その2 アイカツ~アイドル・倶楽部カツドウ~
「では本日の”悪役令嬢対策倶楽部”の活動を始めますわ!」
ローゼマリー会長の宣言から今日の倶楽部活動が始まった。
「ではアルト、よろしくお願いしますわ」
「いきなり丸投げですか?!」
こうして今日の活動は会長のいきなりの無茶振りから始まったのだった。
「そういえば以前仲間を増やすという話をしましたよね。あれってどうなりました?」
俺の言葉にサッと目を反らす三人。
あの時いなかったバルバラとエッダはキョトンとしている。
「いえ、何とかしようとは思っていたのですわ。でもどうすれば良いか分からずに・・・」
「ア、アタシもそうなのですよ。やる気はあったのですよ」
「ここは少数精鋭」
ゴニョニョと言い訳をする会長達。いや一人開き直っているのがいるな。
「一体どういう話なんだい?」
会長達の様子を見て黒髪前髪パッツン美少女エッダが興味深げに聞いてきた。
俺は彼女とバルバラにざっくりと話の流れを説明した。
「なるほどなるほど。確かに有効そうな手段だね」
「ああ。数は力と言うからな。父上も、ナンパは数だ! と言っていたぞ」
「父上のは別の話なんじゃないか?!」
数が大事という意味では一緒なのか? いやいや、バルバラのオヤジに騙されるな。
「仲間を増やすと言っても具体的にはどうすれば良いのでしょうか・・・」
「先ずは人気を得る事が大事なんじゃないかな?」
「人気ねえ・・・ 例えばアイドルみたいな?」
「アイドルって何なんですよ?」
あれ? この世界にはアイドルが存在しないのか?
クラリッサだけじゃなく、会長達も不思議そうに俺の方を見ている。
「ええと、アイドルとは人気者の事かな。俺のいた場所(日本)では熱狂的なファンが付いてごひいきのアイドルを支えていたんだよ」
「それなのです! ローゼマリーもアイドルになればいいのですよ! そうすればファンのヤツらがローゼマリーを支えてくれるのですよ」
「私がアイドルに・・・ 分かりました。私アイドルになりますわ!」
拳を固めてふんすと気合を入れるローゼマリー会長。
いやいや、なる、と決めてなれるのなら芸能界で苦労する人は誰もいないと思いますよ?
「それでアイドルとはどういう人がなるんだい?」
「うん? そうだな。アイドルと一口に言っても色々あるからな」
「そんなに色々なアイドルがあるんですの?!」
俺の言葉に驚くローゼマリー会長。
まあ、あるかないかで言えばあるな。
「今の日本・・・ゴホン、今の俺の地元で一番有名なアイドルは48人で一組のアイドルグループだな」
「48人もいるんですよ?!」
「ああ。そのアイドルグループから派生してやっぱり48人くらいの人数を有するアイドルグループが複数あったな。日本・・・ゴホン、地元だけでも6グループだったかな。そのくらいあった」
「「「「「どれだけアイドルがいるの?!」」」」」
日本以外にもアジアの各地で作られていたからな。全部で何人になるんだろうな。
「アイドルだけで騎士団が作れそうじゃないか」
「アイドルを支えるファンも合わせたら国が出来るんじゃないかい?」
「アイドル・・・恐ろしいですわ・・・」
俺の語るA〇Bグループの規模に恐れおののく会長達。
いやまあ地球はこの世界より人口が多いから。多分。
「それでアイドルは何をするんですよ」
「やはりメインはライブかな。客を集めて歌って踊るんだよ」
「そ・・・それなら私にも出来そうですわ」
俺の言葉から垣間見える広大なアイドル世界に腰が引けていた会長だったが、自分の手の届く話になって少し安心した様子だ。
「後はドラマ・・・お芝居に出たり、バラエティー番組・・・トークやクイズの催し物をしたり、グルメ・・・美味しい料理を紹介したり、ゲームをしたり、時にはちょっとしたドッキリに引っかかったり――」
「それを全部するんですの?!」
あ、いや、全部一人でやってる人はいなかったんじゃないかな。流石に48人もいるとそれぞれ担当が決まっていた気がするし。
「まあ今のは一番人気のあるアイドルグループで、他にも数名のグループや一人だけのアイドルもいましたよ」
「一体何人いるんだよ! 君の地元はみんなアイドルだったのかい?!」
おっと、エッダに怪しまれかけているな。
これ以上この話を続けるのはマズいかもしれない。
「あ~、まあ人間だけじゃなくて絵に描かれたキャラのアイドルグループもいたし」
「「「「「絵のアイドル?!」」」」」
アニメやゲームキャラのアイドルグループなんてのも普通にいたな。
ア〇マスやラ〇ライブ、ア〇カツもあったか。初音〇クもアイドルだよな。
俺のクラスにもア〇マス好きなヤツがいたなあ。
好きなキャラのSSRが実装されると知って、部活を辞めてバイトしてでもガチャを回すと宣言してたっけ。
あいつ結局どうしたんだっけな。
「そんな調子だと鳥や魚のアイドルだっていそうだよね」
「はっはっはっ、何を言ってるんだエッダは。そんなアイドルがいるわけないだろう」
「なっ! 君にだけは言われたくないよ!」
本当に何を言っているんだろうなエッダは。鳥や魚がアイドルになるわけないだろうに。
しかしエッダは俺の返事が不満だったらしく、顔を真っ赤にして怒っている。
う~む。解せぬ。
「読めたのです! アイドルとは誰かがアイドルと認めた存在がアイドルになるのです!」
「「「「おお~っ、深い!」」」」
「そうか?」
クラリッサの言葉には俺だけがピンと来なかったようだ。
まあ俺はこの中で唯一実際のA〇Bグループやラ〇ライブを知っているからな。
見た事の無いヤツらには具体的なニュアンスは伝わり辛いか。
「アルトが何か上から目線で良く分からない納得をしているのですよ!」
「そもそも本当にそんなアイドルグループが存在しているのかい?」
「私も信じられませんわ」
「激しく同意」
「まさかアルトの作り話じゃないよね?」
そう言われても困るな。
ここにスマホでもあれば動画検索をかけて実際に見てもらえるんだが、いや、スマホがあっても流石にネットにはつながらないか。
「そうそう、ネットと言えばネットアイドルというのもあったな」
「まだ増えるんですの?!」
まあね。ネットアイドルにご当地アイドル、ライブアイドル(地下アイドル?)にグラビアアイドルなんてのもあったな。アイドル署長――は違うか。あれはアイドルを使った広報活動だからな。
「アルトの所にはきっとアイドルじゃない女の子はいないんだね」
「何言ってんだ。男のアイドルだっているぞ」
「ええっ! 男もアイドルになるのかい?!」
なっちゃ悪いのか? 普通に女性にキャーキャー言われているぞ。
「もう何を信じていいのか・・・」
「アイドルとは誰かがアイドルと認めた存在がアイドルになるのですよ!」
「いやクラリッサ、それもういいから」
「私はアイドルにはなれそうにありませんわ・・・」
どうやら会長は果ての見えないアイドル砂漠に途方に暮れてしまったようだ。
でもこの倶楽部のメンバーはみんな美少女揃いだから、普通に全員でアイドルグループとして活動出来るんじゃないかな?
「「「「僕・私・アタシ・ウチを巻き込むな!」」」」
こうして今日の倶楽部活動は俺の話を聞いただけで終わった。
どうやら彼女達は俺にからかわれたと思ったらしい。
彼女達が狭量なのか日本のアイドル事情が異常なのか。




