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怪物


何故、俺がこの魔法世界において自分よりも大きく。逞しい存在を打倒できるのか、それは転生しているから、と言うのもあるが、それ以上に今まで倒せてきたものの多くが明らかな欠陥を持っていたからだ。


そう、ベオウルフ君なら心技体の未熟が、ガウェイン卿の場合は手加減、あの洞窟にいた忌々しい不死者供は知性がなく。襲いかかってきた転生者らしかった誰かは精神と身体が乖離し、つい先ほどまで戦っていた騎士たちは明らかに訓練が不足していた。


さて、それを考えると今の状況はよろしくない、非常によろしくない。


(魔剣…だろうが術式はもう発動しきってる。術式改変で今更破壊しようが魔法という超物理現象が終わった後に残ったのは『結果』、そこにはもう現象が起きたという過去があっての今しかない、ついでに面倒なのがあの怪物だ。俺は『知識と弱点』で戦ってんだ。知らねえもんは知らねえんだよ!)


激しい殴打、筋肉が異常発達させられたのか、それとも魔剣らしいアレの持つ代償なのだろうか?それとも正しい効果なのだろうか?…どちらにしても今更魔剣を壊したところでどうにもならない、推測だがおそらくあの魔剣もどきは刺された相手に狂気、外界の歪みを注ぎ込み、代わりに持ち主を異形とかしてしまうか…それとも何か他の身体能力に関するデバフがあるのか…いや、そもそも効果自体が代償なのかもしれない…


「っ!」

「ああああおおすづっhなかおあああ!」


筋肉と骨、人体を構成する要素として間違っていないものが、あるべきでない場所に、余分に、若しくは不足して存在し、人体以外のパーツも合わせてぐちゃぐちゃにしたキメラ、かろうじて人形のような5メートルほどの怪物、馬と人の足を生やしながらもところどころからと言わずほぼ全身から鋭利な骨が飛び出し、胴体も顔も足も腕も構わず目が点在、金属鎧と融合した装甲とのような皮膚、体の左右から生える複数の腕とその先端の骨のような構造物、ブサイクの下があるのならきっとこれよりはマシなのだろうというようなグロテスクな造形はその全身余さず殺意に濡れている。


体をよじるような前兆を見せまるでゴムの様に伸び縮みする腕は地面や壁面を吹き飛ばし、それに重ねるように何の前兆もなく愛ないから生成された骨が射出、勿論腕も来る。

最悪なのがこんな形でも俊敏性が高い事、おそらく全身が魔法によって異常に増殖させられた筋肉によって出来ているためだろうが、それにしたって無茶苦茶だ。生物として破綻している。そうとしか思えない、某這いよる混沌供に使える奉仕種族を思い出したが、この世界に存在する神話生物が、もし、今の俺の前にいれば、こんな思考の間も無く殺されのでそれでないことだけが救いである。


腕が加速し俺が少し数瞬前まで踏んでいた地面がえぐられ、動いた俺を追いかける様に骨が射出、さらに回り込む様に二、三本の腕が違う軌道で襲いかかって来る。

俺はそれを出来るだけ伸びきったところで切り飛ばしつつ、何もない場所へ体をねじ込む。

剣を見るが、やはり少しずつ痛んできている。武器に対する再生はまだ出来ず強化による先延ばしをしているが、いくら持つかわからない、本来西洋剣とは押しつぶすための鉄塊だ。斬れ味はさほど良くない、ましてやこれはただの数打ち、いくら名工の作品でも、超常の生物に傷をつけられるのは最低限としても、そのあり得ない強度の肉を何度も何度も切り刻む様には出来ていない、どうやらあの金ぴか、装備だけは一級だったらしく。ガーランド工房長の剣よりも上位の金属で構成されていたらしい、魔法の通りも良くなく。切り飛ばすとしても、弾くとしても、この剣が軋む。


そもそも俺は人型かつその急所がそのまま使える様な相手しか倒せない、物理的に手足を奪っても生えて来るし、痛覚はあれど丸で意に介していない、体力的に限界はあるだろうが、その限界は俺の方が先にくるだろう。


「あああああああああ!」


風切り音、バヒュンバヒュンと言う鞭の様な音と何かの砕ける様な音、それらが四方八方から連続で響く。見れば騎士達は何処かへと退避しており、残っているのは運悪く巻き込まれて死んだ肉片だけだ。


解析が少し進んだ。

すでに戦闘開始から数十分、全速力での回避を強いられている俺と全力でなくてもこの訓練場を何周も出来る様な怪物とのスタミナ差は今の所出ていない、魔力は削られているが大気から取り込めばなんとかなる。ついでに朗報だが相手には知性というのがあまり無いらしい…ま、それでもこちらからダメージは与えられず、攻勢に出ようものなら一瞬で首が吹き飛びデッドエンドな状態は変わらない…そういえばなぜ王の膝下であるこの騎士訓練場でこんな戦いが起きているのに誰もこないのか……そういえば王城から騎士王の魔力が漏れていない、それに王城内部にも結界が…あっ(察し)


「…ガウェイン卿か…ガレス師匠がきてくれるのを待つしかないか?っと!」

「あああゔぁゔぁゔぁあああああ!!」


現在、俺の全てはこいつに注がれている。なので探査も、建築物や周りを守ることもできない、自身を強化し、装備を強化し、敵を解析し、動きを探査し続け、更に高負荷である回天と時々間に合いそうにない時使用する瞬間的な魔力放出…全神経を注ぎ、集中している。それでも思考に余裕があるのは解析が自動なのと幽霊くんによる魔法演算の補助と思考整理、そして…おそらくだが俺の心が、精神が冷え固まり理性的であるから、だろう。




戦闘開始から…どれくらい経っただろうか?

無駄を排除する。無駄を探す時間はかかるがその分そのあと継続的にかかるコストは低下し、最終的にパフォーマンスが向上する。

最低限を避け、最低限の再生をし、最小限の動きで相手の攻撃を往なし、流し、回避する。

全力での回避はだんだんと落ち着いた物になり最小限で最高効率の一手を常に打ち続ける。


負けない、死なない、それは即ち勝てない、勝たない事だ。

欲をかかずに攻撃せず。ただ自らを存続することのみを考える。

最初の方はまばらに逃げ遅れた騎士がいたために攻撃の殺気、向きが広範囲だったが、今は俺一人に注がれている。それ故に読むのは容易く。崩すにはいまの俺には足らないものが多すぎる。


(早く誰か助けてくれ…)


とりあえず辛いので早くヒーローが来てくれないと死なないだけの俺は擦り切れてしまうだろう。

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