人差し指通信
この先どうしたものか・・とぼーっと車窓を眺めていると、右手の人差し指が赤く光り、かすかにバイブし始めた。
「おっと、ジャックから通信だ」
俺の右腕(正確には右手の人差し指)には、超空間通信機が埋め込まれている。
右腕の製作者であり俺の親友でもある兵器開発局のジャックが、前々回のミッション後の修理の際、おまけで仕込んでくれたもので、理論上では、地球の、それどころか全宇宙のどんなところにいても通信できるはず・・というすぐれものだ。
もっともまだ開発途上のため、対向で通信できる装置は開発者であるジャックのところにしかない。つまりジャックとしか通信できないわけだが、俺にとっては、これ以上ない相談相手なのだ。
俺は赤く光っている指先を耳に突っ込んで通信を始めた。
この通話姿勢から、俺は勝手に「人差し指通信」と呼んでいるが、そう言うとジャックは「そんな軽いもんじゃない」とちょっとふくれっ顔になる。
そんなジャックの顔を思い浮かべながら、耳に突っ込んだ人差し指に注意を集中させると、ジャックのあせった声が飛び込んできた。
「ザッ・・・ケ、ケンジか?ザッ・・俺だ、ジャックだ。ザッ・・聞こえるか?!」
「ああ、ジャック。いつもより良く聞こえるよ。どうしたんだ?ジャックからかけてくるなんて、珍しいな」
「ザッ・・」という雑音に混じって相手の声が聞こえてくる。
普通の無線通信と比べると、遥かに音質はよくないが、距離が関係なく世界中どこでもOKとなれば決して使えない音質ではない。
「ザ・・クリスって女の子知ってるか・・ザッ・・」
「!!?」
思わぬ人物から意外な名前を聞いた。
なぜジャックがクリス博士の名前を知っているんだ?開発局の人間は、俺たちのミッションの中身については一切知らないはずだ。
いや、待てよ。今回のミッションとは全く関係ない同じ名前の女でジャックも知っている人物がいるのか?
俺の頭の中では、過去に知り合った女達の顔と名前が飛び交ったが、クリスという名前は思い当たらなかった。
「ザッ・・どうしたケンジ・・ザッ・・そのクリスって娘がお前と話したいらしいが・・ザッ・・大丈夫なのか・・」
「え・・その娘と話す?まさかこの超空間通信で・・なのか?」
「・・ザッ、ああ、なんでかまだ判らないが・・ザッ・・二人しか利用できないはずの通信に・・入り込んできたんだ・・ザッ・・とにかく転送するぞ・・ザッ・・ピッ・・」
突然ジャックの声から、あの天才少女クリス博士の声に切り替わった。
「ザッ・・Mr.K?・・ねぇ・・聞こえてる?ザッ・・お願い・・返事して・ザッ・・」
「!クリス博士なのか?本当にクリス博士なのか?」
「ザッ・・ああ・・良かった。繋がったわ・・ザッ・・お願い・・助けて・・あいつら・・ザッ・・私をだましてたの・・」




