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勇者?魔王?いいえ村人です。  作者: 蒼伊悠
二章
20/27

5:準備

本日2話目の投稿です。



 迷宮とやらにソフィアさんと行くと約束してから、30分後、俺達は街を歩いていた。

 ソフィアさんは迷宮に潜ると長丁場になる可能性があると言っていた。その為準備の必要があり俺達は物資を揃えるため街に赴いていた。

 まず、始めに向かうのは換金所だ。

 物資を揃えるにしても俺達には元手のお金がない。

 依頼を受けたものの手にしたのは銀貨五枚、これではあまりにも心許ない。

 そこで目をつけたのが門番が驚いていた魔玉だ。

 門番から魔玉を受け取ると換金所の場所を聞き出していた。



 歩いていると門番の男に言われた換金所が見えてくる。

 木材建築で入り口には暖簾があり質と文字が書かれている。

 神によってこの世界の文字が読めるとこういう時便利だったりする。


 「カイト、こんな石が本当に高く売れるもんなのかの?」

 「人間は宝石には弱いからな」

 「まぁ、我も宝石は嫌いではないのじゃ。ニヒヒ、お主から貰った物は宝物にしてるしのぉ~」

 ファフニールは虹色に輝く宝石を取り出してニヤニヤしている。


 「高く売れるなら他にも出した方がいいかの?」

 「出さんでいい」

 新たな魔玉を出そうとしていたファフニールを止めて、暖簾をくぐる。


 中には骨董品らしきものが所狭しと並んでいる。


 「あれぇ、お客さん、どうしたんだい」

 受付から声がかけられる。

 そこには扇情的な透け透けなランジェリーの上にコートを被った女の定員がいた。


 骨董品屋の雰囲気にそぐわない定員に驚きを禁じ得ない。

 思わず凝視してしまうのは男の悲しい性だ。


 「カイト、あやつ滅してもよいかのぉ」

 「駄目に決まってるだろ」

 女の胸を凝視しながら敵意を燃やしているファフニールを止めておく。


 「あっはっは。あんた達面白いねぇ。それで何の用で来たんだい」

 「売りたいものがあって来たんです」

 「へぇ、なんだい」

 「これです」


 定員の女に紫色の玉である魔玉を差し出す。

 

 「これは、中々立派な魔玉じゃないかい。ここまで綺麗なものはそうそう見ないわよ」

 「へぇ~、魔玉って魔石とは違うんですか」

 

 魔石がモンスターの心臓的な核であるのは知っているが魔玉については全然知らない。


 俺の発言を聞いて女が呆れた表情を作る。


 「お客さん……気を付けた方がいいわよ。他の奴にそう言ったら足元見られても文句言えないんだから」

 「そう忠告してくれた貴方にぼられるなら構わないですよ」

 ぼったくられるのが良いとは思わないが、騙されるような隙を見せたならそれは俺が悪いしな。

 

 「あら、お客さん、うまいじゃないかい。安心しな、私はまっとうな商売をやっているつもりだよ」

 「なら、よかった」

 「お客さん、面白いわね。えーと、魔玉についてだったわよね。魔玉っていうのは一定の力を持つモンスターの核であり、それ事態が魔力を持ってるとても貴重なものなんだよ。そこいらのモンスターからは取れないし、魔玉を宿すモンスターであっても下手に傷つけたら価値が一気に下がっちまうのさ。その点この魔玉は傷一つないとても綺麗なものだね」


 「へぇ、そうなんですね____なぁ、ファフ」

 「な、なんじゃ!! 耳元で囁くでない。こそばゆいのじゃ」

 「あの魔玉って何のモンスターから取ったんだ」

 「ひゃん、こそばゆいのじゃぁぁ」

 「お、おい。変な声をあげるな!」

 耳が敏感なのはわかるが艶かしい声を出されると色々と気まずい。女もはじめは内緒話があるんだなと空気を読んでくれていたが、矯声をあげた辺りで何も言ってはこないが額に青筋を浮かべている。


 「あれ、何のモンスターなんだ」

 「うーん、覚えてないのじゃ。多分火竜とかバジリシクとかじゃないかのぉ」

 ファフニールが挙げた名は何れも強力なモンスターだ。

 俺も対峙した事があるがあの時は色々と苦戦した覚えがある。


 「お客さん、鑑定終わったわよ。引き取らせてくれるなら状態もかなりいいし、金貨500枚だすわ。どうかしら?」

 「そうですか____500!!?」

 金貨500枚といえば日本円なら500万位で売れる事になる。

 いきなりの大金に戸惑う。


 「本当にそんなに貰えるんですか?」

 「これだけ綺麗なものは中々お目にかかれないからねぇ。このサイズでこの金額はかなり高いわよ。それでどうする? 売るのかしら?」

 「そうですね。お願いします」

 「わかったわ。少し待っててちょうだいねぇ」

 女は奥に引っ込む。

 十分程経つと女が戻ってきた。


 大きめの手提げ袋を持っている。


 「この中に500枚入っているわ。確認していくかしら?」

 「大丈夫です。信じていますんで」

 「あら、そう言われると商人冥利に尽きるわね」

 実際の所は余り時間をかけたくないし、仮に数が足りないとしてもこれだけ金貨があれば誤差に過ぎない。

 

 物資を揃えるには十分過ぎる金額がある。


 「これ、どうぞ。重たいから気をつけてね」

 「はい……ってあれ?」

 女から渡された手提げ袋を受け取ると想像していたズシリとした重さを感じる事はなかった。


 虚をつかれた表情をした俺を見て女がクスクスと笑う。


 「びっくりしたかい? 金貨500枚は重たいからね。白金貨にしておいたわ」

 袋を覗くとそこには五枚の白金貨が入っていた。

 


 


 

 「いやぁ、お金があるっていうのはやっぱりいいなぁ」

 この世界に来てから金銭とは無縁の生活を過ごしていたが、人が営む街ではやはり、金があるに越した事はないし、あった方がやっぱりいい。


 「うむ、そうじゃのぉ、そうじゃのぉ♪」

 待望の肉を両手いっぱいに持って頬をパンパンにしたファフニールは機嫌よさそうにしている。



 食料や薬品等の日常品を購入してもまだ金銭には余裕がある。

 

 「ふぅひはほぉこにどふぉにいふぅほじゃ?」

 「しっかり飲み込んでから話さないと駄目だぞ。次に行く場所か、次は武器屋かな」

 「____ゴクン。武器屋じゃと? お主武器なんて使えるのか?」

 「使えないけどな。持っていた方がいいと思ってな」

 これまで、武器なんて扱った事は一度もない。 

 正直これまでは必要ないと感じていたが、今日オークの討伐を体験して必要だと認識を改めた。俺の精霊術は威力を押さえる事は可能だが、それなら自分からさっさと近づいて倒してしまった方が早い気がする。それに、最悪の場合精霊術を行使しにくい環境に身を置くこともあり得る。


 これまでは幸い平気だったが、これから先も武器を必要としないで済むとは限らなかった。



 と、屁理屈を捏ねたが結局は異世界といえば剣と魔法というイメージがあるからなのかもしれない。


 「ファフも何か買うか?」

 「いらん、我には必要ないのじゃ」

 「だよな。お、ついたぞ」

 露店が並ぶ市場から離れた所に武器屋や防具屋が色々と店在していた。


 「うーん、何処がいいんだろうな」

 「カイトあっちにいくのじゃ」

 ファフニールが指差すのは外観がボロボロ一見しただけでは何屋か見分けがつかない店だった。

 よくよく見ると薄れた文字でアルダの武器屋と書かれていた。


 「まぁ、彼処でいいか」

 どうせ武器については素人なんだ。それにファフニールの勘は馬鹿には出来ない。



 中に入ると外観から想像していよりも遥かに綺麗だった。

 箱のようなものに剣が納められており、それが何個も置かれている。他にも槍や弓矢、斧に鉄槌等、色々な武器が置かれている。


 「お客……さま」

 店内を物色していると入り口から入ってきた人物に声をかけられる。


 振り返った先にいたのは亜麻色の髪をした少女だった。


 「お客さまでよろしいんですよね」

 「はい、そうですけど」

 「きた……きたぁぁ!! 久しぶりのお客さまだぁぁぁ!!」

 目の前の少女はいきなり腕を上げて歓声をあげている。


 「親方ぁぁ!! 来ましたぁぁ! お客さまが来ましたよぉぉ!」

 「うるさいわ、このバカたれが!」


 怒声と共に奥から店の者が現れる。

 現れたのは髭を生やしたオジサンだった。

 だが、背丈が明らかに小さすぎる。

 体つきはドッシリしていて顔も大人。背丈だけが子供のようなアンバランスの存在。俺はそれを知っている。

 ドワーフという種族だ。

 


 「だって、だって! 一月ぶりのお客さまですよ、おやかた!」

 「うるさいわ! そんなの見ればわかっとる!」

 「五月蝿いのはお主ら二人ともじゃ!!!」

 俺も思っていた事をファフニールが叫ぶ。 

 何処からそんな声を出してるのかと思うほど二人の声は大きい。


 もしかしたらドワーフは声が大きいのかもしれない。

 小さな少女だと思っていた人物も恐らくドワーフだ。


 「そりゃ、すまなかったな嬢ちゃん。ほら、エルダ。お前は奥に引っ込んでろ」

 「駄目ですよ、親方、毎回お客さまを追い返しちゃうじゃないですか!!」

 「なんだと!! 俺の言うことが聞けねえってのか!」

 「聞けません!!」


 「の、のう。カイト、こやつら消し炭にしてもよいかのぉ、我をここまでこけにしたのは罪深き事じゃ」

 「待て待て、本当に待て」


 再度口論を始めた定員にファフニールが本気で苛ついている。抱きついて止めているのにそれでも前に進もうとしているし本気でやばい。


 「すいません!! 剣買いに来たんですけど、喧嘩は後にしてくれませんかね!」

 ファフニールのように怒りはしないが人の喧嘩っていうのは他人からしたら鬱陶しいだけだ。

 怒りこそしないものの気分がいいものではい。


 「ああ、すまねぇ。んで、何が目当てなんだ」

 「剣を一本」

 「ふーん、エルダ。おめぇは引っ込んでいろ」

 「親方だから……」

 「いいから、引っ込んでいろ。坊主と嬢ちゃんと話がしてぇんだ。おめぇがいたら気が散る」

 真剣な声音で話だした男に言われると少女?は素直に店の奥へと引っ込んでいった。



 「坊主、おめぇらは何者だ? やべぇ気配がビシビシと痛いほど伝わってきやがる。特にそこの嬢ちゃんなんて化物かよ」

 「ほぉ~」

 ファフニールが感心している。

 俺も驚いた。この男ファフニールの正体こそ分かっていないものの普通ではないと見抜いている。


 「いい目を持っているんですね」


 男が何故俺達の強さを見抜いたかはもうわかっている。

 神眼で男を視てわかっていた。


 男は審美眼というスキルを持っている。

 このスキルで見破ったのだろう。


 「いい目って、坊主こそ只者じゃねーな」

 「いえいえ」

 「そんな坊主にオススメのものがある」

 男は____神眼で見た名前によると店の名前にもなっているアルダは一本の剣の前にいく。


 ケースに納められていたその剣を取り出す。


 「これだ、坊主が剣を求めるなら俺はこれを進める」

 「この剣は?」

 「この剣は魔玉を材料に打っておってな、これ事態が魔力の塊で更に魔力を注ぐ毎に硬度が上がっていくしようになっていたのだが、並みの者では魔力があっという間に尽きてしまう為使いこなせないのだが、坊主と嬢ちゃんならば大丈夫なはずだ。良ければこいつを貰っちゃあくれないか」 


 魔力で硬度を高められるシンプルな力だが確かに俺にはピッタリの剣かもしれない。


 漆黒の剣なのも個人的には高ポイントだ。


 「すいません、これは頂けません」

 「な、何故だ!」

 見た目も剣としての性能にも文句はない。ただ、一つ問題がある。

 

 「これ、金貨1000枚って書いてますよね。でも、俺そんなにお金持ってません」

 そう、漆黒の剣はあまりに高価すぎた。

 千枚なんてとても手が出せない。


 「なんだ、そんなことか。この金額は下手な奴が買わないようにするために高く設定しているだけだ。坊主にならば格安で売ってやる」

 それなら、はなから店に出しておくなよと思うがそこは、店主の考えがあるんだろう。


 それに、安くなるなら願ったり叶ったりだ。


 「今金貨490枚しか無いんですけど足ります?」

 「わかった。それでいい」

 何とも適当だが、手が出せるなら買っておく。

 これで、金が尽きたがまた稼げばいいだけだ。

 


 アルダから剣を受け取り腰に提げてみる。

 

 「うん、意外としっくりくる」

 「ほぉ、似合っているのじゃ、漆黒の剣を持つとは我の夫に相応しいのぉ」

 自分と同じ色の剣を俺が買ったのが嬉しいのかファフニールは喜んでいる。


 何はともあれこれで準備は整った。

 迷宮へと赴くとしよう。 

 

まだまだ投稿します!


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