第十九話:元の相方
店を出ると、夜風がひんやり頬を撫で、ほろ酔いの星羅の髪がそよいだ。
瑛太はその香りにふと戸惑う。
「気持ちいい風ね」
後ろから島原の声がした。
瑛太は咄嗟に90度お辞儀を返す。
「ごちそうさまでした」
星羅も同じく深く頭を下げる。
「いやいや、一万円返して…」
「ありがとうございまーす」二人は声を揃えて九十度。
「はぁ…2人で分けなさい」島原は苦笑し、二人は再びお礼を言った。
「気をつけて帰るのよ、瑛太頼んだわよ」
「はい」にっこり。
「島原さん、ごちそうさまでした」
「じゃ、私は電車だから寮まで、頼んだわよ」
「はい、お疲れ様です」
「はぁ〜い、お疲れ様」島原は手をひらひらさせながら駅へと歩き去った。
「お疲れ様でした」瑛太と星羅は揃って声をかける。
「さっ、帰ろうか」
「はい」
星羅の頬は赤く、ほろ酔い気味で、ふと笑みを零す。
「瑛太さん、やりますね」
「後で分けような」にっこり。
その時、背後から声がした。
「あれ〜、瑛太じゃん」
振り返ると、瑛太の元相方、田中健吾が立っていた。
「何のようや」戸惑う瑛太に、田中はにやりと笑う。
「つれねぇなぁ。無職のピンが金もないのにデートですか?」
「なんとでも言えや、行くぞ星羅」
「お前、今度お笑い番組でるんだろ、そちらの相原星羅さんと」
「俺もでるから、柊あかねさんとな」
「柊さん!?」星羅の目が一瞬見開かれる。
「星羅、知り合いなん?」
「うん…先輩…」
「まっ、せいぜい頑張ろうや。じゃあな」田中は歩き去った。
「なんなんだ、あいつ…」瑛太はぼそり、ふと星羅に目を向ける。
「星羅…どないしてん?大丈夫か?」
「な、何でもない」無理に笑う声が聞こえる。
「そうか…」瑛太は歩みを止めず、二人で夜道を進む。
「何かごめんな…」
「あいつな、昔はええ奴やってんけどな…」
「…まぁ……俺のせいでもあるかもな…」
瑛太は小さくため息をつき、星羅に微笑む。
「星羅…ちょっと飲み直さへんか?」
星羅は静かに頷いた。
夜風に混じる香りと、街灯に映る二人の影が、ゆっくりと長く伸びていく。




