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婚約破棄の慰謝料として呪われた公爵領を貰ったら、公爵様が超絶美形な上に私の魔力で呪いも解けて、幸せすぎて死にそうです  作者: 奥野ミズオミ


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第11話 深まる蜜月

第11話 深まる蜜月


 神聖オーギュスト帝都での動乱、そして元婚約者エリオットからの情けない手紙。それらすべてを過去という名の糧にして、私とアルヴィン様の生活は、より深く、より甘いものへと姿を変えていました。

 朝の光が、公爵邸の寝室を優しく照らします。私の体は今、羽毛布団よりも柔らかく温かいものに包まれていました。


「ん、アルヴィン、様」


「おはよう、愛しいリリアーナ。今朝の君は、いつも以上に清らかな光を放っているね」


 いつもこんな感じの朝です。アルヴィン様は、私が目を覚ますのを待ち構えていたかのように、こめかみに優しい口づけを落とします。毎日です。

 死神と恐れられた彼は、リリアーナという太陽の周りを回る惑星のよう。私の姿が見えないだけで落ち着かなくなり、こうして肌を合わせているときだけ、安らかな微笑みを浮かべるのです。


「まだ、体が熱いです。アルヴィン様が、夜通しあんなに魔力を流し込むから」


「すまない。君の魔力があまりに心地よくて、つい闇が、君の光を求めて暴走してしまった。お詫びに、今日は一日、君の手足になろう」


 そう言って、彼は私を抱き上げたままバスルームへと運びました。お詫びになってますかね。

 最近、私の足が地面につく時間がどんどん減っている気がします。


 午後、私とアルヴィン様は、新しく整備された領都の市場を視察することにしました。もちろん、アルヴィン様は私の腰をしっかりと抱き寄せ、周囲の男たちに見るなと言わんばかりの威圧感を放っています。逆に見られるのに。


「リリアーナ様だ!」


「聖女様、ありがとうございます!」


 領民たちの声は、以前よりもずっと明るく、感謝に満ちているのは嬉しい限り。

 市場の棚には、私の浄化の魔力を浴びて育ったリリアーナ・リリーの香水や、信じられないほど甘い果実が並んでいます。見ていてあきない。


「公爵様、リリアーナ様! これを食べてみてください!」


 果物屋の店主が差し出したのは、真っ赤に熟したリンゴでした。まあ、美味しそう!

 一口かじると、口の中に魔力の雫が弾けるような、芳醇な香りが広がります。


「美味しい! これ、以前よりもさらに味が濃くなっていますね」


「リリアーナの魔力が、土地の質を根本から変えたんだ。これほどの名産品が揃えば、また不届きな輩が狙ってくるかもしれないな」


 アルヴィン様は私の唇についた果汁を、自らの指で拭い取りました。そして指を自分の唇へ。店主が見てますよ。


「ふむ。確かに甘い。君の唇の方が、万倍も甘いな」


「も、もう! 公衆の面前ですよ!」


 私が赤くなって抗議すると、アルヴィン様は楽しそうに目を細める。

 周囲の領民たちは、もはやいつものこととばかりに温かい目線を送ってくれています。少し迷惑かもね。


 屋敷に戻ると、執事セシルさんが少し困ったような表情で私たちを迎えました。


「旦那様、リリアーナ様。帝国の騒動を受け、お隣のロセッティ王国から親書が届いております。なんと、女王陛下自らが、リリアーナ様にお知恵を拝借したいと」


「お知恵を? 私にですか?」


 私は首を傾げました。ロセッティ王国は、美しい運河と芸術の国として知られていますが、近年、深刻な水の汚染に悩まされているという噂を聞いたことがある。

 アルヴィン様は手紙を奪うように受け取り、一読すると鼻で笑いました。


「我が国の水源を浄化してほしい。報酬は、リリアーナ嬢にふさわしい王冠と、我が国の第一王子の妃としての地位を。セシル、手紙は燃やせ」


「旦那様、流石に一国の女王陛下の親書を燃やすのは外交問題に」


「問題ない。リリアーナを別の男の妃にしようという提案自体、我が公爵家に対する宣戦布告だ。返事はこちらで書く。彼女は私の妻であり、彼女の光は一滴たりとも他国には貸し出さないとな」


「アルヴィン様、流石にそれは横暴すぎます!」


 私は彼の腕を掴み、止めます。本当に困っているかもしれない。私が力になれるならと思うけど。


「お困りの方がいるなら、私にできることをしたいんです。もちろん、私はあなたのそばを離れるつもりはありません。でも、私の力が誰かの救いになるなら」


 アルヴィン様は、ぐっと言葉を飲み込みます。彼は、私が誰かのために動くときの強さを知っています。そして私の慈愛に満ちた心にこそ、彼は救われたという顔をしてる。


「分かった。条件がある。君を一人で行かせることは絶対にしない。護衛として同行し、滞在中のすべての時間は監視下に置かせてもらう。いいかい、リリアーナ。君が他人のために流す一粒の汗さえ、本当は独占したいんだ」


 アルヴィン様は私を強く引き寄せ、額を押し当てました。瞳には深い愛と、愛を上回るほどの恐れが見え隠れしています。

 私が光として遠くへ行ってしまうのではないかという、彼の中に残る最後の呪いだった。


「大丈夫です。どこへ行くときも、私はあなたの隣にいます」 


 私は彼の頬にそっと触れ、安心させるように微笑みました。わかっています。一緒にいます。


 夜になった。遠征の準備を執事セシルさんたちに任せ、私たちは静かな夜を過ごしていました。アルヴィン様は、寝室のバルコニーで私の髪をすいてくれます。


「君がロセッティ王国へ行けば、また君の美しさと優しさが世界に知れ渡ってしまう。隠しておきたい。部屋に宝物として閉じ込めておきたいんだ」


「ふふ、アルヴィン様は本当に独占欲が強いんですね」


「独占欲の自覚はある。君を失う苦しみを知っているし、君を共有するなどという選択肢は存在しない」


 彼はブラシを置き、私の肩に顔を埋めました。心配みたいね。


「愛している。昨日よりも、一分前よりも、もっと深く、君を欲している」


 アルヴィン様の手が、ナイトドレスの肩紐を滑り落としました。月の光に照らされた私の肌に、彼の熱い唇が重なります。


「アルヴィン様っ、あああああ」


 私の魔力が、彼の情熱に応えるように溢れ出しました。部屋の中に飾られたリリアーナ・リリーの花々が一斉に開き、甘い香りが充満します。

 私の浄化の光がアルヴィン様を包み込み、彼の深い愛が私の心を満たしていくのを感じる。


「君を、誰にも渡さない。神が君を召そうとしても、腕を斬り落として君を取り戻すさ」


 激しいけれど壊れ物を扱うような繊細な口づけ。婚約破棄され、捨てられたはずの私は世界で最も強引で、最も不器用で最も愛の深い男の腕の中で、とろけるような幸せに溺れていました。ずっとこうしていたいな。


「私も、あなたを離しません。光は照らすためにあるんですから」


 重なり合う鼓動。私たちは、小さな領地を飛び出す。幸せすぎて、死にそうな幸せは、まだ始まったばかりのプロローグに過ぎない。

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