それはまたしても突然に
今日で月曜になったので俺は学校を目指している……今。まあ、つまりは登校中ってことだ。と言っても、今家を出たんだがな。
(……そういえば)
ふと、俺は歩きながらとあることを考える。
(もうあれから一ヶ月、か……早いもんだな)
あの出来事がなければもう少し違う生活があったんだろうな。ま、それが必ずしも良いことだったとは言い切れないがな。たとえば今の暮らし、俺は今、普通に一人暮らしが出来ているがもし前の俺だったら両親が死んだことのショックで悪ければ引きこもっていたかもしれない。
まあ、現実は今起こっていることだから、本当にそうだったかもしれないしそうでなかったかもしれないと言う推測しか出来ないが。
「おお、おはよう、空」
と、そんなことを考えているといつの間にかいた総司が後ろから俺に挨拶をしてきた。
「ああ、おはよう」
俺は彼にそう返す。すると総司は何かを思い出したのか「ああ、そうそう」と言って、懐から封筒を取り出した。
「ほいよ」
そして俺に渡してきた。
「ん? 何だこの封筒」
俺は総司から今しがた渡された封筒を見ながら聞く。
「ほら、入学式のときの明美とのツーショットだよ」
ああ、確かにそんなこともあったかな。校門の前で俺と明美が並んで撮ったあの時の写真だろう。
「なんでそれを俺に?」
「いいから持っとけって。記念だよ記念」
記念、か。
「まあいいけどよ」
言いながら俺はそれをブレザーの内ポケットへとしまった。
「あああと、今日は明美と海華は俺達とは合流しないで学校へ来るってさ」
「本人達に聞いたのか?」
「いんや、メールだよ」
そういいながらポケットからスマホを出しそれを俺の目の前で振った総司。
「そっか、お前はスマホもってたっけか」
「まあ、学校じゃあまり使わないけどな」
そんな雑談をしながら俺達は学校へと向かった。
「あの、空君!」
「ねえ、空」
教室、そこで俺は周囲の相変わらずの殺気のこもった視線を受けながら明美と海華から呼ばれた。
「……えっと、どうした?」
あまりこの二人と今の状況でかかわるととてもめんどくさいことになるのだが……無視は出来ないので手短に済ませようと俺はそう聞く。
「私とメールアドレス交換して!」
「僕とメアド交換しよ」
……ああ、うん。なるほど。いや、二人の言いたいことはわかる。俺と携帯のメールアドレスを交換したいらしい。だけど……
「あの、少し言いずらいんだけど、俺、携帯持ってないぞ」
「「え?」」
二人の漏らした声が見事にハモッた。
「え、嘘、空君携帯持ってないの?」
「ああ、そう言ったぞ」
驚いた様子の明美の問いにそう答える。と、海華がさっきからどこかに電話してるんだが……
「……うん、そう。あのね、すぐに携帯を持ってきてほしいの。うん、一番良いやつ。うん、お願い。それじゃ」
「……海華、お前今何やってた?」
どこかに電話し終わった海華に俺はそう聞く。いやまあ、今の会話を聞いた俺の予想が正しければ恐らく……
「空の携帯の調達だけど」
笑顔でそう答える海華、って!
「お前何しちゃってんの!俺にそんな金はないぞ!」
「大丈夫だよ、僕が買うし、通信費やらその他もろもろも払うよ♪」
「いやいやいや、俺そんな迷惑かけたくねぇよ!」
すると彼女は俺の耳元に口を近づけ囁くようにこう言った。
「僕、今お小遣いでもらった百万円持ってるんだけどね」
「は?百……え?」
だめだ、桁が違いすぎて理解が追いつかない。海華は続ける。
「でもそんな大金持っててもあんまり使う機会がないの。だからこれくらい大丈夫だよ」
どうでも良いことだが今の彼女の一言で金銭感覚が狂っていないことがわかった。いやまあ、これも結構大事なことだけどね。でも確かにそんな大金使う機会がないだろうしそう考えると買ってもらうっていうのもあり……なのか?
「……わかった。じゃあお言葉に甘えるとするよ」
そう言うと海華は俺の答えに満足したように耳元から離れた。その時、
「……ん?」
何か今、頬にやわらかい感触が……
海華を見ると彼女は何か恥ずかしそうに頬を赤く染めてこちらを見ている。そして彼女は次に明美を見て、彼女に笑顔を向ける。明美はそれを見て頬を膨らませた。たぶん怒っているのだろう。
……ていうか、これよくわからないんだけど、なぜかクラス中が俺に殺気がんがん飛ばしてるんだけど。俺はどうしようか迷ったが、こうすることにした。
(はあ……逃げよう)
俺はかばんの中から弁当と暇なときに読むための本を取り出し席を立つ。
「あ、空君、どこ行くの?」
「……ちょっとな」
俺はそう濁して教室の外に出た。
「で、どうするんだ」
外に出たところにちょうど待ち構えたようにいた総司がそう聞いてきた。
「お前、教室にいないと思ったら廊下にいたのか」
「ん、まあな。いやそうじゃなくて、お前はこれからどうするんだ?」
「サボる。ていうかお前、見てたんなら助けてくれてもよかっただろうに」
「ん?俺が何を見たって?」
「とぼけるなよ、見てなかったらお前が俺にこんなことを聞くのはおかしい」
「はは、やっぱばれるか」
笑いながらそう言う総司に俺は言う。
「ま、俺はあそこにいるから、何かあったら来てくれ」
「了解」
そういった総司は「ちなみに」、と続けた。
「さっきお前、海華に頬にキスされてたんだぞ」
「……は?それってどういう」
「言葉通りの意味だよ」
そういって総司は教室へと入っていった。
(なるほど、だからクラスのやつらは俺をあんなに睨んでたのか……あれ、でも何で海華は俺にキスをした?……それになんで明美はそれを見て怒ったんだ?……)
そのあと俺は、なぜ海華が俺にキスをしたのか、なぜそれを見た明美は怒って(たぶん)いたのか、その理由を考えていた。まあ、結局わからなかったが。
ここは屋上、時刻はもう十二時をまわった。弁当も食べ終え、本も読み終わってしまった。
(もうこりゃ、昼寝しかすることがないな)
そう思い、俺は横になる。
(……にしても、俺は本当にここにいるんだな)
俺は思い出す。この世界ではそう遠くない過去を……
(あの時はびっくりしたなあ。いきなり異世界に飛ばされて、さらに俺は巻き込まれただけだったからなあ)
あれ、と俺はふと疑問に思う。
(俺、誰に巻き込まれて飛ばされたんだっけ……ぐっ!)
それを考えていると、なぜかひどい頭痛がしてきた。
(なん……だ、これ……)
そして俺の意識は暗転した。
「……ぐっ……なんだったんだ、さっきの」
俺は痛む頭を抑えながら体を起こす。にしてもさっきの頭痛はなんだったんだろうか。そう思いながら俺は何ともなく自分の腕時計を確認する。すると……
「……もう四時なのか?」
そこには『4:11』、四時十一分と表示されていた。
さっき、意識が一瞬だけ途絶えたとしか感じなかったが、それは俺の体感した感覚だった。つまり、実際は俺は四時間ほど意識を失ってしまったのだろう。
(まあ、暇つぶしが出来たってことで、結果オーライだな)
そんなことを考えているとぎぃ、と屋上の扉が開く。そこには……
「ほら、帰るぞ、空」
総司、明美、海華の三人がいた。
「はい、空君」
「ああ。ありがとう」
明美に俺のかばんを持ってきた礼を言うと、彼女は「どういたしまして」と笑顔で言った。
「やっぱ、可愛いな」
「ふぇっ!」
あ、口に出しちゃった。
「そそそそんな!かかか可愛いだなんて!!」
そういった明美は頬を赤くし俯いてしまった。
「ねえねえ空、僕は?」
すると海華がなぜかそう聞いてくる。
「あ、ああ。可愛いと思うぞ」
「……そっか、可愛い、かぁ。えへへ」
素直にそういうと海華は手を後ろで組みながら照れるように体を揺らす。まあ、そんなことをすると彼女の体の一部分が結構なことに……ゲフンゲフン。こんな考えはよそう。
そんな二人を見ていると、今朝のあれはもう気にしていないようだ。そう考えていたとき、
「あ、そうだ。はい空、これ」
「ん、これは?」
俺は海華に白色のスマホを渡された。
「ほら、今朝の。昼休みに届いたんだけど空がサボっちゃってたから渡せなくて」
ああ、そういうことか。
「すまないな」
「ううん、これぐらいどうってことないって」
「話は終わったみたいだな。じゃあ帰るぞ」
「ああ、悪いな」
待たせてしまった総司に謝る。
「いや、別に謝られるほどのことではないけどな」
「まあ、素直に受け取っておけって」
「そうですかい、じゃあジュース一本おごってくれよ」
「ああ、別に良いぜそれくらい」
そして俺達は屋上から出て帰路に着く……
はずだった
「ん?」
ふと、違和感を感じ俺は立ち止まる。
「どうしたの、空」
立ち止まった俺に海華がそう聞く。見ると、屋上の扉の近くにいた二人もこちらに近づいてきた。
だが、俺はそんなことには気づかなかった。
(なんだ、これは)
空気の流れ、この世界の空気の中に存在しない魔力を察知したのだ。
――その瞬間。
「うわっ!」
「なに、これ」
「……魔方陣?」
総司、明美、海華と順番に声を発した。なぜならその三人をちょうど囲むように青白く光る魔法陣が出現したからだ。
そして、俺は思い出す……記憶の一片を……
俺はそれが何かをすぐに察知する。そして俺は……
「くっ!」
その魔法陣の中に飛び込む。
その瞬間、魔方陣がまばゆく発光した。
「間に合えぇ!!」
その時、光の中から手が俺に差し伸べられる。そいつの顔は見えない。だが、大体想像はつく。少なくともあの三人ではないことはわかる。
俺はその手をつかみ、そして……
魔方陣はさらに発光し、俺の視界を奪った。
それと同時に俺を落下するような感覚が襲った……
そして、俺達は飛ばされた
俺が落下するような感覚を感じているとき
『おかえり、ソラ』
そんな声が、聞こえた気がした……
次からがやっとの異世界の話になります。




