しかして笑え、笑え、笑っておけ
考えるに、やはり攻撃力である。防御力があることに越したことは無いが、殺すのであれば殺せるだけの、致命に至るナニカを持っていなければならない。
「そう思わないか?」
「まあ、そうだろうけど…僕らはまだ子供さ、特にヒミツ君はね」
珍しくベオウルフ君と二人きり、ガウェイン卿に連れていかれたガレス師匠には大変に申し訳ないが、ちょっと表情が緩んでいたのできっと大丈夫だ。イケメンのお仕置きはご褒美なのだろう。
『兄様の折檻がご褒美なだけだよ!!』
「…ナニカ…毒電波が」
「…やっぱりたくさん命を奪ったから気分が悪い?」
いや、そう言うわけではない、同情も共感もできないだろうが、俺は凡人、死にたくない俺が出来る最大限は諦めること、俺は人を殺さないことを諦めた。
そういえば聞こえはいいが、要するに逃避、直視しながらもそれに蓋をして見える問題を見えなくしているだけだ。
…いや、それはきっと嘘である。それであれば俺はもっと気に病んでいるなり、表面的にはなんとやら…的な動きをしないといけないのだろう。敢えて言い切ってしまうのなら、彼らを殺したことを気にしてはいないが、彼らを殺さなければならなくなった経緯に腹が立っている。と言うところだろうか?
「僕は王様の体があるからね、君のように生まれ変わってきただけの人とは違って恵まれている。」
「ああ、そうだね…それは事実だが…そんなに目を腫らしていたらみっともなくないかね?王様?」
「っ!」
割り切っている。と言うには些か非情すぎるが、余裕がないのだ。許してくれ…
そして横にいる若人は精神の未熟さ、身体が殺しを覚えているが、心がそれを許容できていない…いい例、とまではいかないが、その不安定さがある。正直言って俺よりよほど人間らしいとさえ言えるだろう。
「さて、ここか…」
歩みを止める。今回王様の気まぐれか、それともなにがしかの思惑があってのことなのか、ペリノア卿の弔いに参加することになった俺たちをどうにか生き残らせるために、ガウェイン卿がポケットマネーでもって最低限の装備を持たせてくれる。
鉄を打つ音と怒声が響く巨大な煙突が目印の工房を前に少しの間口を開けてボケっとしていた。
「でかいな…」
「大きいね…」
巨大な煙突が目印である。と言いはしたが、実際にはその存在すべてが目印的な巨大さと異様さを放っている。
一つに匂い、近代兵器めいた火薬と硝煙、それに僅かな魔力が混じり様々な薬品や熱された金属が水を蒸発させる匂い、様々なものが合わさり周囲1キロ程度を完全に無人地帯と変貌させている。
二つに巨大さ、煙突が、大きいのではない、煙突を含めた施設すべてが巨大かつ大雑把なのだ。
最後に音、怒声や金属を叩くような音が聞こえると言ったが聞こえるのはそれだけではない、爆発音や何やら魔法の発動する時の術式が砕け散るガラスのような音、何者かの高笑いや大小様々な物が崩れ落ちる音…
いや、もう何が言いたいかわかるだろうが、正直…
「目印がなくともわかるだろう。これは…」
「…周りにこれ以外何もないし…ね…」
工房区、と呼ばれていることを後に知るが、その名の通り工房と呼ばれる巨大施設以外何も無いところが此処であった。
そしてぼけっとしている間に俺はいつの間に宙に浮いていた。
「ああ?なんダァチビ助……ん?アレ?お前は…」
振り返れば巨人めいた大男、ベオウルフ君はすでに170センチ、俺は小学生低学年以下だが彼も宙に浮いていると言うことは3メートル近いのではないだろうから?
「貴方が工房長ガーランドさんですね?」
「ッハ!てぇことは太陽の旦那が言ってた客はテメェかちんちくりん!驚きだぜ!」
そう言いながら俺の腕と体を見つめる。
「うーん、すげえな、そっちの英雄らしい体のガキンチョは籠手やら大剣やらって所だろうが…お前さんに似合う武器がトンと見えない、こんなの初めてだぜ?」
「…」
「ふむ…まあいい、とりあえず上がれよ、試作品をいくつか振ってみてくれ」
「…子供に武器を与えるのに躊躇い無いですね?」
俺がそう言うとガーランド、髭面の大男は俺に向き直る。
「お前さんは子供かもしれないが…誰かに護られるようなやつじゃ無いって言うのはわかるぜ?」
「…へぇ」
「それにそこらの貴族やそこらの小僧だってダガーの一個や二個は当たり前だ。『自分の身は自分で守る』それがこの世界のルール、歪みってやつだろう?さ、入った入った!」
ガーランドはそう言うと俺たちの首根っこを掴んで屋内に運んでいく。
だが、俺は彼が少し寂しそうに、悲しそうに子供に、俺たちに武器を渡す事を当たり前だと吐き捨てたように見えた。
「いいか、辛気臭いカオスんじゃねえぞ、俺は俺の武器を使う奴は絶対に死なせないって言うのがモットーなんだ。だから子供だろうが、大人だろうが、たとえ人間じゃなかろうが、俺の武器を持つんだ。死なせねえよ」
俺たちを引き摺りながらそうでかい声で叫ぶ彼は、きっと頑固な鍛冶屋の親父そのものなのだろう。
「さ!ここが男のロマン!武器工房だぜ!」
そして石の階段を登らされ、開け放たれた扉の先の光景に、男心擽られると言うのは…男がいつまでもバカだからなのだろうか?




