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命を弄ぶ外法


魔力を分散させつつ解析によって視覚以上の情報を周囲から吸い出す。


「ラモラック卿、ガウェイン卿は多分誘導されてますよね?」

「ああ、あの脳みそゴリラな太陽の騎士バカみてえな囮に引っかかってる。」


足跡は途中からガウェイン卿の破壊痕から逸れており、ラモラック卿の槍の穂先もガウェイン卿の進む先とは違う方を向いている。


「…仕方ありませぬ、ガウェイン卿は魔女に対する並々ならぬ執着がありますから…ここは我々だけで行くしか無いでしょう。ヒミツ君、ラモラック卿、正しい道をお願いいたします。」

「「はい/おう!」」


こちらはガウェイン卿を削られた。正直言ってオーバーな戦力であったが、暴発されても困る。さらに言うなら何処か与り知らないところで森もろとも吹き飛ばされればそれこそここら一帯は焼け野原だろう。

…だが、もうそれは仕方がない、そもそも今回の件を聞いた時から彼の様子は常軌を逸しており、今は多少はあった理知的な部分が全部吹き飛んでしまっている。いや、もしかして…


「精神作用系の禁術…か?」

「…太陽の加護があるあのお方がそんな魔法にかかるとは思えないが…そう言った魔法は心の隙を突くもの、忌々しいことにあの魔女は魔法使いとしては宮廷魔導師殿と同程度の超一流であると聞き及んでいます。それを加味すれば…不思議なことではない、と言うことですかな…」

「っち!あっちの心配もいいけど、こっちもそろそろ近づいてきてるよ。」


ラモラック卿はそう告げると走る速度を落とし、魔力を抑え周りに溶け込むようにして茂みにしゃがみ込んだ。ベオウルフ君はそれに倣って立ち止まろうとして茂みから飛び出そうになりそこをラモラック卿に首根っこを掴まれ引き戻される。ペリノア卿は剣に指を当て何かを唱えた。発動した術式を見るに付与魔法、風と闇の複合した上位魔法…効果は刀身の不可視化と消音だろう。俺は指の間に釘を挟み込み魔力を漏らさないように封じ込め魔法の待機をする。


「〜〜、〜…」


人の声、耳をすますまでもなく目の前の洞穴の前にいる見張りのものだろう。俺は周囲に魔力をうっすらと散らし、一番信用のおける解析を主軸に風魔法の探査と炎魔法の熱源探知を行使、釘が3本塵になる。


「外に四人、中はちょっとゴチャゴチャしすぎて断定出来ないけどマトモな人間は5、6人、魔力はあるけど体温が無いのが10以上、洞穴の中は…まっすぐに伸びてるようだけど所々隠し通路やら何やらがあるみたいです。」

「…そこまで分かれば上出来…と、言いたいですが、妙なのは明らかに目には一人二人に見える外の見張りが四人だと言うことですな。」

「あっちの奴らが魔道具かなんかで透明化してんのか、それとも分身でこっちの探査をごまかされてるのか…どっちでもいいと言えばいいが、一回探査した以上もう動く以外の選択肢はないな、魔法使いがいるようだし次やれば確実に気づかれるだろ。」


まあ、俺の今の魔法は非効率的な上に最高に探知されやすい、今は運良く動きがないが、そんな幸運が続くなんてことはあり得ない、俺は予備の釘を取り出して魔力を込める。勿論、前々から魔力を込めておいた予備はあるが、せっかく膨大な魔力量と循環による魔力効率、そして…異世界人であるが故かの発狂ペナルティ無しと言うメリットは生かさねばなるまい…ちなみに、釘の消費は一時的な魔力の増強と魔法の多重発動に使っている。一重で不完全にしか展開できないのならば展開できなかったところに重点的に魔力を回し、術式を形成、重ね合わせると言う手法だ。正確に多重発動ですらなく術式の穴を無理やり埋めているだけだし、効力は通常の半分以下だから魔力を多く使ってゴリ押さないといけないしで大変だが、発動しないのと比べれば全然マシである。


「とりあえず私が先行します。ベオウルフ君とラモラック卿は出入り口の確保を、ヒミツ君は…非常に危険ですが付いてきてもらいます。正直、魔法には疎いものでして。」

「わかりました。」

「ッチ、子守かよ…オーケー、オーケー、安静にしてりゃあいいんだろ?」

「なんでヒミツばっかり…」


ペリノア卿の判断にラモラック卿とベオウルフ君は不服そうだが、ペリノア卿の魔力の流れも洗練されてはいるが魔法使い程ではない、今のところきちんとした魔法使いを見たことはないが、ハル先生や冒険者として街を歩いていた魔法使いを見たうえでペリノア卿のソレとの差は歴然であった。


俺は魔力循環による肉体強化、魔法としての身体強化を重ね一応もらっていた鉄製のダガーを鞘から抜き右手に、左手に釘の入った皮袋を持って待機、次の瞬間、先ほどまで隣に居たはずのペリノア卿は一瞬で洞穴の入り口付近に躍り出ると一瞬にして可視可能な二人と透明化して居た二人を殺害した。


音もなく全てを終えた彼は剣を油断なく構え周辺を見ると手を挙げる。移動の合図だ。


「ヒューっ!流石『暗剣』ペリノアだぜ!」


ラモラック卿が茶化すようにそう言うが、確かに彼の剣技は緩急が付いていると言うよりは正面から不意を突くような、暗殺めいた動きが多いように見えた。音も気配もなく見えもしない剣を振るう彼にはぴったりのあだ名かも知れないが、本人的にはどうなのだろうか…


「…あまり、年は取りたくないですな…」


…凹んでらっしゃる。今の剣のどこが駄目だったのか、俺にはきちんと型にはまった完璧な振りに見えたが…いや、そうか、あのサーベルの輝き、鏡面のような美しい見た目は…


「もしかして、昔は魔法をかけなくても剣が光の反射で消える角度を調整して放ってました?」

「ご名答、今の私ではもう出来ませんが、真の暗剣とは暗がりにあるのではなく光の中にあるのです。」


そう言って魔法を解いたサーベルを傾けると太陽光の中に解けて消える。そしてそれを一度振るえば光の筋と風切り音が鳴る。


「昔はこの筋も、こんな羽虫の様な音もしなかった。技量は維持できていると言っていいのですがやはり身体能力の衰えが効いています。」

「…それで衰えてんだったらそれに勝てない俺は女だから勝てないとかいっとけばいいのか?あぁ゛?」


ラモラック卿がキレ気味だが、いまはそんなことをしている場合ではない、


「お二人とも落ち着いて、まだ始まったばかりですよ。」

「…そうですな、いまは自分の衰えを嘆く時ではありませんでしたね。」


そう言って彼は剣を振り魔力を通すとその刀身は嘗ての暗剣と似ても似つかないものの形としてはそれに近くなった。


「では、行きましょう。」

「はい。」


魔力を目の付近に寄せ視力をあげる。暗がりに対応できる様肉体を操作し瞳孔を開く。しかし、その先に待っていたのは…酷く醜い光景だった。


「こ…れは…」

「…有り体に言って最悪な趣味ですね。」


体温がなく。魔力だけしか感じない不死者、それだけでも恐ろしいというのに、


「あ…ががg…たすけ…たすけ…て。」

「寒い、苦しい…あああはっはばっっが」


死者と生者を混ぜ合わせた。キメラ、獣の死骸と人の死骸と魔法使いという核、それで構成された彼らは魔力の暴走によってその身を崩壊させながら再生している。


「…魔力の集中点は見えますか?」

「ええ、その程度は…彼らを、終わらせてあげましょう。」


首には奴隷紋と呼ばれる術式が光る彼らは一体何のためにこんな姿にされたのか、そして何故こんなことをしたのか、そんな疑問が巡る頭とは裏腹に、心はまるで鋼の様に冷え切っていた。



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