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天才少女の奇行

 天才少女は、敵の男に何かを語り始めた。

 俺がいるところからは、遠くて何も聞こえないが、時折浮いているMr.Rを指差したりして語りかけている。

 聞いている敵の科学者は顔がヘルメットで隠れていて表情が判らないにも関わらず、満面の笑みを浮かべ少女に返事を返している雰囲気が伝わってくる。


 すると、天才少女はクルリと振り返り、高揚して赤くなった顔をキラキラ輝かせながら手を口元に当てると俺に向かって大声で叫んだ。

「私、この人とちょっと一緒に行ってくるわ。もうすぐジェイが来ると思うけどよろしく言っておいてね」

 俺は思わず物影から飛び出そうとしたが、二人のそぐそばに低い姿勢で構えているフル装備の兵士がなんの躊躇もなくマシンガンを乱射した。


 威嚇のための射撃だったようで身体に当たりはしなかったが、弾丸が打ち込まれた壁や床からは破片が散乱しもうもうと煙が立ち込めた。


 無防備の俺は、物陰から身動きが取れずどうすることもできない。

 今回のミッションのターゲットでもある天才少女は、白い敵科学者に連れられ部屋を出ていった。

しんがりのフル装備の兵士は、部屋を出る直前に最後っ屁のように部屋の中にマシンガンを掃射し、最後に手榴弾を転がしていった。

 本当に容赦のない兵士だ。


 俺は、手近にある毛布を被ると、さらに物陰の奥深くに身を押し込め耳と目を強く抑え手榴弾の衝撃に備えた。

 俺が着ていた手術着はすでに破れ去り皮膚が露出し裸同然になっている。薄手の毛布一枚でもあるとないとではかなり違う。

 また、こんな部屋でのような狭い空間で手榴弾が爆発すると身体の中で一番弱い部分がダメージを食らう。眼球と鼓膜が一番損傷を受けやすいのだ。


ドオオ~ン


 建物全体が揺れるような大音響と地鳴りが響き渡った。

 全くあの兵士は本当に手抜きをしないヤツだ。


 爆発が収まった頃合に顔を上げて辺りを見回した。

 一面に粉塵が立ち込め視界が悪い。

 煙越しに目を凝らしてみると、意外と頑丈な建物のようで、部屋の躯体には影響はないようだが、内装や什器類はほとんど全てが原型をとどめない瓦礫と化している。


 俺は、被っていた毛布を投げ捨てると博士たちが出て行った入り口を目指して走りだそうとしたが、リノリューム張りの綺麗だった床は、ヤツらに荒されたガラスの破片やら瓦礫が散乱していた。


 手術着姿の俺は、裸足のままのため、床はとても無傷で通れる状況ではない。

 足の裏は一見鈍感のように思えるが、実は神経が集中していて、ちょっとした傷でも全身の動きに大きなダメージを与えるものだ。 

 それに、あの時の博士の態度からすれば、自分から進んでついていったのは明白だ。たとえ追い着いたにしても引き戻すことはほとんど無理のような気がする。


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