~ヤマタノオロチ伝承?~
~ヤマタノオロチ伝承?~
ここは中央塔の1角。
中層の庭に面した施設。
【受付嬢育成課】
「はーい!後に続いてー!声に出して言ってみましょう!」
「こちら受付窓口でぇす!並んで下さいねぇ!」
「こちらーうけちつけーまどぐちでーす。ならんでーくださいねーー!」
「貸し出しはこちらでぇす!」
「かちだしはーーこーちらーでーす!」
ここには5歳から10歳ぐらいの女の子達が通っている。
男の子は商売を始めるために別の授業を受けているらしい。
10歳から15歳まではより実践的な学習をすることになっている。
女の子は受付見習い。
男の子は屋台の手伝い。
ここからは合同授業。
「はーい!次はぁ、アトランティスの歴史の授業ですよぉ!」
「せんせー!わたしーべんきょうきらいでーす!」
「だんしがーまだきてないでーす!」
「あらぁ。では、男子が来るまで庭で遊びましょうねぇ!」
「はーい!」
座学では、アトランティスの歴史。異世界の種類。冒険者について。様々なことを学ぶ。
アトランティスで生きていくために。
ここは、この子たちが自分の力で生きていくための学びの場所なのだから。
♢♢♢♢♢♢
保健室の様な部屋。
紫色の靄がかかっている。
「この子はかなり魔素に侵されてるようだね。」
白衣を着たダークエルフが魔道具を手に取った。意識の無い子供の胸に魔道具を翳す。
「これで吸収しきれるといいんだけどねぇ……」
♢♢♢♢♢♢
【日本神域】
須佐之男命の領域。
「オロチ。来たか。」
頭①「また、穢れか?」
頭②「荒ぶってるのか?」
頭③「酒は?」
「一斉に話さないでくれ!おい!リーダー?!頭①代表して話してくれね?」
頭①「天照大神様からの仕事か?」
「そうだ。今回は少し厄介みたいだな。」
「我らが、スサノオに初めて会った時も厄介であったではないか。」
「村一帯が穢れに侵食されていたな。」
「その規模なのか?」
「穢れは1つだけだが。濃い。」
「共に向かうか?」
「長野県と新潟県の県境に近い山間部で、魔素穢れの濃い場所が確認されたらしい。一緒に来てくれるか?」
頭①「この姿では目立つ。」
そう言うと、ヤマタノオロチは美青年へと変化した。
「オロチ!俺様より美青年になるなよ!」
「たまにはいいじゃないか(笑)」
『いざ、参ろう。』
県境山間部。限界集落なのか。家がバラバラと点在している。
「あの家だ。魔素だまりができている。」
ヤマタノオロチが一軒の古民家を指差す。
古民家の周囲だけ、空気が揺らぎ、紫色の靄が地を這っていた。
「結界を貼って俺が先に穢れを祓ってみるぜ。」
スサノオは大剣を片手でひょいと持ち上げ走り出す。
結界を貼ることでこの場所は「神域」へと変わるのだった。
「我は……人間を探すか……」
遠くからスサノオの声がする。
「おーい。オロチ、人を食うなよーーー!」
「我、人、食ったことないぞ。」
「今じゃそう伝えられてるらしいぜ(笑)」
人間の中には、生まれつき魔素を感じやすい者がいる。 地上では、霊感が強いと呼ばれる人々だ。 だが幼い子供は魔素への耐性が低く、濃い穢れに触れ続ければ、命を落とすことさえある。
「……あの子供か。かなり危険な状態かもしれぬ。」
「どりゃーーー!うおーーりゃ!」
スパン!スパーン!
スサノオが周りの穢れを切り刻み祓っていく。
「スサノオもう少し祓ってくれ。このままでは子供に近づけぬ。」
「おう!しかし……濃いな。」
スパーン!スパーン!
光に包まれているスサノオは凄まじい勢いで大剣を振るう。
ドドドドドド
大地が地鳴りを上げて呼応しているようだ。
オロチの頭達
『……結界持つのか?』
『スサノオの結界なら大丈夫なのである。』
『帰ったら酒だ。』
青年の姿に隠れていた他の頭たちが、一斉に話し始める。
「……少し薄くなってきたな。これなら近づけるかもしれぬ。」
オロチはゆっくりと子供へと近づく。
「こないで。こないで。こ…な…来るなァァアァァアァァア!」
「大丈夫だ。我は悪い人間ではないぞ。」
「クルナクルナクルナクルナ!クルナァァアァァア!」
異形のモノと化した子供がオロチを拒絶する。
【御祓大麻】
オロチはそう書かれたお札を翳しながら、ゆっくりゆっくり子供へと近づいていく。
「グワァアァアァァア!」
オロチはお札をそっと子供の胸に貼った。
ストン。
崩れ落ちた子供を抱き抱え。オロチはスサノオの元へと走り出したのだった。
「……スサノオ。この子は連れて帰らねばならぬ……」
「ひでぇ穢れだな……しっかり解呪しねぇと命が危ないかもしれん。」
「……すまぬ。ここには親もおるだろう。友達もいるかもしれぬ。すまぬ。」
そう言ってオロチは辺りを見回す。
点在する家々にかかっていた紫の靄が消え初めていた。
濁っていた魔素の流れが、少しずつ穏やかさを取り戻していく。
「アトランティスへ帰ろう。そこがお前の新たな生きる場所となろう。」
オロチは腕の中の子供に優しく声をかけるのだった。
♢♢♢♢♢♢
保健室のような部屋。
子供の胸へ翳した魔道具が「何か」に反応した。
【御祓大麻】
お札と魔道具が光を放つ。
その光が1つになった。
「……これで大丈夫だ。」
ダークエルフが呟く。
保健室の入口から、青年の姿をしたオロチが静かにその様子を見守っていた。
「良かったな。ここから、ここで新たに生き直すとよい……」
庭から子供たちの元気な笑い声が響いてくる。
「オロチさーーーん!へび滑り台やってーーーーー!」
「すべりだい!」
「すっべりだい!」
「おいおい!我の首をまた滑り台にするつもりか?」
「はちにんいっぺんにすべれるーーー!」
「すべれるーーー!」
「スサノオの奴に酒樽たくさん用意してもらわねば。仕事の報酬まだ貰っていないではないか……」
心の中では、
(この子らの笑顔が報酬かもしれぬ。)
と、カッコつけているオロチなのであった。




