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春休みと春の演奏会

来ていただいてありがとうございます!




翌日、フィルの言ってた意味がよくわかった。


結局昨日はオルブライト家のお屋敷に泊めてもらうことになったんだけど、翌日の午前中にエクランド様が訪ねてこられた。


「これはまだセシリーが時の聖地へ行く前に届いた分なんだけどね」

そういって手渡されたのはいくつかの絵姿や釣書だった。

「これからもっと届くと思うけど、()()()()ことなら片っ端から断っておくね」

エクランド様は意味ありげに微笑んだ。実は私が応接室に呼ばれた時にはエクランド様とフィル様はもうすでに何かを話し合ってたみたいだったんだ。たぶん昨日の婚約のことを話したんだと思う。


「それにしても随分早業だね、フィル。いつから君達は愛し合ってたのかな?」

「あ、あいぃ?」

お茶を飲む前で良かった。今度は本当にふき出してたかもしれない。ふいにフィルに肩を抱き寄せられた。

「結構前からですよ。お互い星の音楽団に入れたら、将来を考えようって話してたんです」

そ、そうだっけ?

「ね?セシリー」

「はひっ?はい!そうですね!そうです!」

エクランド様が笑い出した。

「プッ!まあいい。今はそういうことにしとこうか。しかし残念だね。僕も立候補しようと思ったんだけどね」

「は?確か貴方には婚約者がいらっしゃいますよね?」

「やだな、冗談だよ」

ですよね。フィル様がエクランド様を睨んだままだ。……本当に冗談だよね?


「じゃあ、この絵姿や釣書は返して、断りの手紙を出しておくよ」

「すみません。お手数をおかけして」

エクランド様は私を支援してくれている方だから、貴族の人達の窓口になってしまってるんだ。

「ではまた今度ゆっくり時の聖地の話を聞かせてね」

エクランド様は帰っていった。


「どうしてこんなに早くいらっしゃったんだろう?」

昨日の今日でそんなに早く手紙が届くはずないのに。

「ああ、エクランド家にも昨日手紙を書いたからね。最近ずっと王都ではなくこの街に滞在していたから家人に届けさせた。」

「ええ?!そうだったんですか?」

「ああ。でもまさかこんなにすぐに確認しにくるとは思ってなかったよ」

フィルは事も無げにお茶を飲んでる。予想はしたみたい。

「ああ、そうだ!寮の方にも色々届くと思うけど全部こちらに送ってもらえるように手配してあるから。これからは、僕の家も対応するからセシリーは何も気にしなくていいよ」

「寮にまで……?」


まさかと思ったけど、本当だった。その日の午後に寮に帰ったら寮母のマーガレットさんからいくつか手紙が届いてたって言われた。送り主に覚えがないものはまとめてマーガレットさんに渡すように言われて確認したけど、全部知らない人の名前だった。


「それにしてもセシリーさん、無事で良かったわ!精霊様に呼ばれて精霊の世界へ行ってたんですってね。もう!精霊様もあらかじめ伝えておいてくださったら良かったのに」

マーガレットさんはあの黒い獣のことは知らないみたいだった。余計な心配をかける必要は無いから言わなくていいかな?悩んだけどやっぱり言わないでおくことにした。フィルからはもう大丈夫だとは聞いていたから。


「ご心配をおかけしました。今日からまたお世話になります」

「てっきり星音の宮へ移るのかと思ってたから嬉しいわ!とても名誉なことですもの!これから大変だけど、頑張ってね。精霊の奏者様!」

「え?え?何を言ってるんですか!気が早いですよ!私なんてまだまだで!!」

「まあ!もう街ではその話でもちきりよ!」

「え?どういうことですか?」

「あら!知らないの?今年の新入団員(ルーキー)の中に二人も時の聖地帰りがいるって!」

なにそれ?

「オルブライト君と一緒に白馬の姿の大精霊様の背に乗って空から舞い降りてきたのをたくさんの人達が見てるのよ?そりゃあ、大騒ぎにもなるわ。本当に神々しかったもの!」

そっか、マーガレットさんも見てたんだ……。星の音楽団が定期演奏会でもないのに岩のステージで演奏を始めれば注目を浴びるよね。何だ何だって。私だって見に行くと思う。そこへそんな登場の仕方をしたら……。ちょっとした有名人どころじゃないかも。失敗した……。ゲイルにもっと目立たないところへ下りてもらうんだった。


フィルに馬車で寮まで送ってもらったんだけど、帰り際に外出する時は必ず知らせるようにって言われたのはこのせいだったんだ……。

「フィルって頭いいなぁ……。街で買い物しようと思ってたけど、今はやめておこうかな」

私は寮の練習室でリュラ―の練習を再開し、夜は遅れてしまった分の勉強をした。今はちょうどポロス学園は春休み期間だけど、私は進級試験を受けてないから三年生になれないかもしれない。

「明日は学園に行って聞いてこなくちゃ……。事務の人いるよね。補習とか再試験とかしてもらえるかな?」

時の聖地とこっちとで時間の流れが違うからややこしいことになっちゃったな。

「あーあ、ご褒美のアクセサリー、買いに行きたかったな。あとカフェの新作スイーツも食べちゃおうって思ってたのに」

教科書を閉じてベッドに入った。やっぱり自分の部屋は落ち着くみたい。すぐに眠りに落ちて、翌朝はちょっと寝坊しちゃった。授業が無くて良かった……。





星の音楽団では今、春の定期演奏会の練習が始まってる。


今回の演奏会は新入団員がメインになる曲目があって、フィルも練習が大変みたい。今回私は不参加かなって思ってたけど、なんと独奏を任されてしまった……。確かに今から誰かと合わせるのも、まだ未履修の曲を演奏するのも間に合わないけど、いきなり独奏だなんて無理がある。なんとか断ろうと思ったけど、団長さん達に押し切られてしまった。嘘でしょ……。


実は断れなかった理由がもう一つあって、最近お給料が支給されたんだ。いなかった間の分も。かなりの高額で目玉が飛び出るかと思っちゃった。さすがに何もしてないのに受け取れないから、返そうとしたのにできないって言われちゃったんだ。所属してるだけで責任が生じるとかなんとか。今回の演奏会、死ぬ気で頑張らないと!


幸い学園の方は無事に三年生に進級できるって言ってもらえた。いっぱい休んでしまってたから、補習とかあるのかと思ってたけど何故か補習も試験も免除されてた。おかげで勉強はお休みしてリュラ―の練習に集中できるようになった。


春の定期演奏会は穏やかな青空の下、花々や温かい風や光の精霊様達を讃える曲が次々と披露された。こんなに間近で音楽団の演奏を聞く事ができて幸せだった。私の演奏の前に、制服で演奏しようとしてた私をコリンナ様やクララ様、ジョディ―さんが全力で止めてきて、花色のドレスに着替えさせられるっていうハプニングもあったけど、演奏はきちんとできたと思う。


演奏の終わりには大精霊様達や精霊王様も姿を顕してくれて、星の聖地の草原は光に包まれて、一瞬で色とりどりの花畑に変わった。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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