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魔法の悪用


「という訳でまほうげんごのじしょをかしてくださいハル先生。」

「何がという訳なのか全然わかりませんが良いですよ?」


さて、前も言ったかもしれないが解析というのは物体に対して自らの知識を利用した記憶の取り出しを行う魔法である。更にいうなら解析した物は魔力によって頭に刻み込まれる。もう一度魔法を使う必要が無いように魔法式の一部にそう言った効果の術式が有った。これもまた術式を最低限にし効果を最大にして使用する事で擬似的な『完全記憶』を可能にする。


さて、言語をきちんと学んだのにはきちんとした意味と理由がある。勿論読み書きという意味で重要な物ではあるが、この魔法をなぜか使えるとわかった時からこの悪用法を思い付いていた。

ゲーム脳と笑われるのも良いが、飽くまで合理的かつ効果的な手段があるならば検討するべきであるし、今回は非常に嫌な予感がするのだ。


と、言う訳で俺は辞書全体に魔力を通し解析を発動する。まだまだ簡単な材質の情報しかないが、確かに読み取れる表面の言葉、つまり解析を使う事で表紙が読めている。

ならば、ならば…ページをめくる事で高速でその本の情報を吸い取れるのではないだろうか?


「…っ、ッガ!?」

「一体何を!?」


一気にバラバラとページをめくる事で凄まじい量の情報が脳に叩き込まれ魔法の制御や魔力の操作が乱れそうになるが幽霊君と言う外付けのある俺だけの裏技として俺が行動不能になっても幽霊くんは独立して魔法を使うことができる。勿論、俺を媒介しているので発動するのは俺だが制御するのは幽霊君と言う面白い状況が生まれる訳だ。

止めようとしてくるハル先生の手を振り払い、全てのページをめくりきり崩れ落ちる。時間にして数十秒、しかしそれによって得られた情報は辞書と言う巨大かつ膨大な情報の塊全て、これによって普通に使えば数日はかかるであろう魔法言語の本を前提知識を使った『解析』による裏技で攻略できる。


手を振り払い崩れ落ちた俺を無言でベッドに運んだハル先生は不機嫌そうに部屋を出て氷嚢を持ってくると俺の頭に載せる。


「あ゛〜、つめたいのぉ。」

「…一体何をすればいきなり崩れ落ちる様なことになるのですか、というか先ず何をやったのですか。」


表情は変わらないのに確実に怒りと不機嫌さを伝えてくるハル先生マジクール、俺は一応原理を説明する。

すると彼女は俺の目を覗き込む。


「…待ってください、何故貴方は既に魔法が…いえ、でも…『彼』も幼い頃から魔法が使えた…いえ、けど本格的に使えるようになったのはきちんと祝福を得てからだった筈…」

「…あの?どうしたんです?」


彼女は少しだけ俺の目に魔力を通し何かを察したようでブツブツとしたつぶやきが止まる。無表情かつ俺にはまだ理解できない情報を断片的に呟きながら虚ろな目で見つめられるとか普通にトラウマレベルのホラー画像であった。


「なるほど…非常に使い勝手が悪いですが貴方は『魔眼』持ちらしいですね。」

「『まがん』?」

「ええ、そうは言っても最低レベルも最低レベル、普通なら生活魔法と呼ばれる便利なだけな魔法レベルの効果しかない物ばかりですし特段珍しいものではないのですが…貴方、体に刻まれたその魔法式を弄りましたね?」


ぎくり、と面白いくらい子供の体は保護者であるハル先生の眼力に反応する。


「…はぁ、言っておきますがそれは普通に自殺行為ですよ?」

「ははっ!ですよねー」


こめかみを抑え被りを振りながら溜息を吐くという『呆れている』というアクションを取ることで表情を変えずに呆れるだけ呆れた彼女は何処からか黒板を引っ張り出してくると魔法言語で『魔法の基礎』と書き込んだ。


「はぁ…折角ですから貴方に魔法の基礎の基礎を教えましょう。まず、術式が見えるということは魔力を視えている、つまり魔力の操作がきちんとできているということなのでしょうが…術式の余分に見える部分、魔法言語によって埋められた効果と効果を接続する空白は安全装置です。勿論、空白を少なくすれば効果は上がりますが…その代わりに、いえ、加速度的に魔力の操作が複雑化し、より純粋な魔力を必要とします。」


ガリガリとチョークの削れる音がする。


「例えるなら…そうですね、必要部分と空白部分は鉄の様なものです。鉄は限りなく純粋にすることで凄まじいまでの耐性や強度を持ちますが、その代わりに加工の難度が跳ね上がります。故に武器や防具、生活用品などに使う為に炭素などを加えたり適度に純度を落とすことで加工難度を下げ応用範囲を広げます。それと同じように魔法の必要部分はそれだけでも使えますし、もし十全に使いこなせるのであれば通常の魔法よりも高い効果と持続性を発揮しますが、肉体強化や解析など他の動作の補助や作業中に使う魔法の多くはそこまで魔力の制御や精製に時間をかけるものではありません、戦闘中でも足を止めてまでして初級の貧弱な魔法を打つのは効率が悪すぎます。故に魔法の空白は必要なのです。」

「ほへ〜。」


つまり俺のやっていることは非効率的であるということだろうか?


「ですが、貴方の場合はかなり特殊な例です。赤子の頃からずっと何かしているとは思っていましたが…魔力の操作や精製では既に一年ほど修行した魔法使い同等…貴方に憑いているソレも合わせれば初級の魔法を空白なしで瞬間的に発動させたり、今の年齢からすればあり得ない強度での強化魔法を発動させることができます。ただ、ソレも貴方が元から持っていた魔法だからであり、これから魔法を学んでいけばソレがいかに難しいことなのか嫌でも理解できるでしょう。」


まあ、非常識かつ魔法をまだ習ってもいない様な子供のやる事ではないと怒る彼女だが、何故か嬉しそうだ。

まあ、珍しく微笑んでいるので眼福だが、まだまだ俺も聞きたいことがある。頭痛が引いてきたので氷嚢を頭から離し起き上がる。


「ふむ…ソレはやっぱり『まがん』ってやつが関わっているのですか?」

「ええ、貴方の持つソレは一応魔眼ではありますが、どちらかと言えば先天的に魔法の断片を取り込んだだけの遺伝…ぶっちゃけてしまうと魔眼ですらない何かです。二人に一人は持ってますし普通に学べばソレくらいの差は誤差です。強いて言うなら転生者の様に元から自意識がはっきりしていないと意味すらないですね。」


おっと、心はガラスだぞ?

え、というかマジで死んで(不明)その後の安息すらなしにいきなり今までいた場所とは全く違う世界に飛ばされてきて知識チートも何もない状態で赤ん坊スタートとか…


「はーどもーどすぎてなきそう。」

「まあ、転生者の多くはなにがしかの神によって引き連れられてきたり、悪ふざけに巻き込まれたり、異世界転移などの禁呪に魂だけ巻き込まれたりと散々な方が多いと聞きます。その分ギフテッドと呼ばれる特典持ちの人は多いらしいですが、気にしてはいけませんよ、重要なのは努力し、思考し、ソレをやめないことです。」


まあ、つまり今まで通り…


「とりあえずその様な悪用法を思い付いたのだったらもっと詰め込んでも大丈夫そうですね。」


努力しろって事ですよね、知ってた。


ドンっ!


俺は目の前に積まれていく大量の書物と彼女が嗜虐的な笑みを浮かべて氷嚢を用意する。


「さぁ、どうぞ。」

「まあ、おれもやるきだったけどね!?」


おっと、体は赤ん坊だぞ?

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