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ナンダコレワァ…


やあ、一歳と半年を生き抜いてきた幼児こと…俺だ。つい昨日魔女の使い、もとい襲撃があったが…


「何もなさすぎて怖いな。」

「ええ、まあアレは人間だったので結界などが反応しなかったのは問題ないですが、流石に魔法使いではない私でも気配察知くらいはできます。少なくともこの街で動く全ての人間、動物を把握していた筈ですが…昨日の彼は、突然街中に現れました。おそらく転移でしょうが…いえ、どうでしょうね、微妙なところです。」


俺は朝食をムシャムシャと口に運びながら目の前で天井まで届くんじゃないかと思うほどに完食した皿を重ねるガウェイン卿を見る。すると、彼もこちらを見て不思議そうに言う。


「そう言えば、いつの間に祝福を?魔法は色々と抜け穴がありますが、魔術や練技と言った高等魔力操作は教会などで制限を解除されなければ使えない筈ですが…」


まあ、疑問に思うのも無理はない、なにせ昨日俺は魔術を使ってあの英雄のガワだけを被ったヘンテコなものを打倒したのだから、実際、成人前に酒を口にすることすらできないこの世界の法則に真正面からケンカを売るような真似は出来ない、もしそんな事をすれば世界のルールは容赦なく違反者を駆逐するだろうが…だが、それ以上に優先される法則があればどうだろう。


「この世界は、特に魔法と魔術は祝福やら、魔法付与やら色々ルールがありますが、基本的で、最強のルールはたった一つです。」

「…なるほど、等価交換…いえ、ですがそれには君の内包する魔力はあまりにも少ない、祝福は子供の体を壊さぬように神が仕掛けた制限を撤廃する儀式です。たしかに子供の中では最高レベルまで増強されている君の魔力でもあんなに長い間展開するのは不可能な筈です。」


流石ガウェイン卿、ゴリラでも長い間生きてればそれくらい知ってる…というか、よく考えたらこの世界では魔力を捧げて何かを得ると言うのが一般的すぎて等価交換という法則は本能レベルに刻まれたものなのだろうか?

俺は感謝する。


「ガウェイン卿とアリシアさんには感謝してますよ?ガウェイン卿は怪我の治療用に、アリシアさんは古い約束のおまじないに、それぞれ魔力を分けてくれたでしょう?」

「ええ、ラモラック 卿はともかく私は…いえ、まさか!」

「そうです。他人のものでも魔力は魔力、循環率は落ちますがそれもこれからの訓練次第かなって、思っています。」


そう、今回の戦いで俺が使用したこの半年間の成果、『術式破壊』と『魔力回天』、ちょっと厨二臭いがいいだろう?…男はいつまでもバカなのだ。術式破壊は文字通りだが、魔力回天は…


「周囲の魔力を巻き込み自らの魔力とする。歴史的に見れば魔力の少ない、もしくはほとんど無いような完璧に魔力を操れる人物に多くあるそれを…貴方の魔力量で、ですか…」

「あれ?もしかして珍しくすごい技術?」

「珍しいも何も、それが使えると言うことは自らの魔力を全て掌握していると言うことになります。いえ、ですが…少なくとも儀式をすれば今の二倍の魔力はすぐ使える筈です。まだ貴方は一歳と半年しか生きていないのです。魔力の成長期が10歳までと短かったとしても…ありえない魔力量でそれを無尽蔵に回復するやばい生き物が出来る…筈です。」


やった!やった!ついに俺にもチート能力が…


「ですが、逆に言えば魔力を制御できなくてはできないので、今の魔力量から魔力が増えればできなくなる可能性もあります。」

「デスヨネー」


まあ、今は制限がかかってこれ以上魔力が成長しないらしいが、逆に言えば手頃な魔力で収まっている今しか使えない特殊能力かもしれないってことだ。…これ、維持するの相当辛くね?


「そうですね、魔力量が多い大魔法使いの多くは緻密な制御よりも大量の魔力を消費して大規模な破壊を生む大魔術を好みます。其の彼らの多くも最初のうちは似たようなことができたそうです。」

「…はぁ…」

「むしろ私としてはよく子供の魔力で術式破壊が出来たと思うんですが…」


術式破壊は多くの近接戦闘者、いわゆる戦士や騎士が持つ魔力を纏うことでのみ行える術式への干渉、拳や剣に宿らせた魔力を使い超超近距離において術式を破壊する技術、まあ、普通に使うならば騎士や戦士同士の戦闘で互いの魔法や魔術を破壊するときくらいしか使えない欠陥技術だ。


「そう、まさしく欠陥品、魔法使いは空を飛ぶこともありますし、そもそも魔法や魔術によって起こされた現象は心中にある魔力の起点を破壊しなければいけない上に、呪詛や魔術などの強すぎるものは破壊できなのですが…君のそれは違いますよね。」

「…ええ、まあ、けど多分教えれば出来ますよ?」

「ふむ…では、試して見ましょう。とりあえずやり方を。」


ええ…そんなニコニコしながら幼子から技術を盗まんといてーな、いや、まあ教えるんだけどさ。


「とりあえず解析を常時展開してください。」

「無理です。」


…おっと、俺の耳が腐り落ちちまったのかあ?


「えっと…初級の魔法で、多分念じるだけで発動する筈なんですが?」

「言い方を変えましょう、貴方はどうして解析が欠陥品なのか、それがわかっていない節があります。」


そう言いながら爽やかゴリラは手を叩く。するとはるか上空から何かが落下してくる。え、あれ、いや…


「これは直撃コー」


俺は言い切る前に釘を爆発させ横っ飛びし回避する。自らのセリフを切ることになったが、まあいい、あの運動エネルギーは幼児には過激すぎる。

少し遅れてフワッと着地した彼女は…彼女であってるよな?はピンク色の髪を隠すようなフードを取りよくわからないくらい輝く笑顔を見せる。


「ヤッホヤッホ、僕だよー、ガウェインちゃん、今日は何用ー?」

「…もう、登場方法について突っ込むのは諦めたが、今日のは少しやりすぎですね。」


そう言って彼は彼女の頭を鷲掴みにし持ち上げる。


「あー!あ゛ー!絞られちゃう!僕の頭が絞られちゃうよ!」

「大丈夫です。そもそも詰まっていないのだから、多少出ても誤差の範囲内です。」

「ぎゃー!目がシリアスだよ!やばいよ!助けてしょうねーん。」

「ほう…自分が殺しかけた幼子に命乞いするとは…見上げた根性ですね!ガレス!」


メキメキという音が聞こえてきそうな場面だが…いや、というかちょっと冗談を言う時はあれど基本的に紳士なガウェイン卿がどうしてこうも…その…キレちまっているんだ?


「このっ!愚妹ガァ!」

「アハァーン、兄さん刺激的スギィ!」


あ、うん、ソウデスカ。

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