表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
64/87

第63話 『行けなかった理由』

信号が変わる。

青。

人の流れが、一斉に動き出す。

「……」

瑛太は、その中に入れなかった。

さっきと同じ場所。

同じ交差点。

足だけが、止まっている。

「……」

ひとつ、息を吐く。

(行かなあかんやろ)

頭では、分かっている。

アルデンテ。

窓際の席。

きっと、いる。

「……」

ポケットからスマホを取り出す。

画面。

トーク。

星羅。

何も、打っていない。

指が、少しだけ動く。

止まる。

そのまま、画面を閉じた。

「……はぁ」

小さく、息が漏れる。

あの日のことが、頭をよぎる。

ドアの前。

近すぎた距離。

「……」

目を閉じる。

(なんで止まったんやろな)

答えは、分かっている。

でも。

認めたくない。

信号が、また変わる。

青。

人が流れる。

それでも。

足は、動かない。

「……」

ポケットの中。

鍵に触れる。

ぎゅっと、握る。

「……やっぱ、行けへんわ」

一歩、出る。

止まる。

「……」

顔を上げる。

アルデンテの方向。

そのまま、視線を逸らす。

踵を返す。

逆方向へ。

歩き出す。

少しだけ、早足で。

逃げるみたいに。

ポケットの中で、スマホが震える。

止まる。

取り出す。

画面を見る。

違う。

広告。

「……」

小さく、息を吐く。

昼の光が、少しだけ眩しい。

「……無理やわ」

視線を、落とす。

その足は、最後まで。

アルデンテの方には、向かなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ