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円卓と英雄と凡人と


円卓の騎士、そのテーブルが丸いのは互いに同じ場所に立つため、見ようによっては円卓内で格差など無い様にも見えるが、その内情はかなり違う。

まず戦力として一番上であるとされるのが湖の騎士、精霊の衛士であるランスロット、寿命という概念を精霊との契約で超越した怪物である。…まあ、一番悪評が多いのも彼なのだが…それはいいのだ。


だが、戦力を戦略レベルで考えるなら実質的に円卓で最強と言えるのは、とある光の神の剣を大元のそれとする星の光を束ねた剣と持ち主に不死性と不変性を与える鞘を持った騎士王本人、そして今目の前にいるゴリ…ランスロット卿である。


何故か。と問われれば一つはその能力、太陽神から与えられた加護によって日中は魔力を含める全ての能力を三倍程度に高められる。

そしてもう一つは…


「ガラティーン、太陽の加護と力を込められた神造の聖剣、まあ模擬戦で使える様な代物では無いので今回は木剣ですがね。」

「アッハイ。」


…軽々と自分の身長以上の大きさの丸太めいた剣を持ち上げる目の前のゴリラに色々と突っ込みたくなったが、今は昼間、それも正午近くである。彼の加護が徐々にその力を最高値へと向かってあがり極まって行く時間帯だ。


「いいですか、ベオウルフ、無茶はしないで下さいね、死ななければ、即死さえしなければ絶対に回復させられますが、チリも残さず即死されると面倒です。」

「先生!そこは無茶してもいいとか、なんとしても助けるとかそういうことを言う場面じゃ無いの!?」


不本意そうに叫ぶ彼に向かってハル先生は…


「無理です。今の貴方ではあの太陽ゴリラに十秒持てばいい方です。」

「ハッハッハ!酷いですね先生!外じゃなくなった途端にゴリラ呼ばわりとは、相変わらずな様で安心しました。」


ついでに彼はここの孤児院の出らしい、というかこの国じゃなくても双月教会の人間の手は上層部や騎士階級、場合によっては他の教会にまで広がっているらしい、ガウェイン卿も神の加護やら聖剣の呪いやらによって不老であり既に何百歳だとか言っていたのを考えると…ハル先生は一体幾つなんだ…


「そ、そろそろ始めません?」


審判役に呼ばれたシスターが権力者(この宗教の最大司祭という名の最高意思決定者と円卓の騎士でありこの句の中枢で数百年王に仕えてきたゴリラ)に挟まれ非常に可哀想なくらい縮こまっている。


「そうですね、そろそろ始めませんと…ヒミツの分の時間がなくなりますね。」

「ええ、私も見た目こそ若いですがもう歳ですからね、聖剣による広域殲滅以外の勝負は久しぶりです。」


…ちなみにここの国の首都で衛兵をやるには彼のガラティーンをなんとか一回は凌げないといけないらしい、なんでそうなったのかは諸説あるが…ガウェイン卿が王都から10キロ先に転移によって現れた地平を埋め尽くすほどの魔の軍勢を王都から50キロ離れた中心から焼き尽くした時、余波で王都の正門が焼け焦げたという10年前ほどの記録から察するに、まあ、そういうことなのだろう。

…ちなみに騎士王の聖剣は大陸を抜けて海を切り裂いたらしいが…うん、バケモノしか居ねえな!


「で、では…始め!」

「っ!」

「フン!」


おっと、そんなどうでもいいことを思い出して居たら試合が始まってしまった。…ってベオウルフ君先手取られてるねー。


「不味いですね。10秒保ちませんよこれは。」

「げぶぅ!?」

「ハッハッハ!軽いですよ!私を吹き飛ばした膂力は錯覚でしたか?」


おーおー、幾ら軽いとはいえよくもまあ小学生位の人間をポンポンポンポン吹っ飛ばすなー


「ガッ…くはァァァ!」

「むっ!」


10回目くらいだろうか、吹っ飛ばされすぎて気を失っただろうと思えば俺の時と同じ様にスイッチが入る。若き頃には勇士としてグレンデルと呼ばれる巨人を格闘戦で打ち倒し、老齢になっても王として善政を敷き、そして戦士として栄えある竜殺しとなって死んだ。

生まれ変わりと言うのは厳密には魂や肉体的なものが多く。その二つが揃うことは無いという。正直言ってあまり賢そうに見えないと言うのもあるが、やる事に思慮を感じないところからするに彼に英雄ベオウルフとしての経験が無いようにみえる。

それ故にその意識が消え掛ける頃、彼の肉体が、英雄としての血が励起するのだ。

…まあ、格好良く言ってみたはいいが、要は暴走である。制御不可である。血の生み出す肉体的な強靭さと圧倒的に高いスペックを獣性のままに動かし突き進みただ傷つけるのみである。

本当に制御不能ならば殺しの一つや二つしている筈なので理性がないわけでは無いというのが弱みであり、成長可能な点である。


…現状では意識が希薄な方が強いとか、技を教えている道場の門下生たちはきっと悲しいだろうが、それ以上の技量を持って彼を転がすことが出来る武術と言うのはやはりあって余分であると言うことは無い、


「がぁぁぁぁ!」

「まるで獣ですね、しかし…見え見えです!」


丸太の様な巨大な剣が確かな術理を伴って振るわれ閃き、哀れベオウルフ君は意識を奪われた。


「では…次は君ですね。」

「ひじょーにやりたくない。」

「ダメです。」


隣にいたハル先生にポンと投げ飛ばされるが、とりあえず空中で姿勢を制御し転がる様にして着地する事で地に着くところを増やしそして分散して力を受け流す。


「…むっ、その歳にしてその魔力操作…天性のものでは無いとみると…」

「ええ、その子は転生者、それでもギフトはほとんどないわ。」


ガウェイン卿は目を細める。


「…気が変わりました。ベオウルフ君はまあこれからの成長に期待して手を抜きましたが、君に対しては本気で行きます。遠慮はしますが…死なないでくださいね?」

「…え…はい。」


ガウェイン卿の目には後悔のような悔恨のような、俺への憐れみとハル先生への怒りが少し混じったような物があった。

…よく考えなくても、教会の孤児を生きて行きやすいようにと、戦闘訓練を施すのは如何にも何かやって居そうではある。実際問題ベオウルフ君の様な当たりやガウェイン卿の様な大当たりが混じっていることは少ないだろう。

と…なると…彼女は何かを探しているのか?それも俺の様な転生者、英雄の魂を持つものや神に愛された者を?一体なんのために…いや、いい、今は集中しようか。


「セット、『魔力循環』『強化』『硬化』『加速』オールコンプリート。」

「…」


一度全ての強化を発動させその後の維持を背後霊君に回し俺は更に魔力循環を鋭化させていく。肉体的な完成も強度も、才能も何もかも足りて居ないその空白を時間によって埋める前に現れたガウェイン卿に勝つには…いや、生き残るためには…


「ぜんりょくでいかせてもらう。」

「…乗り気じゃなさそうでしたが…いえ、そうですね。私が手を抜くのをやめようがやめまいが貴方は全力を尽くす。きっとそう言う物なのでしょうね。」

「さて、どうですかね?」


武器は短剣を二本、今の俺からすると少し長い直剣を二本、合計4本の木剣を選んだ。ズッシリとした重さが少し記憶を浮上させてきた様な気もしたが、それがなんなのかはわからない、いや、むしろ直感で選んだがこの装備…馴染みすぎじゃないか?


「試合、始めです!」


シスターの声が互いの鼓膜に到達する前に俺の戦いは始まった。取り敢えず循環した魔力を使い強化した肉体はどうにか少年程度の膂力と肉体的な強度を手に入れた。それによって俺は久方ぶりに無茶をすることが出来る。

とりあえず、俺は、俺と同じ様に音ではない感覚で開始を知覚したガウェイン卿の踏み込む床を木剣(・・)で切り裂いた。


「なっ!」

「…」


体勢が崩れたガウェイン卿はたたらを踏むが穴に落ちる前に踏み込んだ足ではない方だけで全体重を支え体重を移動し元の床に立つ。

俺も両手持ちしていた半ばからボッキリと折れた木剣を無造作に天井の方に投げ、腰から二本の短剣を出し構える。


「さっ、やりましょうか?」

「…流石、院長が見初めただけはありますね。」


その時ハル先生が歓喜の表情を浮かべて居たのを見て、凄まじく嫌な予感がした。

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