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✧コリンナと白いお守り✧ お見舞い  

来ていただいてありがとうございます!

✧前半はコリンナ視点です




第一王子殿下のお誕生をお祝いする舞踏会には今年一緒に合格したブライアン・アスール様にエスコートしていただいて出席してきましたの。今頃はセシリーさん達が星の奏者の任命を受けていらっしゃる頃かしら。式を見られないのは残念ですわ。そしてわたくしも追いつけるようにもっと頑張らなくては!


「ああ、もうすぐ星音の宮ですね。帰ったら合奏の練習をしましょう」

「そうですわね!次の演奏会もしっかり努めてまいりましょう!」

王都からの馬車の中、わたくしの前に座ったアスール様が微笑んでおっしゃいました。どうせ同じ所へ帰るならって、一緒の馬車に乗り合わせて帰ってきましたの。アスール様とは同じヴィオラ奏者としてお話も合いますし、演奏会も何度かご一緒にやらせていただきました。とても練習に熱心な方で、この先ご一緒する仲間としてもとても尊敬できる方ですわね。


私たちは星の音楽団の団員ですから、舞踏会の後の社交はせずにすぐに星の聖地の街へ戻りましたわ。団員の鏡だと自負しております!でも、事件はその時に起こりました。


アスール様とご一緒に星音の宮の門をくぐった時、異様な気配を感じましたの。目の前に現れたのは、そう。あの時の黒い獣!と思ったのですけれどちょっと違いましたわ。


「人……?でも影のような、獣のような……?何なんですの?あれは」

「ハミルトン嬢!下がって!危険だ」

アスール様に止められてハッと我に返りましたわ。よく見ようと思ってついつい前に出てしまってました。前にセシリーさんとディオン・アーテル様を襲った黒い獣だと思ったのですが、二足歩行をしているように見えるのです。


「離れてろっ!」

「エルベ先生?!」

突然空から降って来たエルベ先生が何かを投げつけました。先生は星音の宮の二階の窓から飛び降りてきたようでしたわ。何という無茶をなさるのでしょうか!そして先生が投げつけたもの、白い、石?でしょうか?それをぶつけられた黒いなにかは人のような悲鳴を上げて走り去っていきました。


「無事か?二人とも」

「は、はい。わたくしは大丈夫ですわ。アスール様が守ってくださいましたから」

「いや、僕は何もできなかったよ。ごめん」

「逃げ出さなかっただけで十分だろう。よくやった。にしても……やっぱりまた出てきちまったか。ったくこの国の警備隊は何をしてるんだ」

「エルベ先生?」

「やっぱり狙いは俺達団員か。お前達、一応これを持っておけ」

そう言ってエルベ先生がわたくしたちに渡してくださったのは、白い小さな石のように見えました。

「これは先ほど先生があの黒いものに向かって投げていたものですか?」

「ああ、同じものだよ。俺の故郷の守り石だ。数はそんなにないんだが、とりあえずオルコットとアーデルには渡しておこうと思っていくつか取り寄せたんだ。……気休め程度に思っていたが、まさか本当に効くとはな」

力のある術師という方が清めの念を込めたものらしいのですが、エルベ先生はまゆつば物だと思っていらしたみたい。


「助けてくださってありがとうございます、エルベ先生。アスール様」

わたくしは改めてお礼を申し上げました。おかげでわたくしはかすり傷一つ負わずに済んだのですが、街の方ではどうやら騒ぎになっていたようです。ポロス学園の生徒にも被害者が出たと聞きました。一体何が起こってますの?





✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧✧



「ちょっと、お姉ちゃん!来るの遅くない?」

星の聖地の街の中央地区にある診療所に迷惑な大声が響いた。


「……元気そうで安心したわ、ロージー」

「元気じゃないわよ!昨日までは起きられなかったんだから!で?お土産は?王都に行ってたんだよね?」

「……あのね」

「あ、あとフィル様は?どうして一緒じゃないの?私を心配してたでしょ?後から来るの?まさか、お姉ちゃんが来ないように止めてるの?」

「本当に元気だね……。あとオルブライト様かお義兄様とお呼びしなさい」

「んん~お義兄様ぁ……?!なにそれ?怪しいなぁ……お姉ちゃんもしかして……」

「何が怪しいの?婚約者なんだから普通でしょ」

王都から慌てて帰って来て、急いでロージーがいる診療所に様子を見に行ったのにこれだよ……。心配して損しちゃった。


診療所のベッドの上に座ってるロージーはとても元気だった。本当に良かった。ただ、時々右の手首をさすってるのが気になった。

「ロージー、手首どうしたの?捻ったの?」

「ううん、あの黒い人に触られたのがちょっと気になってるだけ」

「え?黒い人……?触られたの?痛みは?」

「ぜーんぜん!」

黒い人……その言葉に胸の奥がざわついた。

「ねえ、黒い人って?」

「犯人はなんか黒い影みたいな人。顔は見えなかったわ」

「黒い影……それって獣じゃなかった?」

「えー、どっちかって言うと人間ぽかったけど?黒い服着てた人間でしょ?あー早く帰りたーい。ケーキ食べたーい!お姉ちゃん買ってきてよ!」

「…………とりあえずは全然大丈夫そうね」


黒い人。黒い影みたいな人。人間なの?もしかしてあの獣じゃないの?あ、でもあれは封印されたって言ってたっけ。じゃあ、やっぱり違うの?


ロージーの病室を出た私はデリクの部屋へ向かった。デリクの方はフィルが先に行ってくれている。実はデリクの方が重症らしい。襲われた時、ロージーを庇って刃物で傷つけられてしまったそうだ。刃物を持ってたってことは、やっぱりあの黒い獣、黒い精霊じゃない?のかな?それにあの様子だとまだロージーは詳しい事を知らされてないみたいね。


デリクはまだベッドで眠ったままだった。

「ああ、セシリー。どうだった?妹さんは」

「大丈夫みたい。元気すぎるくらいだった」

私は安堵半分、呆れ半分のため息をついた。

「そう。良かったね」

眠ってるデリクを起こさないように私達は小さな声でそっと会話をした。


なんとなく気まずくて視線が合わない。っていうかフィルがあまり私の方を見てくれない気がする。


「治療師の話では、時々目を覚まして水分や食事や薬をとれているそうだよ。あと、傷も左腕のかすり傷程度で縫合も必要ないそうだ。ただ心身の消耗が激しいのか、眠っている時間が長いそうだ」

「そう」

襲われたショックが体に影響してるのかもしれない。デリクは小さい時から繊細な所があるから。

「二人ともしばらく様子を見てもらえるそうだから、とりあえず付き添いは必要ないそうだ」

「じゃあ、次はコリンナ様の所へ」

「そうだね。行こうか」

フィルは私の背に手を回した。だけどやっぱり私の方を見ようとしない。


やっぱりオルブライト伯爵が独断で私達の婚約を正式に発表したから困ってるのかもしれない。どうしよう……。私からちゃんと切り出すべき?気にしてないよ、いつでも婚約解消に応じるよって。


でもどうしよう……胸が痛い。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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