35日目~後編・創造~
35日目~後編・創造~
AIWatchが説明を終えた、その時だった。
店の入口に控えていた助天使が静かに一礼する。
「承知いたしました。」
その隣にいた格天使も軽く頭を下げると、二人は店を後にした。
俺は二人を見送った。
(いやいや……。)
(創造神様を呼びに行った……よな?)
(そんなこと、本当にあるのか……?)
BARの中は不思議なくらい静かだった。
ダ・ヴィンチさんは何事もなかったようにお茶を飲み、ダークエルフさんも穏やかな表情のまま。
どうやら驚いているのは俺だけらしい。
数分後。
BARのドアが静かに開いた。
「カーッカッカッカ!」
「助天使や!格天使や!お供、ご苦労様じゃった!」
豪快な笑い声とともに、一人の老人が店へ入ってきた。
……どこかで見たことがあるような風貌。
妙に印籠が似合いそうな気がする。
「そ、創造神様!!」
老人は満足そうに頷き、もう一度豪快に笑う。
「カーッカッカッカ!」
「儂に聞きたいことがあるそうじゃな?」
「はい。」
幸は姿勢を正した。
「創造神様は……あの時、どう思われたんですか?」
創造神は、しばらく幸の顔を見つめると
「……困った。どうしたものかと考えたわい。」
「魔素は世界を巡る命の流れじゃ。その流れが少しずつ細くなっていく。」
「文明は衰え、魔法は失われ、多くの命が苦しむ。」
「創造主として、それをただ眺めておるのは……なかなか辛いものじゃったからの。」
幸は黙って耳を傾ける。
「もちろん、世界を創り直すことはできた。」
創造神はあっさりと言った。
「じゃが、儂はせんかった。」
「なぜなら、それは今生きる者たちの人生を、一度すべて無かったことにするということじゃ。」
「笑った日も、泣いた日も、積み重ねてきた歴史も、全部消えてしまう。」
「それだけは、創造主である儂にも許せなんだ。」
創造神はゆっくりとお茶を一口飲む。
「じゃから儂は、世界を残す道を選んだ。」
幸は次の疑問を口にした。
「どうして……アトランティスだったんですか?」
創造神は湯呑みを静かに置いた。
「理由は二つある。」
「一つは、当時のアトランティスが世界で最も魔法文明が発展しておったことじゃ。」
「日本ではカタカムナ、言霊という形で魔素の扱いが体系化され始めた。」
「その研究をさらに発展させ、魔法文明として完成させたのがアトランティスじゃ。」
「じゃから儂は、日本をアトランティス東支部と定めた。」
「そして、もう一つ。」
創造神は幸を見つめる。
「魔素は減り続けておった。」
「このままでは、いずれアトランティスとて滅ぶ。」
「じゃから儂は……創った。」
幸はその一言に目を見開く。
「創った……?」
「うむ。」
「魔素と素材を供給するための、新たな世界じゃ。」
BARの空気が静まり返る。
ダ・ヴィンチも、ダークエルフも、口を挟まない。
創造神は静かに続けた。
「お主らが『異世界』と呼んでおる場所じゃ。」
「異世界は……創造神様が?」
「そうじゃ。」
「世界を創り直す代わりに、新しい世界を創った。」
「そこから魔素と素材を供給し、アトランティスが循環させる。」
「アトランティスを地球から切り離し隠す。」
「それが、儂の選んだ道じゃ。」
幸はしばらく言葉を失っていた。
これまで当たり前のように存在すると考えていた異世界。
それが、世界を救うために創られたものだったとは。
ダークエルフが微笑みながら口を開いた。
「その隠す技術、結界魔法もね、アタシ達のご先祖様、アトランティス人の研究成果ね? 創造神様♪」
「アハハ。そうじゃったわい。」
創造神は頭をかきながら笑った。
【こうして地球上の魔法文明は、長い年月をかけて自然に衰退していった。】
AIWatch
「魔法については現代でもアニメや創作物として語り継がれてイマス。幸サマのお好きな分野デス。」
「いきなり暴露するなよー!」
「さて、ダ・ヴィンチよ。久しぶり呑むかの?」
2人の間にいる俺はいったいどうすれば……?
「坊っちゃんも呑んで行きなさいよ。ココはそうゆう店なのよ♪」




