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✦マーシ―と黒い精霊✦

来ていただいてありがとうございます!

少し時間が戻ります




『我を受け入れよ』


外には明るい春の日差しが溢れているはずなのに何故かとても薄暗く感じる






「ちょっと!マーシーさん!どういうことですの?!」

「何かご用でしょうか?ハミルトン様」

「っ」

コリンナ・ハミルトン男爵令嬢は一瞬言葉に詰まった。何故ならマーシー・プラットの態度がコリンナの知るものとは正反対だったからだ。どちらかと言えばおどおどとして自分の意見を言わず、ノーラ・ヒルズの後ろに隠れてるような少女だったはずなのに、今は真っ直ぐに自分を見て笑っている。ただしその目の奥は全く笑ってはおらず、むしろ敵意をむき出しにされているようだった。


(でも!そういうの、嫌いじゃないですわ!)


「春の選抜のことですわ!どうして落選なさってるの?!練習や選考会で手を抜いたのではなくて?!」

「少し体調が悪かったんです。……はあ、そんなのハミルトン様には関係ないでしょう?他人の粗探しばかりなさらないで、ご自分のことに集中されてはいかがですか?」

「粗探しなどではありませんわ!貴女は星の音楽団を目指しているのでしょう?未来の仲間を叱咤激励しているだけです。秋の選抜ではもっと頑張ってくださいませ!来年にはまた入団試験がありますのよ?あっという間ですわよ?一年なんて」


「未来の仲間……」

「そうですわ!貴女にはその実力が……」

「未来の仲間ねぇ……ふふふ、さすが現役の団員様は余裕がおありですね。でもそんな上から目線では誰からも嫌われますよ?そんなことだからオルブライト様にも嫌われるのではないかしら?」

「何故今オルブライト様の名前が出るのですか?わたくしとオルブライト様は元々何の関係もありませんわよ?大体オルブライト様はもうずっとセシリーさん一筋ではありませんか!近々お二人そろって星の奏者に任命されますし、正式な婚約発表も間近だと思いますわ!ああ!素晴らしいですわね!セシリーさんは演奏される度に技術力も表現力も向上なさってて、雰囲気も神々しくなられて、星の奏者に相応しいですわ。わたくしも頑張って後を追わなくては!うふふ、今度ご一緒に演奏会をするお約束になってますの!……コホン」

コリンナがヒートアップしている間、マーシーは俯いたままずっと黙ってコリンナの話を聞いていた。


「失礼いたしましたわ。つまり何が言いたいかと言えばですね……」

「もう結構です。次は頑張ります」

「そ、そうですの?わかっていただけたのならいいんですけれど、せっかくマーシーさんには才能がおありなのですからもっと……あら?」

すでにマーシーはコリンナに背を向けて遠くへ歩き去っていた。

「マーシーさんってあんなに速足でしたのね……って!お話の途中でいなくなるなんて、マナー違反ではありませんこと?!」

コリンナはプンプンと怒り出したが、マーシーにその声は届かなかった。




明るい表情の新入生達。これから、ふるいにかけられ落とされていく絶望も知らずに楽しそうに笑ってる。やっぱりこの春は少し変だ。世界が暗く感じる。大きなガラス窓から光がさんさんと降り注いでいるはずのカフェテリアの中も暗い。


「フィル様ぁ~」

「ちゃんとオルブライト様とお呼びしなさい!」

「もうすぐ義妹になるんだから」


やめて……あんたなんかが触らないで……私のフィル様に……全部取らないで……星の音楽団も……星の奏者も……もうやめてよ……私以外に笑いかけないで……私の方が先だったのに……


「ノーラ、助けてよ」

『我を受け入れよ』

「……いいよ」


マーシーは黒い石を連ねたブレスレットをポケットから取り出して手首にはめた。


世界はまるで星の無い夜のようになった








ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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