白き侵略科学者
確かに、その男の白い装備は布でもなくプラスチックでもない不思議な光沢を放っている。
「あれは・・兵士じゃないわね。科学者よ・・きっと」
小さな天才学者は、同業者を動きを見ただけで嗅ぎ分けられるようだ。
その科学者と思われる男は、兵士に命令を伝えた後、改めて周囲を見回して、転がっているMr.Rに気がついた。
周囲に気を配りながら倒れているMr.Rにゆっくりと近づき、しゃがみこんでMr.Rの状況を確認しその傷だらけの顔を見た後、表情が見えないヘルメット越しからでもはっきり判るほど落胆した様子で、首を左右に振りながら立ち上がった。
その時、壁についている赤燈が赤く点滅し始め、部屋中を赤く染め出した。
男はそうなることが事前に判っていたらしく、さしてあわてることもなく、すぐさまパソコンを操作している兵士に言った。
「意外と早いな。もうすぐ来るぞ。あとどれくらいだ?」
「はい。あと10秒です」
「そうか・・」
そう頷くと、男は数少ない装備品の一つの腰についたポーチから小さな銀色の箱を取り出し倒れているMr.Rの身体に貼り付けた。
「フム・・こんなところで役に立つとはな・・」
男は、そういいながら取り付けた箱の表面をいじり「こんなものか・・」とつぶやくと、倒れているMr.Rの肩をつかんで持ち上げた。
倒れたままの形で、50センチ程ふわりと浮かび上がった。
不思議な光景だった。まるでMr.Rが映っている写真の一部をハサミで切り取って動かしているように見える。
パワードスーツを着たMr.Rは、軽く100kgを超えるだろう。
あんな風にふわふわと浮かび上がるように持ち上げるには、パワーショベルのような重機か、それこそMr.Rのようなパワードスーツが必要になるはずだ。
だが、その男の着ているものは、やけにスッキリとした白っぽい軽装にしか見えない。あの見かけでそれだけのパワーを秘めていたらそれはそれですごい技術力なのだろうが、どうも違うようだ。
男はまさに風船を持つかのようにMr.Rの肩あたりを軽くつまんでいるだけでその巨体を空中で自在に操っている。
「・・重力コントロール装置・・え・・でも外向タイプなんて聞いたことがない・・」
小さな天才科学者がその光景を見ながら、俺の隣でぶつぶつ言い始めた。
「・・確かに重力コントロールはある程度まで可能になってきたけど・・あくまで閉じられた空間内だけのはず・・。でもあれは一体・・」
何気に博士の方を見てみると、その目つきはもう見かけの少女のものではなく、何かに憑りつかれたような、狂気の色さえ感じられる凄みのある輝きを放っている。
何か危ないな・・そう思った刹那、天才少女は突然俺たちが隠れている物陰から飛び出し侵略者に向かって走り出した。
その予期せぬ行動を阻止しようと手を伸ばしたが、反射的に速度が4倍の義腕ではない生身の腕を使ったため空振りし、少女は戦場と化した部屋の中央を白服の敵に向かって駆け寄って行った。
気を失ったMr.Rを風船のように持ち上げて出口に向かっていた敵科学者は、近寄ってくる少女に気がつくと脱出の歩みを止め、少女に向き直した。




