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第51話 初めてのC級任務

 アーデントの購入から十二日後、HM-417の大型ドックでは、二隻の戦闘艦が並んで最終点検を受けていた。


 全長約九十五メートルのアストライアと、百九十一メートルの護衛フリゲート、アーデント。並べて見ると、その大きさの違いは歴然としている。アストライアが細身の高速艇に見えてしまうほど、アーデントの船体には存在感があった。


「……やっぱでかいなあ」


 ユウはドックの観覧通路から二隻を眺めていた。


『艦長、その感想は購入後だけで十一回目です』

「気に入ってるんだからいいじゃん」

『否定はしていません』

「そういうアイリスも、ちょっと嬉しそうじゃない?」

『私の音声出力に、そのような変化はありません』

「いや、絶対あるって」


 隣ではリアとダリオが整備完了報告書を確認していた。


「アーデントの主推進器、出力試験は問題なし! 艦首兵装も修理完了!」

「ただし、古い配線は一部残っている。今回の任務では機関出力の上限を抑えて運用するぞ」

「了解。ジェイドにも伝えておくよ」


 アーデントには新たに十八名の乗員が採用され、ジェイドとハンナを含む二十名体制が整っていた。元警備会社の船員、傭兵協会に登録していた機関員、通信士、兵装担当など、経歴はさまざまだが、セラとジェイドが面談を行って選んだ人材だった。


 まだ全員が十分に連携できるわけではない。それでも、十日間の整備作業と訓練航行を経て、基本的な艦隊行動が可能になっていた。


「さて、そろそろ行こうか」


 ユウが言うと、セラが頷いた。


「初めての二隻での実戦任務だ。気を抜くなよ」

「もちろん!」


     *


 ノード・セブンの傭兵協会で、ダグラスはユウたちを待っていた。


「来たか。新しい艦は順調か?」


「ばっちりです!」


「それは何よりだ。なら、そろそろC級らしい仕事を紹介してもいいだろう」


 ダグラスが端末を操作すると、これまでより詳細な依頼書が表示された。


《C級傭兵団推奨任務:外縁採掘拠点カストルの防衛・航路確保》

《任務内容:宙賊勢力の排除、民間施設防衛、輸送航路の安全確保》

《確認敵戦力:武装艦七〜九隻》

《任務期間:最大五日間》

《基本報酬:900,000Cr》

《拠点防衛達成加算:250,000Cr》

《航路安全確保加算:200,000Cr》

《敵性戦力無力化加算:上限350,000Cr》

《最大報酬:1,700,000Cr》


「……百七十万!?」


 ユウは思わず声を上げた。


「すごい! 前の任務の何倍だよ!」


「その分、危険も大きいぞ」


 ダグラスは表情を引き締めた。


「カストルは小惑星帯にある採掘拠点で、作業員が百四十名ほど暮らしている。最近、周辺で宙賊による襲撃が相次いでいてな。輸送船だけじゃなく、拠点そのものも攻撃されている」


「七〜九隻って、結構な数ですね」

 ジェイドが言った。


「しかも、あくまで確認できている数だ。さらに増える可能性もある」


 セラが依頼書を確認する。


「拠点の防衛設備は?」


「小型砲塔が四基。ただし二基は損傷している。警備艇も一隻あるが、戦闘能力は高くない」


「つまり、実質的にはこちらが主力か」


 ユウは少し考えた。


「グレイホークとか、ほかの傭兵団と共同で受けることはできないんですか?」


「可能だが、今回は依頼主が即応できる戦力を探している。現時点で参加可能なC級傭兵団は限られているんだ」


「なるほど……」


 セラがユウを見る。


「どうする?」


 ユウは依頼書をもう一度確認した。


 七〜九隻の宙賊。防衛対象は百四十人が暮らす採掘拠点。しかも、任務期間は最大五日間。


 これまでのように敵艦を無力化して終わり、というわけにはいかなそうだった。


「……受けよう」


 セラが頷いた。


「理由は?」


「放っておいたら拠点が襲われるかもしれないし、うちにはアーデントもある。それに、C級の仕事を受けないと経験も積めないからね」


「報酬は?」

 ジェイドが笑いながら尋ねた。


「もちろん欲しい!」


 ダグラスが声を上げて笑った。


「よし。では正式に受注手続きを進めよう」


     *


 出発から十時間後、アストライアとアーデントはカストル採掘拠点へ到着した。


 巨大な小惑星の表面に建設された施設には、複数の採掘用アームと精錬設備が設置されている。居住区は岩盤内部に埋め込まれており、外部には資材搬送用のドックが突き出していた。


「思ったより大きいね」


 ユウが言うと、アイリスが施設情報を表示した。


『採掘拠点カストル。登録作業員百四十二名。現在の稼働率は約六割。外部防衛設備四基のうち、稼働可能なのは二基です』


 拠点から通信が入った。


『こちらカストル管理責任者、ロイド・マクレーンです。傭兵協会からの派遣部隊ですね?』


「はい。アストライア艦長のユウです。こちらはアーデント。二隻で防衛任務を担当します」


『二隻……ですか』


 ロイドの声には、わずかな不安が混じっていた。


「少ないですか?」


『正直に言えば、もう少し多いと思っていました。敵は少なくとも七隻いるんです』


 セラが通信に加わった。


「敵艦の詳細情報をいただけますか。数だけでは戦力を判断できません」


『分かりました。すぐに送ります』


 送られてきた資料には、これまでの襲撃記録がまとめられていた。


 敵の主力は百七十メートル級の武装輸送艦一隻と、百三十メートル級の警備艦二隻。残りは小型武装艇らしい。大規模な正面戦闘よりも、採掘船や補給船を狙う襲撃を繰り返している。


「……なるほど」


 セラが資料を確認した。


「相手は単なる寄せ集めじゃないな。小型艇で補給路を妨害し、主力艦で拠点を脅迫している」


 ジェイドから通信が入った。


『こちらアーデント。艦隊配置について提案がある』


「聞かせて」


『アーデントを拠点の正面へ配置して、主力艦の接近を抑える。アストライアは機動力を活かして小型艇を迎撃した方がいい』


「うん。俺もそう思う」


 セラが頷いた。


「ただし敵が分散してきたら、アーデント一隻では防ぎきれない。拠点の砲塔も修復しておきたいな」


「リア、現地の整備員と連携できる?」


「もちろん!」


 こうして、カストル防衛作戦が始まった。


     *


 初日は、拠点の防衛準備に費やされた。


 リアと現地整備員が損傷した砲塔を調査し、アーデントから交換部品と工具を搬入。完全復旧は難しかったものの、一基の砲塔を稼働状態へ戻すことに成功した。


「これで三基!」


 リアが笑顔で報告する。


「助かるな」

 セラが頷いた。

「ただし、弾薬が少ない。無駄撃ちはできないぞ」


 一方、エリナは拠点の医療担当者と協力し、負傷者の受け入れ体制を整えていた。


「医療区画のベッドは十二床ありますが、重傷者に対応できる設備は限られています」


 現地の医療責任者が説明する。


「分かりました。アストライア側の医療区画も使用できるよう準備します。必要な医薬品はこちらから一部提供できますので、在庫を確認させてください」


 エリナは落ち着いた様子で、医療物資と搬送経路の確認を進めていた。


 ユウはその報告を聞いて、少し安心した。


「やっぱり医療担当がいると違うね」

「そうだな」

 セラが答える。

「ただし、今回の任務では負傷者を出さないことが一番だ」


     *


 二日目の早朝、敵が動いた。


『艦長、広域観測に反応。敵性船舶五隻を確認』


 アイリスの報告に、ユウはすぐに艦橋へ向かった。


「五隻? 思ったより少ないね」


「先遣隊かもしれん」

 セラが答える。

「油断するな」


 ジェイドから通信が入る。


『アーデント、戦闘準備完了。こちらで主力二隻を引きつける。ユウは小型艇を頼む』


「了解!」


 アストライアが拠点の側面へ移動すると、敵艦五隻が散開した。


 小型艇三隻がアストライアへ向かい、中型艦二隻がアーデントの正面へ進む。


「よし、予定通りだね」


『敵小型艇、加速』


 最初のレーザーがアストライアのシールドをかすめた。


「ジェイド、そっちは大丈夫?」


『問題ない。まずは敵の兵装を潰す』


 アーデントの艦首連装砲が火を噴いた。


 アストライアとは違う、重く連続した砲撃が中型艦のシールドへ叩き込まれる。


「おお……!」


 ユウは思わず声を漏らした。


「アーデント、強いな!」


「感心してる場合か!」

 セラが言う。

「こっちにも三隻来てるぞ!」


「分かってる!」


 ユウはアストライアを加速させた。


     *


 最初の交戦は、十五分ほどで終わった。


 アストライアは小型艇二隻の推進器を破壊し、残る一隻を撤退させた。アーデントは中型艦一隻の兵装を無力化したものの、もう一隻には逃げられている。


 拠点への被害はなかったが、アーデントのシールドには想定以上の負荷がかかっていた。


『こちらアーデント。前部シールド発生器に軽度の異常を確認。戦闘継続は可能だが、出力を抑える必要がある』


 ジェイドの報告に、セラが表情を引き締めた。


「やはり中古艦だな。修理したとはいえ、完全ではない」


「大丈夫かな?」


「今すぐ危険というわけではない。ただし、次の戦闘までに点検が必要だ」


 ユウは頷いた。


「よし。いったん戻って確認しよう」


 しかし、敵はそれを待ってくれなかった。


『艦長、新たな反応を検出しました』


「……何隻?」


『大型艦一隻、中型艦二隻、小型艇四隻。合計七隻です』


 ユウは思わず目を見開いた。


「……え?」


 セラがすぐに星図を拡大した。


「さっきの五隻は偵察兼消耗戦だったのか!」


 ジェイドから緊急通信が入る。


『ユウ、敵の主力だ! しかも二方向から来る!』


 星図には、新たな七隻が拠点を挟むように進路を変えている様子が映っていた。


 先ほどの戦闘で逃走した二隻も、再び敵艦隊へ合流している。


「……これ、合計九隻?」


『現在、戦闘能力を維持している敵艦は九隻です』


 アイリスの声が静かに響いた。


「いや、思ったより多いって!」


 セラが落ち着いた声で言った。


「ユウ、これがC級任務だ。敵はこちらの戦力を見て、戦い方を変えてくる」


 ユウは小さく息を吐いた。


「……なるほどね」


 そして、操縦桿を握り直した。


「じゃあ、こっちも変えよう」


     *


 ユウたちは拠点防衛を優先し、艦隊の配置を変更した。


 アーデントは拠点正面へ移動し、損傷したシールドをかばいながら大型艦を牽制。アストライアはライラから送られてくる観測情報を利用し、小型艇の接近を阻止する役割を担う。


「ジェイド、無理に撃ち合わなくていい! 時間を稼いで!」


『了解。大型艦をこちらに引きつける』


 アーデントの連装砲が再び火を噴く。


 敵大型艦も反撃し、双方のシールドに閃光が走った。


『アーデント前部シールド出力低下』


 ジェイドの声が少し緊張する。


『……思ったより火力があるな』


 ハンナがすぐに報告した。


『前部発生器の温度上昇を確認。連続被弾は危険です』


「了解。艦首を少し振る。ハンナ、出力配分を頼む」


 アーデントが姿勢を変え、敵の砲撃を側面へ流すように移動した。


 一方、アストライアも苦戦していた。


 小型艇四隻が拠点の反対側へ回り込み、採掘施設の外部設備を狙っている。


「アイリス、右の二隻を先に!」


『了解』


 アストライアが加速し、敵艇の進路へ割り込む。


 しかし、敵はすぐに散開した。


「……あれ?」


 ユウが眉を寄せる。


「こいつら、こっちを避けてる?」


「そうだ」

 セラが答える。

「目的はアストライアとの戦闘じゃない。拠点への攻撃だ」


 直後、小型艇の一隻が採掘施設へ向けてミサイルを発射した。


『敵ミサイル二発、拠点へ接近』


「迎撃!」


 アストライアの近接防御砲が作動し、二発のミサイルを撃ち落とした。


「危なっ!」


 セラが星図を見ながら言う。


「ユウ、このままでは全部を止められん。敵の数が多すぎる」


「……だよね」


 ユウは少し考えた。


 こちらの戦力は二隻。敵は九隻。しかも、守らなければならない採掘拠点がある。


 今までのように一隻ずつ追いかけて無力化していては、間に合わない。


「……アイリス」


『はい』


「敵の指揮艦、分かる?」


『大型武装輸送艦が通信中継の中心となっています。指揮艦である可能性が高いと判断します』


「よし」


 ユウはセラを見た。


「敵の指揮を潰そう」


 セラは少しだけ笑った。


「ようやくそこに気づいたか」


「いや、最初から考えてたって!」


「本当か?」


「……今思いついた」


 セラが笑った。


     *


 作戦は単純だった。


 アーデントが正面で敵大型艦を引きつけ、その間にアストライアが側面から接近して通信設備と兵装を破壊する。指揮系統を乱し、敵の連携を崩す狙いだ。


 ただし、敵大型艦には中型艦二隻が護衛についている。


「ジェイド、少しだけ無理をお願いできる?」


『内容によるな』


「大型艦と中型艦を、三分だけ引きつけてほしい」


『……三分か』


 ジェイドは少し考えた。


『分かった。ただし、三分以上は無理だ。こっちのシールドが持たない』


「了解!」


 ユウはアストライアを加速させた。


『艦長、敵艦隊の側面へ回り込みます』


「うん。ライラの観測情報、頼むよ」


『了解』


 アストライアは小惑星帯の陰へ入り、敵艦隊の観測範囲から一時的に姿を消した。


 その間、アーデントは正面から激しい砲撃を続けていた。


『艦長、前部シールド出力がさらに低下しています』


 ハンナの報告に、ジェイドが頷く。


「分かってる。左舷側の防御を厚くしてくれ。主砲は連続射撃をやめて、確実に当てる」


『了解』


 敵大型艦の砲撃がアーデントをかすめ、シールド表面に大きな閃光が走った。


「……頼むぞ、ユウ」


 ジェイドが小さく呟いた。


     *


 アストライアが小惑星の陰から飛び出したのは、それから二分後だった。


『敵指揮艦、右舷後方に捕捉』


「よし!」


 ユウは一気に加速した。


 敵大型艦はアーデントへ意識を向けており、アストライアの接近に対応が遅れた。


『敵右舷シールド、局所的に低下』


「そこだ!」


 アストライアの連続射撃が敵艦の右舷へ集中する。


 シールドが崩れ、外装の一部が破損した。


『敵通信アレイを捕捉』


「撃て!」


 次の射撃で、敵艦の側面に設置された大型通信設備が破壊された。


『敵指揮艦、長距離通信能力低下』


「よし!」


 しかし、その直後だった。


『警告。敵中型艦二隻が接近』


「うわ、来た!」


 中型艦が左右からアストライアを挟み込むように接近し、連続して砲撃を開始した。


 ユウは急旋回で回避したが、一発がシールドへ直撃する。


『左舷シールド出力低下』


「まずい!」


 セラがすぐに指示した。


「ユウ、無理に逃げるな! 片方の敵艦へ接近しろ!」


「え?」


「二隻の射線を重ねるんだ!」


 ユウは理解した。


「なるほど!」


 アストライアは左側の中型艦へ急接近した。


 敵艦は慌てて回避したが、その背後にはもう一隻の中型艦がいる。互いの射線が重なり、砲撃を続けることが難しくなった。


「今だ!」


 アストライアが急旋回し、敵艦の推進器へ短い連射を浴びせた。


『敵中型艦一、主推進停止』


「よし!」


 残る一隻はアストライアを追おうとしたが、その直後、アーデントの主砲が側面から直撃した。


『敵中型艦二、主兵装機能停止』


 ジェイドから通信が入った。


『間に合ったか?』


「最高のタイミング!」


『こっちも限界が近い。早く決着をつけよう』


     *


 指揮艦の通信設備を失った敵艦隊は、明らかに動きが鈍くなっていた。


 小型艇は連携を失い、それぞれが個別に拠点へ接近している。そこへ復旧した三基の防衛砲塔が迎撃を開始した。


 リアが現地整備員とともに復旧させた砲塔は、敵小型艇一隻のシールドを破壊し、残る艇を後退させることに成功した。


『こちらカストル! 敵の攻撃が弱まっています!』


 管理責任者ロイドから通信が入る。


「よし! あと少しです!」


 ユウは敵大型艦を見た。


 通信設備を破壊され、護衛艦二隻も無力化された大型艦は、すでに撤退を始めている。


「……逃がす?」


 ユウが尋ねると、セラが首を横に振った。


「今回は追うな。拠点の防衛が最優先だ」


「了解」


 ユウは追撃をやめ、アーデントの近くへ戻った。


 敵艦隊は損傷した艦を回収しながら後退し、やがて小惑星帯の外へ姿を消した。


 こうして、カストル採掘拠点への大規模攻撃は撃退された。


     *


 戦闘終了後、アストライアとアーデントは拠点のドックへ戻った。


 アーデントは前部シールド発生器に損傷を受け、外装の一部にも被弾跡が残っていた。アストライアも左舷シールド発生器に負荷がかかり、冷却系の点検が必要となっている。


「……結構やられたなあ」


 ユウはアーデントの損傷箇所を眺めた。


「初めての実戦にしては、よく耐えた方だ」

 セラが言う。

「ジェイドも頑張ってくれたしね」


 そこへジェイドがやってきた。


「艦長、お疲れ」


「お疲れ! アーデント、大丈夫?」


「応急修理はできる。ただ、HM-417へ戻ったら本格的に点検した方がいいな」


 ユウは少し苦笑した。


「……修理代、いくらだろ」


 ジェイドが笑った。


「報酬の方が大きいはずだ」


「それならいいんだけど」


 エリナも医療区画から戻ってきた。


「負傷者の処置は終わりました。拠点側で軽傷者が三名いましたが、命に別状はありません」


「よかった」


 ユウは安心した。


 だが、セラの表情はまだ厳しかった。


「ユウ、まだ任務は終わっていないぞ」


「え?」


「依頼内容を思い出せ。拠点防衛だけじゃない。航路の安全確保もある」


 ユウは端末を開いた。


《任務内容:宙賊勢力の排除、民間施設防衛、輸送航路の安全確保》


「……あ」


 ジェイドが頷いた。


「敵は撤退しただけだ。まだ七隻以上の戦力が残っている可能性がある。放っておけば、また襲ってくる」


「そういうことか」


 ユウは少し考えた。


「じゃあ、次はこっちから探しに行く?」


「そうなるな」

 セラが答える。

「ただし、今度は防衛戦ではない。敵の拠点を探し、必要なら制圧することになる」


 ユウは少し笑った。


「……さすがC級。簡単には終わらないね」


 ジェイドも笑った。


「報酬が高い理由が分かっただろ?」


「うん。めちゃくちゃ分かった」


     *


 その夜、カストルの臨時作戦室では、ライラが収集した戦闘記録の解析が行われていた。


『敵指揮艦の撤退経路を追跡しています』


 アイリスの報告に合わせて、星図上に赤い航跡が表示される。


 セラがそれを確認した。


「……小惑星帯の奥へ向かっているな」


 ジェイドが頷いた。


「この先には古い採掘施設がいくつかある。宙賊が隠れるには都合がいい」


 ユウは星図を拡大した。


「じゃあ、そこを調べよう」


『ライラによる先行偵察を推奨します』


「うん。まずは敵の数と配置を確認してからだね」


 セラが少し笑った。


「いい判断だ」


 ユウは頷いた。


「今回は二隻あるからね。ちゃんと連携して戦いたい」


 アストライアとアーデント。


 初めてのC級任務は、想像以上に厳しい戦いになった。


 だが、二隻で協力すれば、一隻ではできなかったことができる。その手応えも、確かに感じていた。


「よし。明日は宙賊の拠点を探そう」


 ユウは作戦図を閉じた。


「せっかく百七十万の仕事を受けたんだ。最後までちゃんとやろう!」


 セラが笑った。


「報酬だけが目的じゃないだろうな?」


「もちろん! でも報酬も大事!」


 ジェイドが肩を揺らして笑った。


 C級傭兵としての最初の仕事は、まだ半分も終わっていなかった。

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