欠陥英雄はかく語りき
それはまるで子供の形をした悪魔だった。
「ヒッ…そんな!同じ転生者のよしみだろ?」
「…死ね、出来ればその小物っぽいセリフを遺言にしたままな。」
俺はシャルルマーニュ、大魔女モルガン様に召喚された英雄の肉体とその魂の一部を転生者たる◼️◼️◼️◼️の魂を合成し、特典と英雄の特性、そして無制限の魔法使用が可能な超チート戦士、の筈だ。
少なくとも刀剣生成という名前の通りのこの力は、相手の持つ解析の低級魔眼や強化魔法、再生魔法より全然強い筈で、俺自身強化や再生の魔法どころか、むしろ魔術まで使える魔法戦士、負けるような戦いではない筈だった。
「術式展開、魔法式圧縮、四重展開身体能力強化、魔術発動、肉体強化」
そう、一つ目の想定外は目の前の幼児が何故か魔術の使用が可能になっていたという事、だがこれだけなら俺は負ける要素なんてまずなかった筈だ。変身途中に攻撃するようなタブーだが、切った張ったの世界ではその隙は致命的すぎる。
「もらっ…」
「…1…2…3、加速術式起動、対象が範囲内に入ったのを確認、魔力起点に向かっての加速術式を起動する。」
連続する爆発、いや、破裂だろうか?俺はいつのまにかそこら中に撒き散らされていた釘に向かって加速する空気によって空間ごと引っ張られるような感覚とともに加速術式の限界を超えて圧縮された空気が元に戻る時の爆発に巻き込まれる。
「アガッ!?」
この時、既にボロボロだった。いや、本来ならば俺の肉体に宿る魔力と、英雄特有の頑健さが損傷を防ぎ、それを再生するという算段だったのだが、どうやっても魔術が発動しない、
「へぇ、それが再生の魔術、ついでに障壁と強化…まあ、無駄が多いけど削れば使えなくはないでしょ」
「はぁ?」
目が、光っていた。
奴が解析の魔眼というクズ魔眼もクズ魔眼、最底辺の低級魔眼の持ち主なのはわかっていた。歴史上では神や龍の叡智を簒奪し、もしくは手順を踏んで手に入れた英雄や、何かに特化してその構造を見たりするような特殊な才能の持ち主以外は、マトモに使えない筈のそれが、目の前の幼児によって完璧に使用されていた。
いや、完璧ではないのだろう。だが、その時の俺はともかく、今剣を振り下ろされそうになり走馬灯を語っている俺には十分に脅威だった。
魔力放出による迎撃に移ろうとした次の瞬間、俺の体に拳が刺さっていた。
「かっ!?」
「魔力操作はアリシアさん以下、というか、ペリノア卿も魔術を…いや、あの人は剣一筋だったなぁ…」
喋りながらも其の拳打は止まらない、それどころか、身体能力で劣っている奴の拳が見えない、起こりと終わりが見えるが、俺の体に触れる瞬間や加速の瞬間が全く見えない。あるのは衝撃だけ、突き刺さるような打撃は再生の練度を超えた肉体の損壊をもたらし始める。
「言っとくが、俺は別に特別なことをしてるわけじゃない」
そう言いながら奴は俺が発動しようとしている魔術式と魔法式を破壊する。
「はぁ!?」
「解析できて、圧縮できるんだ。…まさか、俺が見えてる術式の直接操作ができないとでも?」
バカな!バカなバカな!
「ヴァカな!!術式起動から発動まで一体どれほどの時間があるというんだ!」
「目測0,01秒、だが身体能力の強化と肉体強化、それに加えて脳筋なアリシアさんが唯一見せてくれた魔術、それがあれば百分の一秒位掴めないわけがない。」
そう言って奴は俺の心臓を鷲掴みにし笑う。だが、それが砕かれた程度で俺は死なない!このけいけんをいかしてつぎに…
「肉体と精神の乖離、道理で死臭がすると思った。」
「あ…っが…!?」
奴の目が光る。…っ!待て!まさか!
「今解放してやるよ、英雄シャルルマーニュ、『術式破壊』!」
「あああガガガがガアアアアア!!?」
魔力が!焼け付くような痛みが!神経を通り今俺がいるこの体に響き渡る。染み込み、内側から釘で打ち付けられるような!いたいいたいいたいいたいいたいいたいいたい!!
そして、気がつけば俺の容れ物は、シャルルマーニュという容れ物は其の特異性を全て失い、いや、其の全てを焼き尽くされた。ついでとばかりに俺がモルガン様から授けられた転生術式も破壊され、俺は本当の死、という恐怖に取り憑かれた。
奴は未だに動けない俺を見下ろしアンサラー・デゥランダルを長大な剣のような形に変形させる。
「クッソ重いが…まあ、今一瞬だけだ。」
ヨタヨタと、いやわざとゆっくりとこちらに迫ってくる悪魔、月の光に照らされた奴の顔は…どんな喜悦にも染まっていなかったが、ただ淡々と俺を直視していた。
「ヒッ…そんな!同じ転生者のよしみだろ?」
「…死ね、出来ればその小物っぽいセリフを遺言にしたままな。」
そして俺は…
魔力循環率、60パーセント、魔法、魔術による肉体損壊、78パーセント、
「…流石は肉体だけでも英雄だな、戦い方はどっかの弓兵みたいなのを中途半端に、しかもランクダウンさせて模倣したようなもんだったが…」
俺はそこら中に刺さった刀剣を全て回収する。どうやら本来は生み出した刀剣を使って戦うはずが、それが歪みに歪んで体から刀剣を射出するような戦いになったようだ。
「ま、罠にかかったのは本当に笑っちまうかと思ったぜ?」
俺は死体を燃やし尽くすと残った禍々しい魔力を宿す何かを見る。
「さて、どうしようかな。」
「こちらに渡してもらいましょう。」
もんから入ってきたのは不審者…ではなくゴリラ…じゃなくてガウェイン卿、
「わかってたなら助けてくれてもいいじゃないですかね?」
「助太刀は不要かと、それに…やはり君は何かおかしい、其の違和感の確認ですよ」
彼はそういうと呪物を灰も残さず燃やし尽くした。解析も弾かれていたし、まあ、仕方がないだろう。




