再び共同作戦
状況を察したMr.Jは、よほど気に入らなかったらしいメガネをはずしいまいましく投げ捨てると、俺に向かって言った。
「すぐに警備兵たちが集まってくる。その前にここから撤退し博士の追跡を開始する。ビルの外にMr.Bが車で待機している」
博士は自から望んで付いていったのだから、追いかけても戻ってくるかは不明だが、とりあえず脱出方法が用意されていたということは、ついさっきまでは博士は帰るつもりだったようだ。
いずれにしろ、まだ博士救出のミッションは終わっていない。
再び彼らと一緒に行動しなくてはならない。なにしろ俺の役割は彼らの支援なのだ。
俺とMr.Jは、なんとか警備員たちが到着する前に研究室を抜け出し、ビルの外で待機していたMr.Bの車に乗り込んだ。
車は、前に使っていたのと似ているトラックだが「いのしし」マークではなく、荷物を咥えた「こうのとり」の絵柄がついた改造車だ。どちらのマークもこの国では有名な運送業者の印でどこにいてもおかしくはない。
どうやらノスリル側では複数台の特殊車両を用意していたようだ。
この手の車は、特別製だからかなり高額になるはずだが、惜しげもなく投入しているところを見ると、今回のミッションにはよほど力をいれているのだろう。
益々手を抜きづらくなってきた。
車に乗り込むとMr.Bが俺の脚を見て軽い驚きの表情を浮かべて話しかけてきた。
「お、足はもういいのか?」
「ああ、博士の魔法のおかげでもうすっかり良くなった。へたをするとオリジナルより具合がいい」
Mr.BはMr.Jの方をチラリと見ると何か納得したような表情をしてニヤリと笑った。
「確かに、博士にかかればその位たいしたことじゃないかもしれんなぁ」
Mr.Bはそう言いながら車のエンジンをかけると、Mr.Jに状況の確認を求めた。
Mr.Jと俺は、ビルの中での出来事をかいつまんで説明した。Mr.Bの表情はみるみる曇っていく。
「・・・ザビ共和国か・・俺が待っていたこの入り口からは出てこなかったから、別のルートで脱出したのか・・」
俺は、Mr.Bが貸してくれた「こうのとり」マークのツナギタイプのユニフォームに着替えながら聴いた。
「やつらがどこに向かっているのか判るのか?それに博士は自分からすすんでザビ共和国の連中についていったんだ。たとえ追いついたとしても連れ戻せるのか?」
Mr.Bは思案げな表情のまま返事をせず、とりあえず車を発進させながら言った。
「・・ひとまずアジトへ向かうか・・」
確かに、この状況では一旦引き上げて作戦を立て直したほうが賢明のようだ。
その一言を聞いて、俺も、Mr.Jもなにか気が抜けたようにシートの背もたれに深々と体重を沈めため息をついた。
俺たちの乗った「こうのとり」マークのトラックは、Dビルの敷地から出て街のメインストリートを走っていた。郊外のアジトは街の反対側だ、迂回するとかなり時間がかかる。
イスランの中でも大都市の部類に入るこの市は、戦争中とはいえけっこう賑やかだ。
カーキ色のトラックやらトレーラーなど軍事物流の車両も多いが自家用車の量も多いし、通行人もかなりいる。平和な他の国の都市風景とほとんど変わりがない。
強いて違いを見つけるなら、迷彩服の軍人が少々多いということぐらいか。




