニールの加護によって得たものの為、他の人では厳しいかもしれないがミノタウロスを倒す事なら俺以外でも鍛練を積めば誰でもできる。


 俺の言葉にソフィアさんはクスリと笑う。


 「では、私は必死に鍛練した貴方を尊敬していますし、素敵だと思いますよ」


 それは、その言葉はかつて俺が彼女へと送った言葉だ。

 青臭い餓鬼が綺麗事を言っていると思われていると思っていた。


 だが、彼女は半年以上経った今でも何気ない会話の一つを覚えていたという事になる。


 「ソフィアさん、貴方って人は」

 

 俺も思わず笑ってしまう。

 

 「カイト殿、改めてお礼を言わせてください。ミリア殿を助ける為こうしてついて来てくださりありがとうございます。そして、改めてお願いします。どうか私に力を貸してください」

 「はい、お貸ししますよ。だから進としましょう」


 ミリアさんがいなくなったという階層までは後僅かだ。

 これより、先は中層。何があるかはわからない、気を引きしめていくとしよう。

 



 

 


 

 

 

 

 

  

 

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