26日目 ~スサノオ伝説・ヤマタノオロチ討伐見学~
## 26日目 ~スサノオ伝説・ヤマタノオロチ討伐見学~
翌朝。
障子越しに柔らかな朝日が差し込んでいた。
ゆっくりと目を開く。
昨夜泊まった客殿は、木の香りに包まれた静かな部屋だった。
布団を畳み、手を床につく。
「ん?」
板張りの床。
木の感触はある。
けれど、不思議と少しだけ柔らかい。
(AIWatch『神域に存在する木材デス。人間界の木材とは性質が少し異なりマス。』)
俺は軽く床を撫でると、立ち上がった。
部屋を出ると、スサノオが廊下で待っていた。
「おう、おはよう。」
「おはようございます。」
「今日は何をするんですか?」
俺が尋ねると、スサノオは笑った。
「俺さ、荒ぶるやん?荒ぶるよね?荒ぶるんだよ。」
「……はい?」
「だから今日はオロチ討伐。」
「え?」
「討伐……ですか?」
「うん。」
「定期的にな。」
あまりにも自然に言うので、頭が追いつかない。
その時だった。
奥から巨大な影がゆっくり姿を現す。
八つの首。
巨大な胴体。
伝説の魔物、ヤマタノオロチ。
「お久しぶりであるな。」
「……え?」
「我、アマテラス様にいつも呼び出される。」
八つの首が順番に喋り始める。
「『オロチさん、スサノオが荒ぶりますの……また、行って下さいません?』ってな。」
俺は思わず苦笑いした。
「オロチさんも大変ですねぇ。」
「まぁ、仕事だからな。」
そう言うと、オロチは満足そうに頷いた。
「では我、準備と打ち合わせがあるのでこれにて!」
八つの首を揺らしながら、奥へ消えていく。
(AIWatch『人間界では、スサノオ様は高天原で荒ぶる神として伝えられていマス。その後、アマテラス様がお隠れになられた天岩戸伝説、そして高天原を追放された後、出雲でヤマタノオロチを討伐したという神話が残っていマス。』)
AIWatchの解説が終わる。
スサノオは少し照れくさそうに笑った。
「お前、俺の話聞いてくれる?」
「オロチが準備終わるまでさ。」
「もちろんです。」
「何でも話してください。」
スサノオは空を見上げた。
「姉上と喧嘩してるわけじゃないんだよ……。」
「俺さ、荒ぶるんよ。」
「自分でも止められへん。」
「だから姉上は、その度にオロチ呼ぶねん。」
俺は静かに耳を傾ける。
「姉上の隠れるんもさ、いつもやねん。」
「だから今回も、すぐ出てくる思てた。」
「まさか、本当に隠れるなんて……。」
「……あの時は八百万みんな大変やってんぞ。」
その頃。
少し離れた場所では、ヤマタノオロチによる作戦会議が開かれていた。
「では、会議を始める。」
一つの首がそう宣言する。
「我、討伐されに行く!」
「我、嫌だ……。」
「我、酒あればいいぞ。」
「我、(。-ω-)zzz...。」
「我、(。゜ω゜) ハッ!」
「寝るな!」
「すまぬ。」
一瞬の静寂。
一番大きな首が咳払いをした。
「とりあえず、荒ぶるスサノオを何とかしようぞ!」
「賛成!!」
八つの首が綺麗に声を揃えた。
◇ ◇ ◇
しばらくして。
スサノオは大きく伸びをした。
「よし。」
「そろそろ行くか。」
俺たちは少し離れた場所から討伐を見学することになった。
オロチは八つの首を並べ、酒を美味しそうに飲んでいる。
「準備よーし!」
「よーし!」
スサノオが剣を抜いた。
シャキーーン!!
ズバーーーン!!
グァアアアアア!!!
…………。
「終わった?」
「えっ。」
「あっという間に討伐終わった?」
(AIWatch『ハイ。慣れている模様デス。』)
「早っ!」
遠くでスサノオが大きく手を振る。
「おーーい!」
「オロチーー!」
「ありがとさーん!」
「また荒ぶったらよろしくなーー!」
遠くからオロチの声が返ってくる。
「酒を忘れるでないぞーー!」
「分かってる分かってる!」
スサノオは笑いながら俺の肩を叩いた。
「おい。」
「これがヤマタノオロチ討伐だ。」
「俺、荒ぶるやん?」
「強いぜ!」
「……。」
「いや、そこなんですか。」
思わず笑ってしまう。
こうして俺の『ヤマタノオロチ討伐見学』は、あまりにもあっという間に幕を閉じたのだった。




