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編入生

 「いや~集まる集まる」

 教室から出てすぐの廊下、そこで避難者の俺はそう呟く。何が集まるかだって?それはね、野次馬だよ。いやほんとに集まるのよこれが。なにが原因か?それは今日の編入生、藍野 海華さんが原因ですよええ。すごい美少女だってことで隣のクラスどころか学年中が集まっていますよ。その構成分のほとんどが彼女いない男子、興味本位の女子であります。そしてそいつらは藍野に質問をし始めました。それによって教室内にどんどん人が入ってきますよええ。

 んで、そうなることを見越した俺……いや、俺達は廊下へ避難した。人数が人数なだけに廊下にあふれ出てるんだけど人の集まる中心の横で騒ぎの被害を受けるのは俺は嫌だ。でも廊下なら多少マシ。なので、同じくあまり騒ぎの被害を受けたくない総司と明美を連れて廊下に避難したと言うわけだ。

「にしてもほんとに人集まるなぁ」

 俺の横で避難者二号こと総司がそう言った。

「いやお前らだって入学式の日こんな感じになってたじゃないか」

「えっ、そうだったの?」

 避難者三号の明美がそう驚く。

「ああ、こんな感じだったぞ」

 俺ではなく総司がそう答える。

「何よ、知ってるんだったら教えてくれても良いのに」

「いや、教えたところで何もないだろ」

 そんな二人の会話をぼんやりと聞きながら俺は騒ぎの中心こと藍野を見る。そこで彼女は質問攻めにあって……いるわけではなく、

「はいはい、質問は一人一回、このクラスの人たちに迷惑にならないようにならんで。急がなくても僕はどこにも行かないから」

そこで彼女は指示をとっていた。(ちなみに、この言葉を聞いた奴らは目ざとく藍野の一人称が「僕」と言うのを聞き「僕っ娘ヒャッホウ!」的なことを言っていた。大丈夫か、頭)

 見てて思った、あの子すごいね。現にクラスの中はきちんと統率が取れたようにならんでいて、質問し終わった奴は上機嫌で自分の席、または自分のクラスへと戻っていく。

 俺はその様子を見ながら、

(あの子、人の上に立てるな)

 そんなくだらないことを考えていた。


 時は早くも昼休み。さすがにこの頃になるとだいぶ収まった。いやでも、同学年だけでなく二、三年生までもが来たときはさすがにびびったね、うん。

「いやでも、そこまで長く続かなくてよかったよ」

 これは俺の心からの言葉だ。もしまだ続いてたら教室でなく屋上とかで弁当を食べる羽目になっていただろう。いや別に、屋上で食べるのが嫌なわけじゃないよ。ただ……移動が面倒なだけだ。

「そうだね。それじゃ、お昼ご飯食べよ」

 明美がそういった、そのとき、

「青野君」

 隣から、俺を呼ぶ声がした。その言葉を発したのはもちろん俺のお隣さんの藍野だろう。

「なんだ、藍野」

 そして彼女はこう聞いてきたた。

「……お昼ご飯、一緒に食べてもいい、かな」

 そう聞かれたので俺は二人に無言で藍野と一緒に食べてもいいかを聞いた。

「俺は構わないぞ」

「私も」

「……だ、そうだ」

 そういうと藍野は微笑んだ。


 


「じゃあ、海華ちゃんが迷ってるときに空君が助けてくれたんだね」

「なるほどねぇ。だから海華は空と話してたのか」

「うん、そうだよ」

 藍野が加わった四人で今、昼食中である。今の話題は俺と藍野がどう出会ったのかだ。今朝、藍野と俺が知り合いみたいな会話をしたからなあ。(まあ、知り合いっちゃ知り合いなんだろう)総司と明美()気になってたんだろうな。「も」って言うのは実はこの会話、クラス中が聞いてます。いやすごいよ殺気が。そのせいかとても疲れた。なので、気分転換しようと思い俺は席を立ち、教室を出ようとする。

「空、どこ行くんだ」

 総司が俺に声をかける。その声で話をしていた明美と藍野がこちらを向いた。

「……少し、気分転換」

 そう言って俺は教室を出た。

 向かうのは屋上だ。





「……はっ!!」

 俺はとある場所で目が覚めた。ここはどこかと思い、あたりを見渡す、が……何のことはない。ここは学校の屋上だった。だが、そこでふととあることが気になった。

(……いま、時間は?)

 俺は自分の腕時計を見る。そこには……『4:13』と表示されていた。つまり……

 俺、すごい寝過ごした。(しかもまた新記録更新)いや、寝過ごすのは確かにいつものことだ。でも今回は状況が違う。いつも俺が寝過ごしているのが教室、今いる所は屋上。これが示すことはただ一つ。

(こりゃ、先生に怒られるなぁ)

 いやほんとめんどくさい。(自分でまねいたことなのに何言ってるんだ俺は)

 そこでふと、俺は横を見た。そしてそこには長い白髪をもった少女が寝ていた。……ていうか、

「何やってるんだ、藍野」

 うん、俺が言えたことじゃないが編入早々これはまずくないか?

「おい、起きろ」

 そう思って俺は藍野を揺する。その時に彼女の身長とはアンバランスな大きな胸が揺れる……が、そこは気にしない。意図的に気にしない。

「ん……あれ、ここは……」

 そういって藍野は起きた。

「ここは学校の屋上、で今は四時頃だぞ」

 状況をよく分かっていない彼女に今の状況を教える。

「えっと、ここは学校で今は・・・四時っ!!」

 そういって飛び起きる藍野。その時にスカートの中が見えたのはご愛嬌。ふむ、白か。

「まずいよ、早く教室に戻らないと!」

 そういった後俺に「ほら、行こう!」と声をかける藍野。別にこの時間じゃ間に合わないこと確定なんだが……まあ、付き合ってやっても良いかな。 そして、俺は先に走り出した彼女の背中を追った。


 結局、俺と藍野は先生に怒られた。まあ、当たり前だな。あ、でも、藍野はクラスの奴らがかばってたし、まだ一日目ということで「気をつけろよ」程度で収まった。まあ、俺はいつもの分までこっぴどく叱られたが。(ちなみに、藍野が屋上で寝ていた理由は「青野君を探していて見つけたんだけど、気持ちよさそうに寝てる青野君を見てたら僕も眠くなっちゃって」らしい)

 そんな帰り道、これも藍野が

「一緒に帰ってもいい?」

 と聞いてきた。こちらの答えはイエスだ。


「海華ちゃんの家ってそっち側なの?」

 いつも俺と総司たちが別れる道、そこで明美がそう聞いた。

「うん、僕の家駅のほうだから」

 まあ、嘘だろうな。じゃなきゃこの間言っていたことと辻褄が合わない。

「そっか、それじゃあね」「じゃあな、また明日」

「おう、じゃあな二人とも」「じゃあね、明美ちゃん、総司くん」

 て言うか今思ったけれど俺以外全員名前で呼び合ってるな。まったく、順応性の高い奴らだ。

「それじゃ、帰ろっか、青野君」

「ああ、そうだな」

 やっぱり、俺だけ名前で呼ばれてない。





「ねえ、青野君」

 朝と同じく俺を呼ぶと目に愁いを帯びる藍野が俺を呼んだ。

「何だ?」

「……君は僕のこと、どう思う?」

 二人だけになった帰り道、そこで藍野がこう聞いてきた。

「どうって?」

「何でもいいよ。僕を見てどう思う?」

「うーん……率直に言って美少女、だな」

「び、美少女、かぁ」

 はにかみながらそう呟く藍野。なんか、明美みたいだな。こいつも自分が美少女だって思ってないってことか?

「で、それがどうしたんだ」

 そう聞くと「ううん、何でもない!」と言った藍野。そして彼女はこう続けた。

「あの、話は変わるけど……僕達、一昨日じゃなくてもっと前に、どこかで会わなかった?」

 そういわれた俺は彼女の疑問に答えるべく精一杯脳を働かせてつい最近から昔までの記憶を掘り起こそうとした、その結果、

「悪い、俺にお前みたいな奴とあったような記憶はないな」

「……そ、っか」

 とまあ、そんなことを話している間に俺の家についた。

「それじゃあ、俺はここで」

「うん、それじゃあね」

 そういって手を振る藍野に俺も軽くてを振った。そして俺が家に入ろうとしたとき、

「じゃあね……空」

 そういって藍野は駅の方に走っていった。



(今、あいつ、俺のこと名前で、呼び捨てで呼んだ?)

 それとその時、一瞬何かの記憶が浮かんできたような感覚がしたが・・・



 結局、その感覚が何だったのか、俺にはわからなかった。




 

「やっぱり、憶えてなかったなぁ……明日はちゃんと言わないと、ね……空」

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