第52話 宙賊の宝物庫
カストル採掘拠点を襲撃した宙賊艦隊を撃退した翌朝、ユウたちは臨時作戦室に集まっていた。
中央の大型モニターには、ライラが夜間に収集した観測データが表示されている。小惑星帯の奥、採掘が終了したとされる古い鉱区に、複数の人工的な熱源が確認されていた。
「……これ、完全に当たりじゃない?」
ユウが星図を拡大すると、セラが頷いた。
「その可能性は高い。敵の大型艦がこの付近で姿を消しているし、複数の船舶反応もある」
『対象地点は旧採掘施設《ベルガ第六鉱区》と推定されます。現在、正式な稼働登録はありません』
「中はどうなってる?」
『小惑星内部に大型空洞が存在します。外部搬入口が二か所あり、いずれも船舶の出入りに使用されている形跡があります』
ジェイドが身を乗り出した。
「なるほど。小惑星をくり抜いた基地か。外から見えないのも納得だ」
「結構大きいの?」
『小惑星の長径は約六・八キロメートル。内部施設の正確な規模は不明です』
ユウは少し考えた。
「……そんな場所を持ってる宙賊って、相当儲けてるんじゃない?」
セラが呆れた顔をした。
「最初に気になるのがそこか?」
「いや、だって基地を維持するだけでも大変なのは身に染みてるし。あいつらはどうしてるんだろうって」
「その疑問は悪くないな」
ジェイドが星図を操作した。
「七〜九隻の武装艦を運用するなら、燃料、弾薬、修理部品、食料が必要だ。拠点に相応の備蓄があってもおかしくない」
ユウの目が輝いた。
「……つまり?」
「押収できる物資があるかもしれない」
「おお!」
セラが釘を刺した。
「全部がお前たちの物になるわけじゃないぞ。盗品なら被害者へ返還する必要があるし、証拠品の扱いもある」
「分かってるって!」
『艦長の期待値が急上昇しています』
「アイリス、余計なこと言わなくていいから」
*
作戦は、まず敵の残存戦力を確認するところから始まった。
ライラを基地の外縁へ接近させ、複数方向から観測を行う。アストライアとアーデントは十分な距離を取り、得られた情報をもとに作戦を検討した。
観測開始から一時間後、敵拠点の構造が徐々に明らかになってきた。
『外部防衛砲塔四基。うち二基は稼働中。小型迎撃艇三隻を確認。内部格納庫には中型艦二隻、大型艦一隻の反応があります』
「……結構残ってるね」
ユウが呟くと、ジェイドが頷いた。
「昨日の戦闘で損傷した艦も戻ってるはずだ。修理中のものを含めれば、もっといるだろうな」
セラが敵基地の入口を指さした。
「問題はここだ。大型艦が出入りできる搬入口は一つしかない。敵がそこを塞げば、内部へ入るのは難しい」
「逆に、塞がれる前に押さえればいい?」
「そうだ。ただし正面には防衛砲塔がある」
ユウは少し考えた。
「じゃあ、最初に砲塔を止めよう。アーデントが遠距離から砲塔を狙って、アストライアは小型艇を迎撃する」
ジェイドが首を傾げた。
「悪くない。ただ、砲塔を破壊すると施設にも被害が出る。あとで使える設備が減るかもしれないぞ」
「……それはもったいない」
セラが笑った。
「なら、電力供給か制御設備を狙えばいい。防衛設備そのものを残せる可能性がある」
「なるほど。じゃあ、そっちで!」
ユウたちは作戦を決定した。
敵基地の防衛設備を無力化し、艦艇の出入りを封じる。その後、宙賊へ降伏を勧告する。抵抗が続けば、艦内からの制圧も検討する。
ただし、基地内部には民間人が拘束されている可能性もあるため、無差別な攻撃は避ける方針だった。
*
アストライアとアーデントが旧鉱区へ接近したのは、その日の昼過ぎだった。
小惑星の表面に設置された大型搬入口は、厚い金属扉で覆われている。周囲には採掘用の古い構造物が残り、その一部が防衛設備へ改造されていた。
『敵防衛砲塔、こちらを捕捉』
「ジェイド、準備は?」
『アーデント、射撃準備完了。最初の一撃で制御設備を狙う』
「了解!」
アーデントの艦首連装砲が発射された。
光弾は砲塔の近くに設置された制御装置へ命中し、周囲に火花が散った。
『敵防衛砲塔一基、機能停止』
「よし!」
しかし、残る砲塔がすぐに反撃を開始した。
『敵砲撃接近』
アーデントが姿勢を変えて回避する。その間に、アストライアが側面から加速した。
「アイリス、二基目の制御装置!」
『捕捉しました』
短い連射が制御装置を撃ち抜き、二基目の砲塔も沈黙した。
『外部防衛砲塔、稼働二基とも停止』
「よし、これで!」
ユウが声を上げた瞬間、基地の搬入口が開き始めた。
「……あれ?」
『敵小型艇三隻、発進』
セラがすぐに言った。
「迎撃しろ。搬入口へ近づけるな!」
アストライアが旋回し、出撃してきた小型艇へ向かった。
*
敵小型艇は三隻とも高速型だったが、昨日の戦闘で消耗していたらしく、武装は小口径レーザーと短距離ミサイルに限られていた。
「左の一隻、逃げようとしてる!」
ユウが叫ぶと、セラが星図を確認した。
「通信を外へ送るつもりかもしれん。先に止めろ」
「了解!」
アストライアが加速し、逃走する小型艇の後方へ回り込んだ。
『射撃解算出』
「撃て!」
連続射撃でシールドを削り、主推進器を破壊する。敵艇はそのまま慣性航行へ移り、姿勢制御だけで漂い始めた。
『敵小型艇一、航行不能』
残る二隻はアーデントへ向かったが、厚いシールドを突破することはできなかった。
『こちらアーデント。小型艇二隻を捕捉した。主砲ではなく副兵装で対応する』
ジェイドの声とともに、アーデントの近接防御砲が作動した。
二隻のうち一隻は推進器を破壊され、もう一隻は武装を失って降伏信号を送ってきた。
『敵小型艇三隻、全て無力化』
「よし!」
ユウは小さく息を吐いた。
「ここまでは順調だね」
セラが頷いた。
「だが、まだ内部に艦がいる。ここからが本番だ」
*
敵基地への降伏勧告は、最初の三回までは無視された。
四回目でようやく通信が繋がったが、画面に映った男は明らかに怒っていた。
『貴様ら、どこの傭兵だ!』
「傭兵協会所属、アストライアのユウです。カストル採掘拠点への襲撃について、調査と制圧に来ました」
『ふざけるな! ここは俺たちの領域だ!』
「……いや、元々は採掘会社の施設でしょ?」
『黙れ!』
男は机を叩いた。
『これ以上近づけば、基地ごと吹き飛ばすぞ!』
ユウの表情が少し引き締まった。
「……中に民間人はいる?」
『そんなこと知るか!』
通信が切れた。
「……嫌な感じだな」
ジェイドから通信が入る。
『こちらでも内部の通信を傍受した。どうやら、基地には拘束された民間人がいるらしい』
「やっぱりか」
セラが腕を組んだ。
「爆破をちらつかせている以上、正面から突入するのは危険だ」
「どうする?」
ユウが尋ねると、ジェイドが一つの案を示した。
『古い採掘施設なら、作業員用の非常通路があるはずだ。そこから内部へ入れないか?』
ユウはアイリスを見た。
「調べられる?」
『ライラの観測情報から、外部へ繋がる小型通路を二か所確認しています』
「よし。じゃあ、そこから行こう」
*
潜入部隊は、セラを指揮官として編成された。
ジェイドはアーデントの指揮を継続し、ユウはセラとともに突入班へ参加する。アストライアの指揮はアイリスが補助し、周辺警戒を継続することになった。
「ユウ、本当に来るのか?」
セラが装備を確認しながら尋ねた。
「うん。俺の船だし、俺の仕事だからね」
「その理屈は少し違う気もするが……」
セラは小さく笑った。
「まあいい。勝手に前へ出るなよ」
「了解!」
潜入班はアーデントから派遣された警備要員四名を加え、計六名で構成された。
小型連絡艇を利用して非常通路付近へ接近し、岩盤の陰から基地内部へ進入する。
通路は狭く、長年使われていなかったらしく、床には埃が積もっていた。
「……こういうところ、苦手だな」
ユウが呟くと、セラが振り返った。
「何が?」
「狭いし暗いし。敵が待ってたら嫌じゃん」
「だから慎重に進んでるんだろう」
「ですよね」
警備要員が先行して周辺を確認し、セラがその後に続く。ユウは補助外骨格を着用し、最後尾近くで通信とセンサー情報を確認していた。
*
内部へ進入してから二十分後、潜入班は旧管理区画へ到着した。
そこには複数の端末が設置されており、基地全体の電力供給と防衛設備を管理しているらしかった。
「ここを押さえれば、爆破装置を止められる?」
ユウが尋ねると、アイリスが通信越しに答えた。
『現在の制御系統を解析しています。遠隔起爆装置の一部を検出しました』
「一部?」
『複数の系統が存在する可能性があります。全てを停止させるには、現地端末への接続が必要です』
セラが頷いた。
「まずは管理室を確保する」
警備要員二名が扉の左右へ配置され、残る二名が後方を警戒する。
セラの合図で扉が開かれた。
内部にいた宙賊三名は突然の侵入に驚き、武器を構えようとしたが、セラと警備要員に素早く制圧された。
「動くな! 武器を捨てろ!」
銃を落とした男たちは床へ伏せ、拘束された。
ユウは管理端末へ近づいた。
「アイリス、繋げる?」
『接続可能です』
数秒後、基地全体の制御情報が表示された。
『爆破装置の設置位置を確認。現在、起爆信号の送信経路を遮断しています』
「よし!」
しかし、その直後、警告が表示された。
『注意。独立した手動起爆装置が存在します』
「……まだあるの?」
セラが端末を確認した。
「位置は?」
『中央格納庫の指揮室です』
「なら、そこを押さえるしかないな」
*
中央格納庫では、宙賊の指揮官が部下たちに怒鳴っていた。
『何をしている! 防衛砲塔も警備艇も全部やられただと!?』
通信画面には、基地外部で待機するアストライアとアーデントが映っている。
『あの二隻さえいなければ……!』
男は机を叩き、手動起爆装置へ手を伸ばした。
だが、その瞬間、背後の扉が開いた。
「そこまでだ!」
セラの声が響いた。
男が振り返るより早く、警備要員が武器を向ける。
『なっ……!』
「手を離せ。もう逃げ場はない」
男は一瞬迷ったあと、起爆装置へ手を伸ばそうとした。
乾いた銃声が響いた。
セラの射撃が男の手元を狙い、起爆装置が床へ落ちる。
『ぐあっ!』
男が腕を押さえて倒れ込んだ。
「動くな!」
警備要員が駆け寄り、男を拘束する。
ユウはすぐに起爆装置を確認した。
「アイリス、これも止められる?」
『起爆回路を確認。安全化処理を開始します』
数秒後、表示が切り替わった。
《起爆装置:無効化完了》
「……よし!」
ユウは大きく息を吐いた。
「危なかった……」
セラが頷いた。
「これで基地全体への爆破は防げるはずだ。だが、まだ敵は残っている。気を抜くな」
「了解!」
*
指揮官が拘束されたことで、残る宙賊たちの抵抗は急速に弱まった。
格納庫にいた部下たちは降伏し、修理中だった大型艦と中型艦も抵抗を停止。基地内部に拘束されていた民間人二十三名が救出された。
救助された人々の中には、以前襲撃された輸送船の乗員や、採掘会社の技術者も含まれていた。
エリナは医療班とともに基地へ入り、負傷者の診察を開始した。
「軽傷者が多いですが、栄養状態が悪い人もいます。数名はカストルの医療区画へ搬送した方がいいですね」
ユウは頷いた。
「お願い。必要な物資があれば言って」
「分かりました」
エリナは少し微笑んだ。
「それにしても、また救助ですね」
「なんか、いつも人助けしてる気がする」
「いいことだと思いますよ」
ユウも笑った。
「だよね」
*
宙賊の拘束と民間人救助が完了したあと、ユウたちは基地の内部調査を開始した。
そこで待っていたのは、予想以上の光景だった。
「……何これ」
ユウは巨大な倉庫を見上げた。
そこには、天井近くまで積み上げられた貨物コンテナが並んでいた。標準規格の大型コンテナだけでも百個以上あり、そのほかにも小型の物資箱や装備品が大量に保管されている。
「……すごい量だな」
ジェイドが呟いた。
セラが端末を確認する。
「どうやら、ここ数か月で襲撃した輸送船から奪った物資らしい。燃料、食料、精密部品、医療物資、鉱石……かなり幅広いな」
ユウは少し考えた。
「……これ、全部盗品?」
「大半はそうだろう。ただし、正式な所有者が確認できない物資もあるはずだ」
ジェイドが補足した。
「協会の押収手続きと被害者への返還が終われば、残った物資は依頼契約と現地法に従って処分される。制圧に参加した傭兵へ分配される場合もある」
ユウの目が輝いた。
「……つまり?」
「結構な金になるかもしれない」
「おお!」
しかし、驚きはそれだけではなかった。
倉庫の奥にある別の区画には、さらに大きなものが保管されていた。
「……船?」
ユウが呟いた。
そこには、全長百六十メートルほどの中型輸送艦が一隻、整備台に固定されていた。
外装は傷だらけだったが、船体の損傷はそれほど大きくない。推進器も残っており、修理すれば再び航行できそうな状態だった。
「これ、襲った船をそのまま持ってきたのかな?」
ダリオが通信越しに答えた。
『可能性は高いな。船体識別情報を確認すれば、元の所有者が分かるはずだ』
「なるほど」
さらに別の区画には、武装艦の修理用部品や小型艇の予備機関、砲塔用の交換部品まで保管されていた。
セラが倉庫全体を見渡した。
「……これだけの備蓄があれば、九隻規模の宙賊団を維持できるのも納得だな」
「すごいね……」
ユウはしばらく黙っていた。
そして、ぽつりと呟いた。
「……うちの基地にも欲しい」
「気持ちは分かるが、全部持っていくなよ」
ジェイドが笑った。
「分かってるって!」
*
調査開始から三時間後、ユウたちはさらに重要なものを発見した。
指揮官室の奥に設置された金庫だった。
警備要員が押収手続きの立ち会いを行い、内部を確認すると、現金化可能な信用チップと複数の電子決済端末が保管されていた。
「……これ、お金?」
ユウが尋ねると、ハンナが通信越しに答えた。
『信用チップですね。金融機関を通さずに取引できるタイプのものです。ただし、盗難品や不正資金の可能性がありますので、すぐには使用できません』
「いくらくらい?」
『認証前の額面合計は、約三百八十万Crです』
「…………」
ユウは固まった。
「……三百八十万?」
『はい。ただし全額が有効とは限りません』
「……三百八十万!?」
セラが呆れたように笑った。
「二回言わなくていい」
「だって、アーデントより高いじゃん!」
ジェイドも驚いていた。
「これだけの資金を溜め込んでいたとはな。相当長い間、襲撃を続けていたんだろう」
ユウは金庫を見つめた。
「……これも分配される可能性あるの?」
「あるが、全額ではないだろうな」
セラが答える。
「被害者への返還、未払いの賠償、法的な押収手続きが優先される」
「ですよね」
それでも、相当な金額だった。
*
カストルへの帰還後、ユウたちは傭兵協会の担当者を迎え、任務報告と押収物の確認を行った。
協会の調査員は、基地の規模と備蓄物資の量を見て驚いた様子だった。
「……これは、かなり大規模な宙賊団ですね」
ユウが頷く。
「九隻も運用してましたからね」
「通常のD級任務では、まず見られない規模です。C級以上の任務では、こうした組織的な宙賊勢力を相手にすることがあります」
調査員は資料を確認した。
「押収した艦艇と物資の査定には時間がかかりますが、今回の功績を考えれば、相応の報奨金が発生するでしょう」
「おお!」
ジェイドが笑った。
「艦長、期待しすぎるなよ」
「分かってる。でも、楽しみじゃん」
セラも少し笑った。
「まあ、今回はそれだけの成果を上げたからな」
*
五日間の任務を終えたユウたちは、ノード・セブンへ帰還した。
傭兵協会での精算手続きでは、当初の想定を上回る評価が付けられていた。
《C級任務:カストル採掘拠点防衛・航路確保》
《基本報酬:900,000Cr》
《拠点防衛達成加算:250,000Cr》
《航路安全確保加算:200,000Cr》
《敵性戦力無力化加算:350,000Cr》
《任務報酬合計:1,700,000Cr》
「……満額!」
ユウは思わず笑顔になった。
ダグラスが頷いた。
「お前たちは任務を完全に達成した。しかも、宙賊の拠点まで制圧している。依頼主も非常に満足しているようだ」
「ありがとうございます!」
「さらに、民間人二十三名の救助と、宙賊の指揮官拘束について、別途の報奨金が認定された」
《特別報奨金:420,000Cr》
「……四十二万!?」
「そうだ。合計で二百十二万Crだな」
ユウはしばらく黙っていた。
「……すごい」
セラが笑った。
「C級の仕事は、やはり規模が違うな」
ジェイドも頷いた。
「二隻で受けた価値はあったな」
ダグラスが続ける。
「それと、押収物の査定はまだ終わっていない。返還対象と証拠品を除いたものについては、後日分配がある」
「まだあるの!?」
「ああ。今回の宙賊団はかなりの資産を持っていたからな。追加分配もそれなりの額になるだろう」
ユウは思わず天井を見上げた。
「……C級、すごいなあ」
*
HM-417へ帰還した翌日、ユウはハンナへ任務報酬の報告を行った。
「二百十二万!」
ユウが胸を張ると、ハンナは端末を確認した。
「確認しています。お疲れさまでした」
「これでアーデントの返済も楽になるね!」
「はい。ただし、今回の戦闘による修理費と消耗品費用、乗員への危険手当を計上する必要があります」
「……ですよね」
ハンナは少し笑った。
「ですが、今回は十分な利益が残ります。基地運営費を確保したうえで、艦隊の整備資金にも回せる見込みです」
「おお!」
ユウは嬉しそうに頷いた。
「じゃあ、次はもっと大きい仕事を受けられるかな?」
セラが首を横に振った。
「まずは今回の反省だ。アーデントの前部シールドに弱点が見つかったし、二隻の連携もまだ改善できる」
「そうだね」
ジェイドも頷いた。
「次はもっと上手くやれるはずだ」
リアが笑顔で手を挙げた。
「修理なら任せて! アーデントもアストライアも、ちゃんと直すよ!」
ダリオが肩をすくめた。
「その前に、今回持ち帰る予定の押収物をどうするかだな。大量に来たら、倉庫の整理が必要になるぞ」
ユウは目を輝かせた。
「……もしかして、結構な量をもらえる?」
「まだ査定中だ」
セラが言った。
「分かってるけど、楽しみなんだよ!」
*
その夜、HM-417のドックでは、二隻の戦闘艦が並んで整備を受けていた。
アストライアとアーデント。
初めてのC級任務は、簡単なものではなかった。敵の数も多く、拠点防衛から敵基地の制圧まで、さまざまな対応が求められた。
だが、その分だけ報酬も大きかった。
ユウはドックの観覧通路から二隻を眺めていた。
「……二隻でも、結構やれるんだな」
『今回の任務では、アーデントの火力とアストライアの機動力が有効に機能しました』
アイリスが答える。
「うん。ジェイドたちがいてくれて助かった」
『艦隊戦術の改善余地はありますが、初回任務としては良好な成果です』
ユウは少し笑った。
「これなら、もっと船を増やしてもいいよね」
『艦隊規模の拡大は可能ですが、相応の資金と人員が必要です』
「分かってるって!」
そして、少し考えてから付け加えた。
「……でも、こういう仕事を続けていけば、いつか大きい戦艦も買えるかもしれないな」
『大型戦艦の取得には、今回の報酬を大幅に上回る資金が必要です』
「夢がないなあ」
『現実的な資金計画を推奨します』
ユウは笑った。
「大丈夫。少しずつやっていくよ」
その頃、ガルムはYD-09の古代データ解析を続けていた。
大型戦闘支援艦エレボス。
その名が記された記録は、まだ完全には復旧していない。
だが、かつて第七航路艦隊が保有していた大型艦の情報は、少しずつ明らかになりつつあった。
ユウがその存在を知る日は、まだ少し先のことになるだろう。




