25日目 ~前編・ダ・ヴィンチの爆弾発言~
25日目 ~前編・ダ・ヴィンチの爆弾発言~
翌朝。
目を覚ますと、香ばしいパンの香りとコーヒーの匂いが部屋に広がっていた。
ダ・ヴィンチさんは、いつもの席で新聞代わりの資料を読みながらパンをかじっている。
「おはようございます。」
「おぉ、おはよう。」
机の上にはパンとコーヒー。
それだけだった。
「シンプルですね。」
「儂、料理せんからの。」
「なるほど。」
妙に納得してしまう。
昨日も思ったが、この家は研究室そのものだった。
本棚には資料がぎっしり並び、机の上には設計図が山積みになっている。
ふと台所へ目を向ける。
「……。」
コンロの上にも資料が積まれていた。
「火、使えませんよ?」
「使わんから問題ない。」
「問題ある気がするんですけど……。」
思わず苦笑しながらパンを一口かじる。
コーヒーを飲み、一息ついたところで、俺は何気なく口を開いた。
「そういえば。」
「俺、次は日本を見てみようかと……。」
ダ・ヴィンチさんは俺の言葉へかぶせるように、さらりと言った。
「儂、アマテラスに会ったことあるぞい。」
「ブッ!!」
危うくコーヒーを吹き出すところだった。
「えっ!?」
「今、何て言いました!?」
「儂、アマテラスに会ったことあるぞい。」
「いやいやいや!!」
「そんな世間話みたいに言わないでくださいよ!」
AIWatchが静かに補足する。
「事実デス。」
「補足するなーー!」
俺は思わず頭を抱えた。
前世で何度も本を読み、調べ続けた日本神話。
その中心にいる神様を、このおじいさんは「会ったことある」の一言で片付けてしまった。
「会わせてください!」
「構わんぞい。」
ダ・ヴィンチさんはコーヒーを一口飲む。
「ただし。」
「日本神域へ入るには、大国主命の許可が必要じゃ。」
AIWatchが静かに補足する。
「補足シマス。」
「大国主命様は、日本神域への入域管理を担当されてイマス。」
「神域へ立ち入る際は、大国主命様の許可が必要デス。」
「入国審査みたいなものですか?」
「概ね、その認識デ問題アリマセン。」
「なるほど。」
俺が頷くと、ダ・ヴィンチさんはAIWatchへ目を向けた。
「AIWatch。」
「大国主命へ伝えてくれ。」
「『面白い人間が行くからよろしくじゃ!』」
「送信シマス。」
ピコン♪
数秒後。
「返信が届キマシタ。」
「『承知した。』デス。」
「早っ!」
思わず声が漏れる。
「神様もAIWatch使ってるんですか?」
「イイエ。」
AIWatchが静かに答える。
「神様はAIWatchを必要トシマセン。」
「ワタシは送信を補助しただけデス。」
「神様からの返信は直接受信シマシタ。」
「……。」
「神様ってすげぇ。」
ダ・ヴィンチさんは、いつものように穏やかに笑った。
「ほっほっほ。」
「では、行ってくるとええ。」
俺は立ち上がり、大きく頷く。
「はい!」
こうして俺は、日本神域への第一歩を踏み出すのだった。




