斬新な残心
「あんまり好きじゃないんだよな」
テレビ中継で武道の一戦を眺めるミドル。
「どうして? 白熱した攻防だったじゃない」
あえてどの武道かは言わない。
「勝ったほうがガッツポーズを取ったから、だろ」
ススムは理解が速いので、会話が進む。
「残心、だね」
現代では廃れすぎて、斬新に映るかもしれない。
「あんた結構まともなこと言うのね」
ウィルは素直に褒めるのが気恥ずかしい年頃だ。
「死んだふりが得意な奴がいるからな」
両さんも、卑怯・ずるいは敗者の戯言と言っていたではないか。
「一回勝っただけで勘違いする連中が多いってことさ」
兜の緒は締めすぎにせよ。
「わたしは手離れの悪い人が苦手かな」
キョーコは、モノが手を離れる瞬間のことを指している。
「いるいる! 扉をバーンって閉める人とかね」
コピー機の蓋を乱雑に閉めるのも同様だ。
「それも残心が出来てないと言えるね」
用件を終えることと動作の完了とは、タイムラグがある。
「こっからここまでがパンチの動作だなんて、明確に区切れないぜ」
ミドルは“打つ”より“引く”が速くなるように心がけている。
「話し終えたらそれで満足なんてのも駄目よ」
すかさず聞く態勢を整えねばならない。
「お客さんが帰った途端に大声で雑談を始めちゃうのも、残心が出来てないかな」
残念な店員である。どこぞのマナー講師より、キョーコの話のほうがよっぽど身を美しくさせる躾になる。
「これ意識したら、大部分の悩みが解決しそうだ!」
振り上げた拳を下ろすところまで、人は見ている。




