9日目~小人の娯楽施設~
朝、目を覚ます。
いつもの宿の部屋。
和モダンを基調とした落ち着いた空間に、朝日が差し込んでいる。
壁には今日も富士山の絵が飾られていた。
「今日もいい天気だな。」
何気なく富士山の絵へ目を向ける。
「遊ぶか?」
「……。」
額縁の上に、小さなおじさんが座っていた。
身長は十センチほど。
短い足をぶらぶらさせながら、こちらを見ている。
「遊ぶか?」
「行く?」
「……。」
「夢?」
目をこすってみる。
やっぱりいる。
「遊ぶか?」
「行く?」
AIWatchが静かに答えた。
「補足シマス。」
「小人族専用娯楽施設へ案内しようとしているとオモワレマス。」
「通訳できるの?」
「推測デス。」
「推測なんだ……。」
小さなおじさんは満足そうに頷くと、額縁から軽やかに飛び降りた。
「行く?」
「……行こうか。」
役場へ着くと、小さなおじさんは迷いなく建物の中へ入っていく。
案内された先には、小さな扉があった。
「ここ?」
「遊ぶか。」
中へ入ると、そこは小人族専用の娯楽施設だった。
小さなテーブル。
小さな椅子。
小さなビリヤード台。
小さなカードゲーム。
何もかもが小人サイズで作られている。
「すごい……。」
「でも。」
「俺、遊べないな。」
AIWatchが答える。
「サイズが合いまセン。」
「だよね。」
施設の奥では、レプラコーンが売店で店番をしている。
その横ではコロポックルが植木へ静かに水をあげていた。
穏やかな時間が流れている。
すると、どこからともなく羽音が聞こえた。
「ねーねー。」
肩に小さな妖精が止まる。
「どこからきたの?」
「しんでるの?」
「ねーねー。」
「なにしにきたの?」
「……。」
答えようと口を開いた、その時だった。
「おなかすいた?」
「え?」
ピクシーはポケットから小さなクッキーを取り出した。
幸の小指ほどしかない、小さなクッキーだった。
「たべる?」
「ありがとう。」
受け取ろうとした瞬間。
ぽろっ。
床へ落としてしまう。
「あー。」
「小さすぎるよ。」
その様子を見ていた売店のレプラコーンが、にこにこしながら人間サイズのクッキーを差し出した。
「これ。」
「ありがとう。」
受け取って一口食べる。
「美味しい。」
AIWatchが静かに告げる。
「決済シマシタ。」
「え?」
「今?」
レプラコーンはにこにこ笑っている。
「商売だから。」
「サービスじゃないんだ。」
思わず笑ってしまった。
ピクシーはまだ小さなクッキーを掲げている。
「たべる?」
「その気持ちだけもらっとくよ。」
「そうなの?」
興味はもう別へ移ったらしい。
羽をぱたぱたさせながら、どこかへ飛んでいった。
「遊ぶか?」
振り向くと、小さなおじさんがまた笑っていた。
「今日は見てるだけで十分だったよ。」
「また遊びに来る。」
「遊ぶか。」
嬉しそうに頷く小さなおじさんへ手を振り、俺は娯楽施設を後にした。




