第40話『なんか、変』
翌日の昼。
喫茶アルデンテ。
いつもの席。
向かいには、瑛太。
テーブルの上には台本。
「そこ、ちょっと早いな」
瑛太が言う。
「え、そう?」
星羅が首をかしげる。
会話は、いつも通り。
ネタ合わせも、ちゃんと進んでる。
でも。
どこか、噛み合わない。
ほんの少しだけ。
間が、ズレている。
「……ここ、もう一回やろか」
「うん」
言葉は普通。
なのに。
なぜか、しっくりこない。
星羅は、ふと顔を上げた。
瑛太は、台本を見ている。
目が、合わない。
「……瑛太?」
「ん?」
顔を上げる。
でも。
すぐに逸らした。
「……なんでもない」
「……そっか」
星羅は、小さく首をかしげる。
違和感。
でも、理由がわからない。
ネタ合わせを再開する。
笑うところ。
瑛太は、ちゃんとツッコむ。
タイミングも、言葉も合ってる。
でも。
なんか、優しくない。
「……あれ?」
心の中でだけ、呟く。
終わり。
沈黙が、少しだけ長い。
「今日、ここまでにする?」
星羅が言う。
「……ああ」
あっさりした返事。
いつもより、少しだけ。
軽い。
店を出る。
並んで歩く。
会話は、少ない。
星羅は、横を見る。
瑛太は、前を見たまま。
「……なんかあった?」
少しだけ、勇気を出して聞く。
ほんの一瞬。
「いや、別に」
即答。
でも。
その“別に”は、少しだけ硬かった。
「……そっか」
それ以上は、聞かない。
聞けなかった。
歩きながら、考える。
今日の瑛太。
どこが違うのか。
言葉にできない。
でも。
確かに、何かが違う。
「……なんか、変」
小さく、心の中で呟く。




