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魔法修行?


さて、理性蒸発サイコピンクなガレスちゃん(本人曰く「ちょっと肉体の調整用のお薬がガンギマってるだけ」)は、一人芝居を終わらせ俺の前でポーズをとったところから表情固定で動いていない。


「…あの?大丈夫ですか?」

「…ッハ!ごめん、寝てた。」


この人は金魚か何かかな?いや、と言うかなに?寝ながら魔法発動したりダンスしたりしてたのかこの大魔法使い(狂)は、こんな師匠で大丈夫なのか?


「大丈夫…だと思います。少なくとも魔法の腕だけに限るならば、一般冒険者や一部超級冒険者にも引けを取りません」

「人格とか人間性についての言及がないけど…まあ、そう言うことって事ですか?」

「ええ、まあ…残念ながら」

「コラァ!そこな少年はともかく兄様は私と同じ血が流れてんだぞー!」


なんと言う事でしょう。あの太陽の騎士様がこめかみに手を当て、青筋を立てているでは無いか…魔女とかハル先生にあった時以来だぞ、こんな感情的なの…


「ふふん!まあいいさ、とりあえず修行だよキミィ、熱血バトル漫画も真っ青な修行をつけてあげよう!」

「よろしくお願いします。」

「…おかしいな、ここは教科書だと『なんでお前なんかに!負けないんだから!…んほおおお』って流れなはずなんだが…」


…このピンク髪の頭の中は常に薄い本展開を求めているのだろうか?と言うかなんで師事してくれる人に対してそんな失礼な態度を取らねばならないのか…


「さっきまで失礼だったよね!?」

「それはそれ、これはこれってやつですよ。師匠。」

「はうあ!?…グフゥ!クソ…転生者でも見た目は幼児、くりくりお目目で見上げられながら…も、もう一回!」

「早く始めなさい駄妹よ、時間がそんなに無いのはわかっているでしょう」


師匠と呼んだだけでこの有様なんだが…大丈夫か?


「大丈夫だ。問題ない」キリッ


これは…駄目そうだな…

俺はそんな諦観を抱きながらも、現状、スーパーハイテンション固定なこの女性に師事するしか俺の魔法というものへの理解が深くなる事はないのはわかっているため、師事する相手への敬意とそれに一定の割合含めてしまう諦観をため息にして吐き出しつつ。とりあえず魔力を循環し、その日は彼女のテンションが有頂天に達したまま理性が吹き飛んでいたので、一日中魔力の浄化をするのであった。




そして次の日、俺は中庭にピンク髪の魔法使い、笑顔固定のガレスと対面して立っていた。


「おはようヒミツ君、昨日はいやらしい夢を見たかな!ちなみに僕は見た!」

「…それで、どんな修行をするんですかね?」


「んー辛辣ぅ!」とかほざいてるが、昨日みたいに一日中喋って過ごされても困るのだ。そう思っていると彼女は空間の揺らぎ、魔力を見ればそう見えるが、普通の視界で見れば虚空に手を突っ込みそこから木の枝を出してきた。


「とりあえずこれ持って!」

「はい」


見た目はただの木の枝…解析しても特に何もわからない、まだまだ本を読む必要があると再認識しつつも、それがなんであるのかはよくわからない。


「そいつは枝…と、言ってもただの枝じゃない、魔法の杖、私の箒にも使われてる魔道具用の一般的なマジカルウッドの枝だ。ちょっと奮発していいやつを買ったんだけど…その様子じゃよく分からないって感じだね?」

「ええ、まあ、恥ずかしながら…」

「いや、そんなもんだよ。なにせ魔法使いになるって言って世の少年少女が一番最初に手渡される。教科書にも、どこにも書いてない秘密、口伝のみで伝わる代物さ…実際の所、それは初心者用のちょっと魔力濃度が高いとこに行けばいくらでも生えてる木なのさ」


よくよく注視するとうっすらと魔力を纏い、それを循環させている。まるでもぎ取られた枝ではないかのように、生命力にあふれている。だが、世の魔法使い達が口伝でのみ伝える…とは言うものの、実際魔法使いになる、もしくはなろうといている人間の多くがこれの存在を知っているはずだ。なのに賢者の魔法書にすらその記述はなかった。正確には杖と記述があるのみでそれが当たり前のように書いてあるだけだった。


「うん、君の疑問の通り、みんな知っている。」

「…じゃあ本に書いたって…」

「それは駄目なんだよ、なにせ杖っていうのはね…魔法使いの魂そのものといって良い程の代物だから、だよ」


そう言いながら彼女が短いワンド、指揮棒と呼ばれる類の杖を取り出す。


「これは僕が初めて作った杖、杖や棍職人に頼るのは二流三流、本当に魔法を使って、真に魔術を極めたいのなら自ら杖を作り、杖と共に成長する。それしかない」

「杖と…共に…」

「そう、魔法剣士でも魔法使いを名乗るような人は鍛治仕事まで覚えて自分で杖と剣を組み合わせた魔導剣を作る人もいるくらいさ、逆に、騎士の多くや今の君みたいに身体能力の強化や単純な魔法、肉体を介して発動する類の物を使うようなのは、魔法使いとは言わないし言えない、魔法使いのなんたるか、それは杖に現れる。これは、僕から魔法を習うだけじゃ無くて、これから先師事するいろんな人が絶対にいう心構え、教本では薄っぺらにしか伝えられない、口伝の見え伝えられる謂わば『矜持』プライド、心構えよりは願いだよ、杖はただの道具じゃ無くて、深淵を共に探索する相棒…杖を失くしたものはその瞬間から魔法使いとしては二流さ、どんなに魔法がうまくて、魔術が強くとも…ね。」


そう言って彼女は俺の瞳を覗き込む。そう、魔法には魔力と等価での現象発現以上の絶対的なルール、リスクがある。それは、魔法を使うたびに『深淵』とも、『狂気』とも称される外宇宙や別次元からの知識流入がある事、それに耐えるには、魔力に余裕を持つしかない、もしそれを怠れば術者はたちまち狂気に、その外界の知識に飲まれ、蝕まれ、堕ちる。その知識はあるだけで脳を焼き、自我を侵食しようとするが、同時により高次の思考をするための鍵である。無くてはならない、しかしその深淵を覗き込むには魔力がなければ成らず。魔法を打てば魔力が減り、魔力が減れば狂気に呑み込まれる。


「そんな時、杖は君を守ってくれる。杖には魔力を増幅させる力があるけど、それ以上に魔力をサーブ、貯蔵していくことに重きが置かれてる。これがあるかないか、それだけで生死の狭間を彷徨った魔法使いは大勢いるのさ…これも、きちんと師事をしないと杖の存在を知ることができない理由さ、なにせ杖には魔力があり、その魔力は杖に宿る。つまりこれを奪われるってことはそれだけで魔法使いとして潜ってきた修羅場や、捩じ伏せてきた狂気、そう言った知識、経験、魔力を通して蓄積された魔法使いとしての財産を失うことも意味している。」

「だから庇護者が、杖の存在を、その製法を教えてくれる存在がいなければ杖を持つことはできない…そういうことか。」

「うんうん!物分かりのいいことはいいことさ!じゃ、さっさと作っていこうか!」


…意外とまじめなんだな。


「あ!ちなみに相棒と木の棒って似てないかな!?」


…評価を上げる暇もないとか…逆にすげえな。

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