22日目 ~マヤの明星~
22日目 ~マヤの明星~
昼過ぎ。
俺達は港の結界を抜け、飛竜へ乗り込んだ。
青い海を越え、大陸を横断する。
やがて、どこまでも続く深い緑が視界いっぱいに広がった。
「……すごい。」
密林の中から、巨大な石造りの建造物が姿を現す。
飛竜はゆっくりと高度を下げていった。
「見えてきマシタ。」
「マヤ文明デス。」
目の前にそびえていたのは、巨大な階段状のピラミッドだった。
「……おぉ。」
何段あるのか分からないほどの急な石段。
エジプトの滑らかなピラミッドとは違う。
天へ向かって積み上げられた巨大な階段。
その頂上には、小さな神殿が静かに建っていた。
「なんか……。」
「空へ登る階段みたいだ。」
「ククルカン降臨デス。」
AIWatchが静かに説明を始める。
「マヤ文明の都市チチェン・イッツァには、『エル・カスティージョ』と呼ばれる階段ピラミッドがありマス。」
「春分と秋分の日の夕方、太陽の光と階段の影が重なり、蛇が階段を降りてくるように見えマス。」
「この現象は、羽毛の蛇神『ククルカン』の降臨を表していると考えられてきマシタ。」
AIWatchはホログラムを映し出す。
夕日に照らされた階段へ、三角形の影が次々と現れる。
やがて影は一匹の巨大な蛇となり、階段をゆっくりと降りていった。
「……すげぇ。」
「現在では、優れた建築技術と天文学によって計算された現象だと考えられてイマス。」
「マヤ文明は太陽や月、そして金星を長期間観測し、その知識を暦や建築へ活かしていマシタ。」
「このピラミッドは、その代表例の一つデス。」
俺達は日が沈むまで遺跡を歩いた。
そして夜。
俺は静かに空を見上げた。
「……。」
言葉が出なかった。
空一面に広がる無数の星。
街明かりのない夜空は、まるで星の海だった。
「あの明るい星。」
「あれは?」
「金星デス。」
「マヤ文明では特に大切に観測されていた星の一つデス。」
俺はしばらく、その輝きを見つめ続けた。
「昔の人も。」
「同じように空を見上げていたんだな。」




