4日目~ダ・ヴィンチとオーパーツ~
城壁の上へ向かうには……。
「エレベーターがありマス。」
「ですよねぇ。」
(デス。)
「『デス』だけ脳内に語りかけるな!」
エレベーターが静かに城壁を上っていく。
扉が開いた瞬間、思わず息をのんだ。
「おおおっ! これが城壁から見るアトランティスか!」
上空から見下ろした景色とはまた違う。
城壁の上には人がすれ違えるほどの広い通路が続いていた。
見下ろせば、石造りの街並みがどこまでも広がっている。
役場を中心に放射状へ伸びる大通り。その先にはドワーフ街や巨人族の街が見え、遠くには緑豊かなエルフ街も小さく見えた。
五十メートルはある城壁の向こうには、果てしない草原が広がっている。
「街ひとつが、そのまま巨大な城の中にあるみたいだな。」
しばらく景色を眺めたあと、ふと思いついてAIWatchへ尋ねた。
「なぁ、アトランティスには転生者と、古代から暮らしている種族以外にも住人はいるのか?」
「イマス。転生せず、アトランティスに住み続ける方も少数ですがイマス。」
「へぇ……。」
「有名な方ですと、レオナルド・ダ・ヴィンチ様でしょうカ。」
「えっ!? ダ・ヴィンチ!?」
「街の反対側にお住まいデス。役場のワープゲートを使用することを推奨シマス。」
「行く!行く!あのモナリザのレオナルド・ダ・ヴィンチだろ?」
「デス」
俺は巨人族の街のワープゲートから役場へ帰ってきた。
「こちらが貸し出しAIWatchになります。登録してくださいねぇ。」
今日も人が多いな。
「武器屋と服屋教えてくれ」
「ハイ、案内シマス」
少し小腹が空いたな。
「先ずは手頃な屋台に案内してくれ。」
「評判の肉串屋台に案内シマス。」
俺は肉串を1本食べた。
「美味いな。」
武器屋に入る。
違うな。
服屋に入る。
これも違うな。
俺は屋台へと戻り。
「店主、これを3本ほど包んでくれないか。」
「良い選択だと思われマス。」
「じゃあ、ダ・ヴィンチの所へ案内してくれ。」
俺は役場のワープゲートを使い、街の反対側にあるエルフ街へ向かった。
エルフ街を抜け、小さな石橋を渡る。
川の向こうには緑豊かなエルフの森が広がり、その景色を見渡せる川の畔に一軒の邸宅が建っていた。
二階建ての、大きくはない建物だ。
石造りで中世ヨーロッパの趣を感じさせる一方、窓の形や建物の造りにはどこか時代を先取りしたような印象もある。
不思議な建物だ。
コンコン。
「どうぞ。」
中へ入ると、一人の老人が机に向かっていた。
白く長い髪と髭。 年齢を感じさせる穏やかな顔立ちだが、その瞳だけは少年のように生き生きとしている。
机の上には描きかけの設計図やスケッチが何枚も広げられ、部屋の隅には見たこともない道具が無造作に並べられていた。
「あの……レオナルド・ダ・ヴィンチさんですか?」
老人は手を止め、ゆっくりとこちらを振り向く。
「いかにも。」
「あ、あのサイ……」
(サインではなくラフ画を推奨しマス)
「ラフ画を一枚いただけませんか?あ、コレ街で評判の肉串です!」
「お!ありがとう。ちょうど小腹が空いていたんじゃ。」
ダ・ヴィンチは左手で肉串を頬張りながら、右手で一枚のラフ画を描き上げた。
「こ、これは……。」
「ドローンじゃ。これにも儂はいっちょ噛みしておっての。」
「いっちょ噛みって、何したんですか!?」
「なぁに。大したことではないわ。プロペラを三枚から四枚にしたらどうじゃ、と言っただけじゃ。……おっと、あまり地上の話をすると創造神にまた説教されるわ。」
(地上文明に大きな影響を与えない範囲で、と言われてオリマス。)
あ、「これにも」って、さりげなく言った……。
ダ・ヴィンチさん、絶対ほかにも何かやってるな、これは。
「ダ・ヴィンチさん! もう一つ、お尋ねしたいことがあります。」
「なんじゃ。」
「オーパーツと呼ばれるものです。例えば人型ロボット……『機械仕掛けの騎士』なんかは、どこから発想されたんですか?」
ダ・ヴィンチは肉串を一本食べ終えると、小さく笑った。
「ふふふ。アトランティスじゃ。」
「えっ?」
「と言っても、あの頃の儂はまだアトランティスの存在を知らなんだ。ただ、アトランティスと地上との交流は古代から密かに続いておる。今はそれだけ知っておればよい。」
(これから先は機密事項デス。)
それから俺たちは、気が付けば夜更けまでオーパーツについて語り合っていた。
「儂も昔は変わり者と呼ばれておったが、お前も相当な変わり者じゃな。」
ダ・ヴィンチは楽しそうに笑った。
「もう夜も更けた。今日はここへ泊まっていくがよい。」
こうして俺は、ダ・ヴィンチ邸で一泊することになった。




