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銀色のロボット

 目の前で前衛的な彫刻のように立っているロボットを見て、Mr.Bが言った。

「こいつ、このままにしておく?けっこう邪魔だし・・」

「・・そうね。なにかの拍子に通信が復活してまた動き出しても困るから、とりあえず再起動しても動けないようにしておきましょう」


 博士の提案に、Mr.Jが立ち上がると機内の隅にあった荷物梱包用のベルトをひっぱりだし固まった銀色のロボットに近づいていった。


 Mr.Jがロボットの腕にベルトをひっかけようとした時、銀色の胴体に何か光る文字が浮き出し始めた。

 まるで、パソコンの画面にコマンドが表示されるように次々と文字が流れていく。


 その文字に気が付いた博士はじっとその文字を凝視し、突然叫んだ。

「このロボット、AIも搭載しているわ!遠隔操作しなくても単独行動できるタイプよ!」

博士が言い終わると同時に、ロボットの頭部の赤いLEDが緑色に変わり、再び動き出した。

 その動きは、超空間通信による遠隔操作の時よりもかえって滑らかで人間っぽい。


 銀色のロボットは、頭部と思われる三角の部分で周りをぐるりと見渡し、少女博士を見つけるとすっと前に立ち、静かな声で淡々と言った。

「クリス博士ですね。わたくしとご同行願います。もし従っていただけない場合は、強制的に連行いたします」

 ロボットの姿を見ないで声だけ聴けば全く人間と変わらない。ちょっと抑揚が少ない感じがするだけだ。


 あっけにとられていたMr.Jは、はっと我に返ると持っていたベルトを握り直し、後ろからロボットを縛り上げようとした。


 しかし、AI自立行動に切り替わったロボットは、後ろにも目が付いているかのように的確にしかも瞬時に手を回しMr.Jの顔面を強打した。


 すごいパワーだ。


 2メートル近い獣人の巨体が、ロボットの片手の一振りで吹き飛び、また壁に激突し機体が大きく揺れた。

「なんだ?今度は何があったんだ?」

パイロットは、また機体の維持に全力をかけながら叫んでいる。


 ロボットは何事もなかったかのように、博士に向かって手を伸ばした。

 いつも年齢にそぐわない冷静な顔を崩さない少女が、真の恐怖を感じた瞳を震わせて身を縮めている。


 俺は、咄嗟に右手を手刀の形にし戦闘用フルパワーでロボットの胴体に叩きこんだ。


「ボシュ」


 鈍い音とともに、俺の義腕は銀色の胴体に突き刺さり、勢い余って反対側から手が飛び出した。


 博士に迫っていたロボットは、自分の体から飛び出た俺の手をじっと見つめた後、はみ出ている俺の手を握りしめ、銀色でのっぺりし表情がないはずなのに、なぜか悲しい雰囲気を感じさせる頭部を俺の方に向けた。


 頭部で光っている緑色のLEDがゆっくりと点滅し始めた。

 何か聞こえる。


 さっき博士に向かってしゃべった音声と同じトーンだが、雑音が多く内容がよく聞き取れない。

 だが、一部聞き取ることができた。


「・・・・・・ザッ・・・自爆モードセット・・・・」


 博士にも聞こえたのだろう、恐怖から驚愕に変わった表情で俺を見つめた。


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