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セレーネ家 ①

来ていただいてありがとうございます!




「おめでとう!国王陛下が君達を星の奏者として認めるとお決めになられたよ」

演奏の後フィルと一緒に楽器を手入れしながらお城の控室にいたら、エクランド様がやって来た。

「明後日、星の奏者の称号の授与式をするそうだ」

「星の奏者……」

星の奏者は星の歌姫や星の歌い手と同じように精霊様に認められた演奏家に与えられる称号だけど、そっか、王様が決めてたんだね。………………ええっ?!フィルと私が?!ようやくエクランド様がとんでもないことを言ってるって理解できてきた。


「星の奏者ですかっ?!」

「僕もですか?セシリーだけじゃなく?」

「当然だよ。なんてったって二人とも時の聖地へ招かれた者なんだから!」

「そんな、あれは事故みたいなものなのに……」

「僕に至ってはゲイルにつ乗っていっただけなんだけど……」

フィルと私は顔を見合わせた。

「セシリーは精霊王に救われ保護された。フィルは大精霊と共に精霊界へ赴き精霊王に認められ、セシリーを無事連れ帰って来た。二人とも民からの人気も高い。星の奏者としての話題性は十分だろう。二人ともこれからも頑張ってくれたまえ!」

うわぁ……本当に大変なことになってきちゃった。どうしよう。星の音楽団にはもっと才能のあるベテラン奏者の人達がたくさんいるのに恐れ多いよ。


「さあ婚約者同士、この後はダンスを楽しんだらどうかな?できれば僕も一曲踊って欲しいなぁ」

「セシリーは演奏後で疲れていますから」

「うう……ダンスは学園で習ったんですけど、苦手なんです」

それにとてもそんな気分になれないよ。

「じゃあ、仕方ないね。残念だけどまた今度ね。練習しておいてねフィル」

「わかりました」

エクランド様が部屋を出て行ってしまうと、部屋の中は静かになった。遠くに舞踏会の音楽が聞こえてくる。


「……リー、セシリー?大丈夫?」

「……は、はい!!」

「突然で驚いたんだね、星の奏者のこと」

「あれ?フィルはあんまり驚いてないの?」

「うーん。なんとなく想像がついてたから。このタイミングで僕ら二人が王都へ呼ばれるのはたぶんそうなんだろうって。確証がなかったから言えなかったんだ。ごめんねセシリー」

「ううん。それはいいの。ただ私なんかが務まるとは思えなくて、ちょっと怖くて……」

「……また自覚無しか。大丈夫だよ。セシリーはセシリーのままで。今まで通りにリュラ―を精霊達の為に弾けばいいんだ。だって僕らの音楽は……」

「精霊様達の為だから……」

「そう。僕らはこれからも精進していけばいいんだよ」

「そうだね」

フィルには何度も助けてもらっちゃってる。私よりずっと頭が良くて大人っぽくていろんなことを知ってるし、ハープもクラヴィーアも上手だし、フィルが星の奏者に選ばれるのは納得だわ。私も早く追いつけるように頑張らないと。


「ふう……」

ようやく落ち着いて、沈み込むようにやわらかなソファに座ることができた。

「さすがに疲れたね。王家の余興とはいえ練習は必死でやったからね」

フィルも私に寄りかかるように隣に座った。不思議……。フィルの体温と重さが心地よく感じる。

「余興?」

「前座と言ってもいいかな。諸外国の招待客の前で第一王子殿下の誕生日に華を添えるための演奏だったんだよ」

「余興でも前座でも、ウィリディス様やゲイルや光の大精霊様達に喜んでもらえたから良かった」

「セシリーらしいね」

フィルはそう言いながら私の頭にキスをした。

「フィ、フィル!」

「今は誰も見てないよ。さて!流石にのどが渇いたね。メイド達も舞踏会で大忙しだし、何か飲み物を貰ってくるよ」

「じゃあ、私も」

「ううん。いいよ。セシリーは休んでて。ちょっと行ってくる」

「ありがとう」


パタンと扉が閉まって控室の中は静まり返ってる。暗い窓の外、バルコニーの向こう側には王家の森が広がってる。私はリュラ―を持ってバルコニーに出た。少し離れた庭園の向こうには明かりが見えていてわずかに舞踏会の喧騒が聞こえてくる。さっきのキスのせいで顔が熱い。ちょっとこのまま夜風に当たって冷ましておこう。

「昼間はちょっと暑いけど、夜はまだ風が涼しくて気持ちいい。……星が綺麗。そういえば、もうすぐ星まつりかぁ……」

ふと思い付いて風と星の小夜曲をつま弾いた。今年の夏は学園での演奏と星の音楽団での夜通しの演奏会がある。私もあの舞台に立てるんだ。そう思うとワクワクと緊張が交互にやってきた。どちらかというと楽しみな気持ちの方が強かった。



「失礼ですが」

「きゃあっ」

突然森の方から声をかけられて驚いた。いつから人がいたの?!全然気が付かなかった!!

「驚かせて申し訳ありません」

現れたのは黒い長髪を束ねた男の人だった。穏やかそうな灰色の瞳と表情が印象的な人。黒髪……エルベ先生やディオン君と同じ国の人だろうか?

「先程舞踏会で演奏しておられた方ですよね。確かめたいことがあってお探ししていました。リュラ―の音が聞こえてきたのでこちらへ来てしまったのです」

舞踏会中の大広間からリュラ―の音が聞こえたの?この人はどれだけ耳がいいの?


「私はヴァシスべリル王国のルネ・セレーネと申します」

あ、やっぱりエルベ先生達と同じ国の人だ。ヴァシスベリル王国といえば深い森林の国で闇の聖地がある国だったよね。そうだわ!外国からのお客様だ。ちゃんとご挨拶しなきゃ。

「あ、えっとセシリー・オルコットと申します。星の音楽団でリュラ―の奏者をしています」

片手でドレスの裾をつまんでお辞儀した。

「申し訳ありませんが、もう一度リュラ―を弾いていただけないでしょうか?」

ルネ・セレーネ様はバルコニーに手をかけてかなり切羽詰まった表情で言ってきた。

「え?ええっと、いいですけど……」

音楽好きな人なのかな?断ったら外交問題とかになっちゃうよね?


「待って、セシリー」

「あ、フィル!」

振り返るとフィルが飲み物の入ったグラスを持って部屋に戻って来たところだった。

「誰だ、君は。彼女は僕の婚約者だ。気安く近づかないでもらいたい」

フィルはグラスをテーブルに置くと私の前に立ちふさがった。

「貴方は!貴方も先程演奏なさってた方ですね!良かった!」

「え、あ、ああ、はい」

フィルは勢いがそがれて戸惑ってる。

「貴方にももう一度演奏をお願いしたいんです!!」

「…………はい?」

ルネ・セレーネ様はフィル様の手を取って嬉しそうに笑った。




「これをご覧ください」

とりあえずセレーネ様に部屋に入ってもらって、お話を聞くことになった。セレーネ様がテーブルの上に置いたのは割れたと思われる透明な石だった。

「これは……割れた水晶ですか?」

フィルがその石を手に取って眺めたから、私もフィルの手の中を覗き込んだ。何の変哲もない透き通った石に見える。


「今はそうです。しかし先程までこの石は黒く染まっていました」

石の色がそんなに短時間で変化するなんてそんなことあり得るの?

「こちらの石のように」

そう言ってセレーネ様が鍵のかかった箱から取り出したのは、今のよりもずっと大きな濃い色の黒い石だった。どこかで見たことがあるような気がするけどどこでだっただろう?

「先程のお二人の演奏の時に布袋に入れてあったこの割れた石が急に光り出したのです」

「?」

「?」

光る石があるって聞いたことはあるけど、急に光り出す石は知らない。

セレーネ様の説明では、私達の演奏中に光り出した石を手のひらに乗せて見ていたら、演奏の終わりと同時に石が澄んで透明になって割れ、中から光の球体が飛び立ったということだった。

「あ、もしかして最後に遅れて消えていった精霊様は……」

「ああ、それは僕も気が付いたな」


「その通りです。この石には精霊が封印されていたんです」

「え?」

「は?」

精霊様を封印ってそんなことできるの?そんなことをしていいの?




ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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