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第十二話:舞台の化学反応

あの日から数日が経った。

仕事は無く、部屋には静寂だけが漂う。

瑛太はベッドに腰を下ろし、ぼんやりと天井を見上げた。

思い返すのは、あの瞬間——星羅との即興漫才の舞台。

ライトに照らされる二人。

ボケの間、ツッコミのテンポ。

全てが重なり、溶け合い、理想の化学反応を起こしていた。

「もう一度、星羅と舞台に上がりたいな…」

小さく呟く声に、自分でも驚くほどの熱がこもっていた。

時計は午後一時を告げる。

寮代わりの事務所のマンションは静かで、誰の声も聞こえない。

瑛太はベッドの毛布に頭を突っ込み、右へ三回、左へ三回と転がった。

その瞬間、スマホの振動が響く——ブーブーブー。

毛布に頭を詰めたまま、しばらく固まる。

「はいはい、昼間の暇人に電話してくる暇人は誰ですかね…」

呟きながら、手元の画面に表示された名前を確認する。

——事務所のマネージャー、島原瑠美。

瑛太は素早くスマホを取り、正座して丁寧に着信を押した。

「はい、三谷です」

島原マネージャーの声が耳に届く。

「あっ、瑛太くん?今、暇?」

「もちろんですって。と言うか、俺のスケジュール管理してくれてるの、島原さんじゃないですかぁ…ハハハ…時間ならありますよ…いくらでも…ハハ…」

乾いた笑いが虚しく、部屋に反響する。

「ハハハッ、そうだね。でね、瑛太くんさぁ、この前、星羅ちゃんと即興漫才して特別賞もらったじゃない。あの後、電話したよね、覚えてる?」

「はい、覚えています。何か番組プロデューサーが次の企画に二人で…見たいなことを言っていたと」

「そうそう、それでね、今から事務所に来てくれないかな。もう星羅ちゃんは隣に居るし」

「相原さん、来てるんですか?はい、わかりました。すぐに向かいます」

瑛太は慌ただしく、洗濯済みの服の山から服を取り出して着替える。

「これは、えらいこっちゃやで…」

頭に浮かぶのは、やはり相原星羅の顔。

「なんや、何で喜んでんのか、自分でも、ようわからんようになったわ」

ポリポリと頭を掻きながら、瑛太は玄関へ向かった。

外に出れば、そこには——また新しい化学反応が待っている。

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