23日目~イースター島~
イースター島。
南太平洋に浮かぶチリ領の孤島。
世界中でモアイ像が並ぶ島として知られ、その建造方法は今なお多くの謎に包まれている。
港の貸し出し所から結界を抜け、ギュルルは一直線にこの島へと飛んだ。
「近っ!」
「イースター島には結界出口が現存してイマス。」
「だから一発で来られたのか。」
ギュルルの背から降り立つと、潮風が心地よく頬を撫でた。
目の前にはどこまでも続く青い海。
断崖へ打ち寄せる白い波。
そして、その先には巨大なモアイ像が静かに並んでいた。
「……すげぇ。」
写真では何度も見てきた。
けれど、本物はまるで違う。
風の音。
波の音。
何も語らず海を見つめるモアイ。
しばらく景色を眺めているうちに、ふと思った。
「ここでバーベキューしたら最高じゃないか?」
旅の最後。
この景色を眺めながら、みんなで飯を食う。
「よし。」
俺はAIWatchを取り出した。
「ドワーフにメッセージ送って。」
「了解シマシタ。」
画面にメッセージ画面が表示される。
『今どこ?』
すぐに返信が届いた。
『港だぞーー!』
早いな。
俺は笑いながら入力する。
『イースター島で待ってる!肉と野菜よろしく!』
数秒後。
『了解だぞーー!』
「便利な機能あるなら最初に教えろよ。」
「必要になったため表示シマシタ。」
「そのスタイルなんとかならん?」
「最適化デス。」
「はいはい。」
AIWatchをしまい、再び景色へ目を向ける。
夕日がゆっくりと海へ近付いていた。
その時だった。
「きたぞーー!買ってきたぞーー!」
聞き慣れた声と共に、ギュルルが空から舞い降りる。
荷物を両手いっぱいに抱えたドワーフは、満面の笑みだった。
「おっ、ちょうどよかった!」
「モアイってさ……。」
「あーソレなーー。」
ドワーフはモアイをちらりと見上げる。
「人間が大変そうだったからーー。」
「俺たちが少しだけ手伝ってやったぞーー!」
「……え?」
世界中で議論されている謎が、ものの数秒で終わってしまった。
「よーーし!」
「バーベキューするぞーー!」
「今日はドラゴン肉だぞーー!」
「ど、ドラゴン肉!?」
思わず荷物を見つめる。
「ドラゴン肉って、高いんじゃ……。」
「俺、お金あるぞーー!」
ドワーフは胸を張る。
「仕事してるぞーー!」
「働いたから買えたぞーー!」
「……なんか、妙に説得力あるな。」
「デハ、準備シマス。」
AIWatchの声と共に、青白い光が地面へ広がった。
コンロ。
焼き網。
テーブル。
椅子。
炭。
食器。
必要な物が次々と現れていく。
「……。」
「こんなんも持ってるのか!?」
「バーベキューセットは初期アプリに搭載してイマス。」
「初期アプリ万能すぎるだろ!」
「快適化デス。」
「そこだけはブレないな。」
やがて網の上でドラゴン肉が焼け始める。
じゅうぅぅ……
香ばしい香りが潮風に乗って広がっていく。
AIWatchが肉を見つめながら言った。
「ドラゴン肉、美味しそうデスネ。」
「お前、食えないよね?」
「食事機能は搭載してイマセン。」
「皆様の反応から、美味シイト推測シマシタ。」
「それ、食べたい人のコメントじゃん。」
「否定はしマセン。」
思わず吹き出した。
モアイの謎よりも。
世界の歴史よりも。
今は、この景色の中で仲間たちと食べるドラゴン肉の方が何倍も楽しみだった。
空はゆっくりと茜色へ染まり始める。
海も。
空も。
モアイも。
すべてが夕日に照らされ、静かに輝いていた。
俺は大きく息を吸い込んだ。




