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勇者?魔王?いいえ村人です。  作者: 蒼伊悠
二章
21/27

6:迷宮

本日3話目


 

 準備を整えるとソフィアさんと待ち合わせをしたギルドへと戻ってくる。ソフィアさんは先に来ていたようで椅子に座っていた。



 「ソフィアさん。すいません、お待たせしちゃったようで」

 「いえいえ、私も今しがた着いたばかりです。お気になさらないでください」

 「じゃあ行きますか」

 無駄話をしていてもしょうがないだろう。

 

 「それじゃあ、案内はソフィアさんに任せますね」 

 迷宮が何処にあるのか俺は知らないからな。

 

 「承りました」

 


 迷宮とは街から南に離れた所にある古代遺跡のようなものらしい。いつから造られたのか謎の建造物を冒険者達は迷宮と呼んでいる。


 迷宮には様々モンスターがいる事が特徴で、迷宮内にある鉱物や植物等を求めて冒険者達は潜る事があるらしい。


 死ぬ危険は勿論あるらしいが今回のミリアさんのように行方不明になるのは本来あり得ない事らしかった。


 迷宮は迷路とは違い一本道だ。帰りは通ってきた道をそのまま戻るようにしなければならない。


 だから、本来ならば忽然と姿を消すなんて事はあり得ない。


 にもかかわらずミリアさんや他の冒険者の行方不明報告は数多くなされている。


 ソフィアさんは迷路の中に隠し部屋か何かがあるんじゃないかと疑っているらしい。

 ミリアさんが生きている可能性を残すには最早それしかないというのもある。


 それは、同時にクラスメイトが迷宮に何かしらの関連があるなら隠し部屋こそが濃厚というのも俺がだした結論だった。


 現在俺達とソフィアさんは迷宮の一階層へといる。

 これからどんどん下っていく事になっており、ミリアさんが居なくなったのは中層と呼ばれる二十階層らしい。



 「では、カイトさん。これより先に進むとモンスターが襲ってくるようになります。心してくださいね」

 一階層にはモンスターは存在しないらしく俺達の他に冒険者がいるだけでモンスターの姿はない。だが、下へと続く階段を降ればそこにはモンスターが蔓延っている。


 オークと魔の森以外のモンスターがどれ程の力なのかは分からない。言われた通り油断は消しておく。


 「カイト、臆するでない。お主ならば問題ないし、何より我がいる」

 「そうだな。ソフィアさん行きましょうか」

  ファフニールの言葉ほど力強いものはない。

 お陰で緊張がすっかり消えた。




 「ソフィアさん。この迷宮はアンテッド系のモンスターが多いんですよね」

 「ええ、噛まれたりするとそれだけで生命力を奪われるのでお気をつけてくださいね」


 アンテッド系のモンスターとの戦いは俺も何度かしたことがある。触れられただけで力が抜けたり色々と大変だった覚えがある。


 とはいえ、アンテッド系のモンスターは炎属性に弱かったりする。


 「燐火、雷華でてこい」

 『はーーい』

 『呼びましたかご主人様』

 俺の呼び掛けに赤髪の妖精とひまわりのような黄色髪の妖精が服の内からでてくる。

 

 「カイト殿、それはもしや精霊ですか!?」

 精霊術というスキルを持っているエルフのソフィアさんは精霊が見えるため驚いている。


 「はい、精霊です」

 「カイト殿、精霊を見えるとは知っていましたが使役出来るようになっているとは」

 そう言えば、ソフィアさんと半年前に話したときは精霊術を使うことは出来ないと伝えていたな。


 「それに、その精霊高位の精霊ですよね」

 「え? 高位って燐火と雷華が?」

 「カイト殿は私の精霊も見えているんですよね」

 「見えてますよ」


 ソフィアさんの周りを宙に浮いている二つの光の玉が見えている。


 「私達エルフが扱う精霊とはこのとうに自我が希薄なエネルギー体の精霊なのです。人の形を取り確立した意識を持つ精霊は高位精霊と呼ばれておりエルフの中でも一部の者しかその力は扱えないんです」


 燐火と雷華は元々ソフィアさんの精霊と同じような光の玉に過ぎなかった。俺が作った植物を与えていたらいつの間にかしっかりと話すようになって形も人のものへと変化していってたが、高位精霊と呼ばれる程凄い精霊だとは思っても見なかった。


 「お前達凄かったんだな……」

 『えへへーー、リンカすごいーー? リンカすごいーー!』

 『ご主人さまの精霊ですからね。強くないとご主人さまの役にたてませんもの』

 

 「カイト殿、逞しくなったとは思っておりましたがもしかしたら私の想像異常になっているのやもしれませんね」

 「そんな事はないですよ」

 

 そりゃ、異世界に来た頃よりは成長しているとは思っているがソフィアさんとかAランクの冒険者とかに比べればまだまだだろう。


 「では、カイト殿のお力を見せてもらうとしますか」

 「いいですよ」

 丁度タイミングよくモンスターが現れた。

 腐臭を漂わせながらノロノロと歩いているのはゾンビと呼ばれるモンスターだ。ソフィアさんの情報によると地球のゾンビのように噛まれたらゾンビになってしまうような事はないらしいが、噛まれるとゾンビの毒により体が痺れてしまうらしい。

 

 「噛まれる事はないけどな!」

 二階層目に現れる事からも分かる通りゾンビは弱い。

 まず、ゾンビの例に漏れず歩みが遅すぎるため余程の事がない限りは余裕で対処できる。


 腰に提げていた剣を抜いて魔力を流す。

 試し切りをするには丁度いい。


 ゾンビに近づいて剣を一閃させる。

 豆腐を切るかのように何の抵抗もなく刃はゾンビの頭部を斬りさく。


 頭部を失ったゾンビはそのまま倒れる。

 弱い。あまりに弱すぎる。


 これでは剣の性能を計る事も俺の力をソフィアさんに見せる事も出来ない。


 「カイト殿。強くなられましたね。ゾンビに近づく踏み込みや剣を振るう速度には目を見張るものがありましたよ」 


 気を使ってかソフィアさんがお世辞を言ってくる。

 今の速度なんて軽く走ったに過ぎないし剣だって使ったこともないため、力任せに振るっただけの醜いものだ。褒められる要素なんてない。


 「このままなら十五階層にあるボスの間まであっという間に辿り着けそうですね」

 十五階層事にボスがいるらしくそれを倒せば先にある中層へと進めるらしい。


 「迷宮って不思議ですよね。倒しても倒してもモンスターが溢れるんですから」

 「迷宮がどう造られたのかは未だ解明されていませんからね。一説によると神が創造したとかなんとか」

 神の存在を知っている俺からしたらあながち否定は出来ない。

 ゲームとかならまだしも実際にモンスターが溢れてくるっていうのは信じられないし神の所業と言ってくれた方がすんなりと納得できる。


 「でも、迷宮だって無限にモンスターが沸くわけではないから安心してくださいね。一定の間はモンスターは現れなくなるんです。ボスも倒せば半日は復活しませんし、じゃなければ迷宮内はモンスターで溢れてしまいますよ」

 「それも、そうですよね」

 ボス復活まで間がある場合、倒したあとに他の冒険者が十五階層まできたらどうなるのか気になる。そのまま通れるのかそれともボスが復活するまで足止めされるのか、近くに行ったら聞いておく事にしよう。

 

 「もし、迷宮に誰も探索に来ないで放置した場合ってモンスターは外に出てくるんですか?」

 「それが、どういうわけか、迷宮のモンスターが『外』に出てくる事は無いんですよね。これも神様が創造したんじゃないかって云われている理由の一つですね。迷宮は人に与えられた試練じゃないかって捉えられてるですよ」

 「なるほどね」

 原理は理解出来ないがそれならば、ギルドとかが迷宮を放置している理由が納得した。モンスターを生産し続ける場所なんて普通に考えれば直ぐにでも無くしてしまいたい筈だ。



 「のう、カイト。我も戦いたいのじゃ」

 「次モンスターが現れたらな」

 まぁ、龍のファフニールの相手になるモンスターがいるとも思えないが本人的には暴れたいんだろう。


 「二人とも油断なさらない、モンスターがまた来ます!」

 ソフィアさんが忠告するまでもなく、俺とファフニールは気づいていた。

 剣を持った骨がコツコツと音を鳴らしながら近づいてきている。骸骨スケルトンと呼ばれるモンスターの数は五匹。


 「カイト、手をだすでないぞ!!」

 骸骨スケルトンに向かってファフニールは駆けていく。


 「な、何という速度」

 「あんなもんまだまだですよ」

 龍たるファフニールが本気で走るとその姿を見失う。

 初邂逅の時も、ファフニールは一瞬で俺達に辿り着いていた。

 力のイメージがある龍だが、その速度もまた化物だ。


 「我を楽しませて見るがよい、骨よ!!」

 ファフニールは腕を大きく振り上げる。


 「駄目です。骸骨スケルトンには打撃は意味をなしません!!」  

 「どうしてです?」

 「骸骨スケルトンの耐久力は低いんです。打撃を行えば一気に骨が外れます。しかし、直ぐに骨はくっついてしまうんですよ。だから、打撃は骸骨スケルトンには敵さないんです」

 

 「そうなんですね。まぁ、でも大丈夫ですよ」

 「え?」

 視線の先ではファフニールが振り上げた拳をモンスターへと落としている所だった。


 拳は骸骨スケルトンの顔面部位に触れると甲高い破砕音を鳴らすと、そのまま顔面の骨を粉々にする。


 頭を失った骸骨スケルトンはそのまま前のめりに倒れるとそのまま動かなくなる。


 

 「な、カイト殿、彼女はいったい何者なのですか。まさか、一撃で骸骨スケルトンを粉々にするなど」

 「まぁ、彼女は俺の師匠的な人ですよ」

 まさか俺達を襲った龍ですよとはとても言えない。


 「なんじゃ呆気ないのぉ、これじゃあつまらんのんしゃ!!」

 足元に転がる顔面を粉砕されたモンスターを見てファフニールは不満を漏らす。


 「はじめはこんなもんだろ。ボス部屋に行けば歯ごたえもあるだろ」

 「そうだとよいんじゃがの」

 龍の彼女のお眼鏡にかなうモンスターがそうそういるとも思えないがそこは口にしないでおく。


 

 「まぁ、ちゃっちゃと、ミリアさんがいなくなった二十階層まで行きましょうか」

 「ちゃっちゃとって、二十階層まで行くのはそう容易では……」





 

 俺達は現在十五階層にあるボスの部屋の前に来ていた。

 如何にもな大きな扉があるお陰で分かりやすい。


 いや、実際迷宮の本質がゲームみたいなものなのだろう。 

 階層を進む事にモンスターが強くなり一定まで行ったらボス戦というイベントがある。

 強くなる為に迷宮程うってつけの場所もそうそうないだろう。




 「では、カイト殿……先に進みましょう。この先にはミノタウロスというボスがいるのでお好きにやってください」

 ここまで迫るモンスターを一撃で屠ってきたファフニールの力を見てはソフィアさんも何も言えなくなってきたのか、途中からは気をつけてと忠告される事はなくなっていた。



 「カイト、ボスはお主がやるとよい」

 「え、いいのか?」

 あそこまでボスと戦うのを楽しみにしてたのに譲ってくれるとは思わなかった。

 

 「よいわ。ここのモンスターは我には力不足なのはもうわかった、ならお主の戦いを観戦でもして楽しむのじゃ」

 「わかった。なら俺がいくから見てろよな」


 俺は扉を開いていく。

 


 

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