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おかえり

来ていただいてありがとうございます!




いつしか青い空を飛んでた。

「セシリー!下!!」

「あ、星の聖地だ。帰って来れたんだ!」

フィルに言われて下を見ると草原の真ん中に巨大な岩。もう雪は無く、枯れた草原にところどころ青々とした芽が出ててる。花が咲いてる草もある。春が来てるんだ。

「岩の座だ。みんな集まってくれてる」

フィルが言った「岩の座」は星の聖地にある大きな岩のこと。私は岩のステージって呼んでる。楽器を手にした星の音楽団の人達がたくさん集まってる。精霊の世界の扉を開くために今の今まで演奏会をしてくれてたんだと思う。みんな演奏の手を止めて驚いたような顔でこちらに向かって手を振ってる。ゲイルが岩のステージに下りると、私とフィルはみんなに囲まれてもみくちゃになってしまった。あ、ゲイルは速攻で飛び上がって空から私達を見てる!「ふう、危なかった」じゃないわよ!もう!

「またねーセシリー!」

ゲイルはそう言うとどこかへ走り去って行った。たぶん精霊の世界へ帰ったんだと思う。お礼は次に会った時でいいかな。


「ご無事で良かったですわー!」

「おかえり!セシリー!」

「すみませんでした。僕のせいで……」

フィルから少し事情を聞いてはいたものの、ここまでとは思ってなかった。何だか大騒ぎになってたよ……。でも私も驚いた。私が時の聖地へ行ってからひと月も経ってたんだ。私の感覚だと長くても三日間くらいだったのに、あっちの世界って随分と時間がゆっくり流れてるんだね。ものすごく心配をかけてしまったみたいでコリンナ様やジョディ―さん、ディオン君は泣きながら私に抱きついてきてくれた。それを見て私も泣いちゃって、帰って来れて良かったなって心底思えたんだ。


「よし!このまま新団員の歓迎パーティーと無事帰還パーティーをしよう!!」

「それはいいですね!クラム団長!」

副団長のミルンさんとクラム団長が目を輝かせて話し合ってる。え?今から?

「いいねー!じゃあ酒を準備してくるよ!」

「ちょっと街へいって食料を買ってくるわ!」

「食堂へ行って頼んでこよう!」

あちこちから声が上がって団員さん達が各々走っていく。なにこのチームワーク。その後はもうお祭り騒ぎだった。宴会好きはジョディーさん達だけじゃなかったんだね。


三階のホールはいつもは全体練習に使う目的のものだと思うけど今はものすごいことになってるって。あちこちにお酒の瓶や食べ物がおかれ、みんな楽しそうに食べたり飲んだりしてるみたい。

「僕達をダシにして宴会をしたいだけみたいだね」

フィルが疲れた顔で私がいる応接室に戻って来た。フィルは一度お屋敷へ帰って事情を説明してきたらしい。すぐにこっちに戻ってこようとしてたんだけど、途中で団員さんに捕まって三階に連行されて一通りの説明をしてきたんだそう。私もここでクラム団長さんやミルンさん達に話を聞かれてたんだけど、まさかフィルがそんなことになってたなんて!


「本当なら私が説明しなきゃいけないのにごめんね。今からでも私が行って説明してくる!」

そう。私が帰って来られるようにってコリンナ様が先頭に立って演奏会を開いてくれて、みんなが協力してくれたんだから、それが筋ってものだよね。立ち上がった私を止めたのはクラム団長だった。

「それは私の役目だから、セシリー君は気にしなくていい」

「団長さん……。でも……。」

「セシリーさん。あの黒い獣の事件はこの岩の座で、星の音楽団の団員に対しての事件なの。仲間の一大事は皆の一大事。貴女は被害者。精霊様が守ってくださらなかったら、私達は大切な仲間を失うことになってたの。貴女は大変な思いをしてやっと帰って来られたんだから、対処は責任者の私達に任せて。セシリーさんは休んでていいのよ」

クラム団長とミルンさんの言葉に胸が熱くなった。仲間だと思ってもらえてるんだ。嬉しい。私は精霊様が大好きだし精霊様達の世界が嫌な訳じゃないけど、私は人間だから向こうではやっぱりちょっと寂しかったんだ。エミリアさんとフェリシアさんもいたけど、何となくあの人達はもう違う気がしたから。


「ミルン副団長の仰る通りだよ、セシリー。ひと月以上も一人でいたんだ、今はゆっくり休んだ方がいい」

「でもね、私の感覚だと本当に三日くらいしか経ってないの。特に何も食べなくても眠らなくても体は何ともなくて、不思議なくらいで」

全然って言ったら嘘になるけど、それほど体は疲れてない。ちょっとお腹が空いたかなって感じるだけ。

「なるほどね。『時の聖地』の名は伊達じゃないという事だね。とても興味深い」

クラム団長が瞳を輝かせた。

「もっと話を聞きたいところだけれど、セシリー君とフィル君はもう帰って休んだ方がいいね。また後日詳しく話を聞かせて欲しい」

「え?でも……」

私達の為のパーティーなのに、帰っちゃっていいの?そう言おうとしたけど、フィルに手を引かれて立ち上がらされてしまった。

「ありがとうございます。そうさせていただきます。では今日はこれで失礼します」

「フィル?」

「行こう。馬車を待たせてあるから」

「馬車?なんで?」

寮に帰るなら歩いていけばいいのに、どうして馬車なんて??


フィルと私が乗り込んだ馬車はポロス学園も寮も通り過ぎてしまった。

「フィル?どこに向かってるの?寮を通り過ぎちゃったよ?」

「オルブライト家の屋敷」

フィルはカーテンの閉められた馬車の窓枠に頬杖をついて答えた。なんだかすごく眠そう。

「どうして……」

「この先はちょっと大変なことになる。ハーディー・エクランドが出てくる前に君を保護しないと……」

「エクランド様?エクランド様が何を……」

聞こうと思ったけど、フィルは寝息を立て始めた。コリンナ様から聞いたけど、フィルは私が帰って来られる方法を必死に探してくれてたらしい。たぶん私よりも疲れてるんだろうな。目の下にうっすらとクマも出来てる。心配をかけてしまった事が申し訳なくて、馬車が揺れて寄り掛かってきても起こすなんてできなかった。近くにありすぎるフィルの顔が綺麗すぎて、右肩と右腕が熱くて胸の鼓動がうるさい。よく眠っちゃってるから、フィルに聞こえたりはしないよね?ちょっと、早く静まってよ……。










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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