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王宮の舞踏会

来ていただいてありがとうございます!



「セシリー、王都に着いたら……」

「うん。わかってる。すぐに練習だよね!」

私はリュラ―のケースを抱き締めた。今回は王様からの依頼で月の竪琴を持って来ていた。

「……うん、そうだね」

「音楽団の代表みたいなものだから頑張ろうね、フィル」

「…………」


王様からの呼び出しは演奏会の依頼だった。第一王子殿下の十五歳のお誕生日のお祝いに外国のお客様を招いて盛大な舞踏会が開かれることになっていて、そこでフィルと私に演奏して欲しいとのことだった。


でもどうして私達?音楽団にはもっとベテランの上手な人達がたくさんいるのに……。最初に聞いた時は不安で少し不満だった。今回演奏する曲は過去に練習したこともあるけれど、最近はあまり弾いてなかった曲だから練習期間も無しに披露することが不安。それに私達の演奏は精霊様に捧げるためのものだから、そういう場以外で演奏するのは違う気がする。これがちょっと不満。でも、前にフィルに言ってもらったみたいに、私達は精霊様達に楽しんでもらえるような演奏をすればいい。そう思い直してフィルと一緒に王都へやって来た。ウィリディス様や他の王都の精霊様達にも会えたら嬉しいな。前にゲイルとフィルに協力してくれたみたいだし、お礼も言いたい。


「まあいいか。演奏の後で。ああ、そうだ。セシリーのドレスやアクセサリーは用意してあるからね」

「え?ドレス?アクセサリー?音楽団のローブを着ていくんじゃないの?」

「音楽団の公式行事じゃないからね。それに国賓の前での演奏だから正装で臨まないと」

「正装?!そうなの?ごめんね。そういうの、全然知らなくて……」

前の時と同じように考えてたけど違ったみたい。ちょっと怖くなってきちゃった。それにフィルにまた負担をかけちゃった。

「ああ、ごめん!脅かすつもりは無かったんだ。大丈夫だよ。僕がついてるから。それに父や母や兄達もいる。セシリーは演奏に集中してればいいから」

「うん。ありがとう」

王都へ向かう馬車の中で、フィルは励ますように私の肩を抱いてくれていた。


オルブライト伯爵様かぁ……。私はまた少し気が重くなってしまった。実は以前に一度フィルのお父様やお母様にはお会いしてる。婚約した直後に星の聖地の街へいらしたことがあって、その時にご挨拶させてもらったんだ。伯爵夫人は優しそうでにこやかな方だったけど、オルブライト伯爵様もにこやかだけどその目が笑ってないように見えたんだ……。たぶんフィルと私の婚約を良く思ってないんだと思う。星の音楽団の中ではみんな対等だというけど、外の家族にとってはそんなの関係ないもんね。やっぱり結婚なんて無理なんじゃないかな…。少しだけじゃない胸の痛みが私を苛んだ。






お城の大広間はたくさんの花が咲いたみたいだった。まるで春の庭園みたいに大輪の花がそこここに咲いてる。

「わあ、菫みたい!あっちのドレスはタンポポね。ドレスって色んな形があるのね!みんな素敵!」

楽屋から続く目立たない入り口から大広間を眺めて一人ではしゃいじゃってた。だってこんなにたくさんの着飾った貴婦人達を見るのは初めてなんだもん!みんなお姫様とか女王様みたい。


「セシリーの方が綺麗だよ」

「フィル様、それはいくらなんでも言い過ぎ……ですわ!」

今夜はお城にいるから、言葉遣いには気をつけなくちゃいけないんだ。

「本当だから。そのドレスも宝石も似合ってる。セシリーが一番綺麗だ」

「…………ありがとう」

一番なんて恐れ多いよ。そんな訳ないじゃない。お世辞にもほどがあるよ、フィル……。


フィルが用意してくれたのはクリーム色の袖の膨らんだふんわりしたドレスだった。ネックレスやイヤリングや髪飾りは青紫色の宝石で統一されてる。とても高価なものなんじゃないかって、つけてもらうのもためらった。だけどせっかく用意してくれたし、ちゃんとした格好をしないとフィルやオルブライト家に恥をかかせてしまうからってメイドさん達に言われて頑張った。


「もうすぐ出番だね」

「はい。頑張ります」

王様が入場されて、お言葉の後、楽団の演奏が始まる前に私達の演奏だ。今王様が王妃様とご一緒に大広間に入られた。結構お言葉が長い。うう、どんどん緊張してきた。フィルにも私の胸の鼓動が聞こえてるんじゃないかな。

「大丈夫だよ。一緒だから」

「フィル……様」

ふいに手を繋がれてびっくりしたけど、だんだん落ち着いて来た。

「うん。ありがとう」

フィルと笑いあって、もう大丈夫って思ったその時に私達の名前が呼ばれた。フィルと一緒に楽団の前に進み出た。用意されてるハープとリュラ―の前で一礼。うん。ここまではリハーサル通り。後は演奏するだけ。


しんと静まり返った大広間にリュラ―とハープの音が響き渡る。一曲目は森を讃える曲。ウィリディス様に感謝を込めて。もちろんお城や王都の森の精霊様達にも。次の曲は光の精霊様を讃える曲。強くて明るい陽射しが私達に恵みを与えてくださる。今は一年で一番光の精霊様達の力が強くなっていってる季節だから。


演奏が始まれば緊張も消えた。いつも通りに精霊様達を想ってリュラ―を弾く。それだけに集中できた。いつの間にか私達の周りには精霊様達がたくさん集まって、いつもよりも眩しい光が乱舞してる。たぶん光の精霊様を讃える曲を演奏したからだろうな。あ!ウィリディス様とゲイルもいる。来てくれたんだ。二人はずいぶん仲良くなったみたい。並んで演奏を聞いてくれてる。それに見たことのない金色に近い色の大精霊様がいる。フィルと顔を見合わせた。フィルも同じことを考えたみたい。たぶんあの方は光の大精霊様だ。ちょっとフィルに似た大人の男の人みたいな姿をしてる。あの大精霊様にも喜んでもらえたんだ!良かった!


演奏が終わるとみんな音もなく消えて行った。いつもおしゃべりなゲイルも今夜は何も言わずに消えて行ってしまってちょっとびっくりしちゃった。みんなが消えた後、帰りそびれたのか一人の精霊様がお客様の間から飛び立ち、同じように消えて行った。精霊様の中にものんびりしてる子がいるんだね。フィルと一緒に一礼すると、大広間の中は物凄い大きさの拍手が起こって、思わず耳を塞いじゃった。戸惑っているとフィルが私の手を取ってもう一度お辞儀をした。慌てて私も真似してお辞儀して、フィルに手を引かれて二人で大広間を出た。やっと終わった……。ちゃんと演奏できて本当に良かった。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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