Mr.Jの行方
場所はいつの間にか町をはずれ、砂漠の中の一本道に止まっている。周りには何もない。
すかさず耳につけた無線機にMr.Bの声が響く。
「コンテナに行ってMr.Jの援護をしてくれ。Jと連絡が付かない」
やはり、向こうのほうがやばかったか。運転席から降りてコンテナの様子を見に行った。
なにしろ、Mr.Jは「獣人」だ。
しかも、完全に獣人化してしまうと理性も吹き飛んでしまう。
つまり、敵味方の区別がつかなくなり、本能の赴くままにあばれるただの獣になってしまうというのだ。そのおかげで、味方であるはずのMr.Bは、先日、砂漠のオアシスで獣人化したMr.Jに投げ飛ばされ、死にかけた。
だが、クリス博士に対しては、なぜか攻撃は加えないような気がする。
Mr.Jとクリス博士の間には、人質と救出者の関係だけではない何か特別な繋がりがあるような気がしてならない。
そんなことを考えながらMr.Jが乗り込んでいる薄汚れた赤いコンテナを見てみると、四隅の銀色の突起物は相変わらず輝きを放っており、ザビ軍とノスリル軍の新兵器同士の戦いが地味だが続けているようだ。
突然、「ゴン」というくぐもった低い音が数回聞こえてきた。内部で何かが暴れているような雰囲気がする。
Mr.Jが獣人化したのだろうか。
その度コンテナが揺れた。
エアマスターで押さえつけられているが、コンテナの新型エンジンも稼動しているようで、良く見るとコンテナは数十センチ荷台から浮いている。
そのため、中の騒動が直接コンテナに響いてくるようだ。
その騒動の元は、間違いなくMr.Jに違いない。
あの「獣人」のことだから、コンテナの中で大暴れしているのか・・
中にいるはずのクリス博士は大丈夫だろうか。
そう思った瞬間、側面にあるコンテナの鉄製の扉がぶっ飛んだ。
本来、横にスライドするはずの重い扉が、構造を無視して紙の様に空中を舞っている。
空中を飛んでいるのは、扉だけではない。
扉の陰に隠れて人陰のようなものも飛んでいる。
上半身がヒョウ柄の獣人、Mr.Jだ。
あの超人的な強さのMr.Jがいとも簡単に鉄の扉と一緒に吹き飛ばされている。
何が起きているんだ?
扉が無くなったコンテナの入り口には、顔まで隠れるヘルメットを被った白っぽい服装の男が立っていた。
あいつは、Dビルの実験室で情け容赦のない攻撃をする兵士とともに現れ、クリス博士を連れて行ったやつだ。
やはりクリス博士はこのコンテナの中にいるのは間違いなさそうだ。だが、Mr.Jがコンテナからたたき出されたということは、救出はまだということか。
白い服の男は、首が凝ったかのように右手を左肩に乗せ、首をゆっくり廻し呟いている。
「・・ふん、獣人のサンプルとしては超一級品だが、さすがにおとなしく連れて帰ることはできんな・・」
どうやら、Mr.Jと一戦交えたらしい。
良く見ると、白い服装のあちこちにMr.Jがつけたものと思われる爪あとが刻まれている。
それでも、どこも破れていないところを見ると、単なる服ではなく、何か特殊素材のアーマースーツなのだろう。




