第四話『名前のない関係』
理由を言わない優しさと、
聞かないことで守られる距離。
名前のない関係が、静かに始まる。
翌日、アパートの共用廊下で再び顔を合わせたとき、
星羅が小さく声をかけてきた。
「昨日は、ありがとう……ちょっと助けてもらった気がする」
瑛太は、肩をすくめる。
「助けるっていうより……気づいただけや」
星羅は、少し首をかしげた。
「……何に、ですか?」
瑛太は一瞬だけ言葉に詰まる。
説明しようと思えばできる。
緊張していたことも、
無理に笑顔を作っていたことも。
でも、敢えて言わなかった。
言葉にした瞬間、それは“指摘”になる気がしたからだ。
「……なんとなくや」
瑛太はそう言って、視線を外した。
星羅は一拍、黙る。
それから、ほんの少しだけ息を吐いた。
「ありがとう…」
「……それ、助かります」
「理由を言われないの……」
瑛太は、その言葉に意外そうな顔をする。
「普通は、ちゃんと言ってほしいもんちゃうん?」
星羅は、ゆっくり首を振った。
「言われたら……多分、次から気にしすぎちゃうから」
その言葉に、瑛太は内心で小さく頷いた。
(ああ、この子も…一人で立とうとしてる)
二人の間に、短い沈黙が落ちる。
けれど、それは気まずさではなかった。
隣に住む偶然が、
少しずつ、心の距離を縮めていく。
まだ名前のない関係。
でも、もう昨日までの他人ではなかった。
読んでくれてありがとの〜(≧▽≦)
次は土曜日の12時に上げるよ〜♪~(´ε`)
猫田笑吉(ΦωΦ)




