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精霊の奏者  作者: ゆきあさ


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助けてよ、ノーラ

来ていただいてありがとうございます!




「え?私が星の聖地へ?ポロス学園へ?」


いつものように町の学校でノーラとヴィオラを演奏していたら、「支援者」という人が来たの。そう、私は才能を見込まれてポロス学園に入学したの。ノーラはたぶん特に星の音楽団に興味は無かったと思う。ただ、ヴィオラを弾いているのが楽しいだけ。でも私が心細いって言ったから一緒に来てくれた。


「大きな学校!綺麗な建物!大きな街!そして大きな岩……!あれが星の聖地、岩のステージ!」


入学式の日、キラキラした世界に驚いたわ。綺麗な人達がいっぱいで。こんなにたくさんの貴族の人達を見たのは初めてだった。中でもあのフィル・フィランダー・オルブライト様……。彼は別格だったわ。一目惚れだったの。


「なんて素敵な人……。あんな人がこの世界にいるなんて」


あの日から、星の音楽団への入団は私の中で確定事項になった。今は相手にされてないけど、いずれ同じ音楽団に入れば、身分の差なんて関係なくなる。その時は私を見てくれる。きっとそうなる。ノーラだってそう言ってくれたもの。一緒に演奏したくて何度も頼んだけど、彼はいつも冷たい反応ばかり。でもいいの。彼は誰にでもそうだったから。いつかは私の方を見てもらうんだ。選抜チームに入れた私なら、星の音楽団入団は確実だってノーラも言ってた。なのに……あの子が現れた。


「こんな時期から入学なんて珍しいわね」


ノーラとも話してた。珍しいリュラ―の奏者のセシリー。北方の山の方の村から支援者にスカウトされて来た同い年の女の子。灰色の髪の目立たない女の子。最初は頼もしく思ったわ。才能の無い貴族に妬まれて、いじめられる平民は多いから仲間が増えて嬉しかった。確かに演奏の技術は凄かった。思わず聞き惚れてしまう程。でもそこまで?現役の音楽団員から声をかけられて、私のオルブライト様とも一緒に演奏して。私や他の女の子達の誘いは断るくせに!楽器のクラスが一緒だからっておかしいわよ!ヴィオラやクラヴィーアは選択する生徒が多いから、目立ってるだけなのに。


「あの三人が入団試験を受けるなら、私も受けたい!」


ノーラは次の試験を待った方がいいって言ったけど、私は我慢できなかった。だって、万が一セシリーとフィル様が一緒に合格しちゃったら、ますます私が不利になっちゃう。セシリーはともかく、フィル様が一人で合格しても他の団員に狙われちゃう!ノーラも最後は分かってくれて、三通の推薦状を集めるのに協力してくれた。それなのに……。結果は不合格。


「何よ……!こんな石、全然効かないじゃない!…………ううん、もしかして数が足りなかったのかも。それにお願いを込める時間が足りなかったとか……」


私は一人で雑貨屋へ行った。ノーラには二つって言ったけど、奮発して四つも買っちゃった。どうかあの二人がこれ以上仲良くなりませんように。次の試験では絶対合格しますように。新しく買い求めた石を大切にハンカチにくるんで毎日願いを込め続けた。それなのに、フィル様とセシリーが婚約をするかもって噂を聞いた。でもそれはただの噂!


「え?セシリーが行方不明?岩のステージから落ちたの?それは心配ね……」


嘘……。お呪いの効果があったってこと?!ちょっと怖い……けどすごい!!なんでも精霊が現れてセシリーを連れて行ったとか。街ではその話で持ち切り。セシリーを心配してる人もいたけど、別にいいじゃない。セシリーは精霊が大好きだし、精霊だってセシリーが大好きなんだから、ずっとあっちにいてくれればいいのよ。死んじゃった訳じゃないんだし。向こうで好きなだけリュラ―を演奏してあげるといいわ。


「え?ノーラ、学園辞めちゃうの?」


せっかく邪魔者がいなくなったのに、ノーラまでいなくならないでよ!何度も頼んだけど聞き入れてもらえなかった。何でよ!いつもなら私のお願いはなんでも叶えてくれるのに。ノーラったら酷いわ。でも何か思い詰めたような顔のノーラを見たら何も言えなくなった。少し前にお城の何とかっていうお役人に連れて行かれたのと関係あるの?私も元々持ってたお呪いの石を一つ取り上げられちゃったし。ノーラは詳しい事は言えないって言ってたけど、あれって危ないものなの?まだ四つ持ってるけど、たぶん大丈夫よね?ノーラは子ども騙しって言ってたし。故郷の町へ帰る時、ノーラが言ってた。『私がいなくてもちゃんと練習するんだよ。マーシーには才能があるんだから』って。そんなのわかってるけど……。ノーラがいないとつまらないわ。


「なんで……?」


春の選抜に落ちた。試験の順位も下がった。ノーラがいなくなってから、私は練習に身が入らなくなってしまったの。ノーラがいないから夜の練習もできなくなっちゃった。それにいつもは辛い時ノーラが仕事を代わってくれたり、課題を手伝ってくれたりしてたのに、今は独りでやらなきゃいけなくなっちゃった。フィル様はいつまで経っても私に冷たい。どうして?


…………そしてセシリーが帰ってきちゃった。しかも婚約って何?今度は噂じゃないの?まだ正式に発表されてないだけ?どういうことなの?


最近体が重くてますます練習に身が入らない。まるで何かが肩に乗っているみたい。大体、先生達もハミルトン様も練習しろしろってうるさいのよ。私には才能があるんだからそんなに必死にならなくても平気なの!ノーラだってそう言ってくれたもの。ねえ、そうでしょ?私はノーラの代わりにブレスレットに仕立てたお呪い石に話しかけるようになった。赤い石はだんだんと闇よりも黒くなっていったけど、それはとても美しい色だと感じてた。


「ねえ、今日も先生から怒られたのよ。どんどん下手になってるって。酷いと思わない?こんなに頑張ってるのに。それにマダムクックにも怒鳴られたわ。ちょっとお皿を落として割っただけなのにね。ちゃんと掃除もしたのに。酷いと思わない?」


視界が薄暗くなっていく。


「あのコリンナ・ハミルトンは何?元は同じ平民だったくせに偉そうに!それにあのセシリーの妹!私のフィル様に馴れ馴れしいのよ!……許せないわ。絶対に許せないわ……」


声が聞こえるの。『我を受け入れよ』って。いいわ。私の望みを叶えてくれるなら。


学園の廊下ですれ違った生徒達がはなしてる。『オルコット様とオルブライト様が登校なさってたわ』『美男美女でお似合いのお二人よねぇ。しかもお二人とも星の奏者なんでしょう?素敵ねぇ』『婚約も正式に発表されたとか!』って何それ。セシリーなんてたいしてフィル様のことを好きじゃないくせに!私の方がずっとずっとフィル様の事を好きなのに!私の方が先に好きになったのに!それなのに。目の前が真っ暗になってもう何も見えなくなった。





苦しいよ。助けてよ、ノーラ













ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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