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打ち合わせ

来ていただいてありがとうございます!




「今回は歌い手の合格者の方が多いのですね」

コリンナ様がふーむと腕を組んで考え込んだ。コリンナ様はまだ二年生だけど、リーダー気質があるみたいで演奏会の打ち合わせのまとめ役をかってでてくれた。


受かった十人のうち三人が声楽科の三年生だった。シンディー・ネーロ先輩、カーラ・アルブル先輩、アデル・ブラウン先輩。それからもう一人はディオン・アーデルさんていう歌い手の男の子。まだ十二歳だって。この子は外国から来た子でエルベ先生と同じ黒髪が印象的だった。


そしてもう一人外国から来た人がいる。クラヴィーアの奏者のアルマン・ルーフスさん。この人は貴族らしいけど、自己紹介では自分からは何も言わなかった。コリンナ様が顔見知りでこっそり教えてくれたんだ。この人は金髪で淡い菫色の瞳をしているかなりの美青年だった。クラヴィーアの奏者はもう一人、ポロス学園の三年生のアリス・エンブリー先輩。そしてもう一人の三年生はブライアン・アスール先輩、ヴィオラの奏者だ。


「時間的に三曲くらいですわね。でしたら、合唱曲を二曲、合奏を一曲ということでどうかしら」

「時間的に一人一曲が限度だろうから、それがいいと思う」

じつはある事情で演奏会は一か月後から二週間後に変更されてしまったのだ。さっさと曲目を決めないとどんどん練習時間がなくなってしまう。コリンナ様とフィル様がテキパキと話し合って決めていってくれるのでとても助かっちゃう。


「ならば合唱曲の一つは私が伴奏をしよう」

外国貴族のクラヴィーア奏者の金髪菫色瞳のアルマン・ルーフスさんが名乗りを上げた。

「まあ、よろしいんですか?助かりますわ」

「じゃあ、曲目は貴方をリーダーとするチームで決めてもらいたい」

「わかりました」

フィル様の提案を微笑みで受けるルーフスさん。物腰がやわらかで優しそうな人だなぁ。

「じゃあメンバーは……」

コリンナ様が振り返ると、三年生の先輩達が揃って手を挙げていた。三人とも頬が赤い。ルーフスさん、かっこいいもんね。気持ちわかるなぁ。


「仕方ないですわね……。ではディオン・アーデルさん、貴方は独唱ということでもよろしいかしら?」

「僕は何でも構いません」

ディオン・アーデル君はまだ声変わりをしてない男の子で、支援者が見つけてきた特別枠の受験者だってコリンナ様が言ってたっけ。それにしてもコリンナ様ってどこから情報を仕入れてくるんだろう?いろんなことをいっぱい知ってて驚いちゃうな。

「では伴奏は」

「僕、お姉さんがいいな」

ディオン・アーデル君が私を真っ直ぐに見てる。

「え?私?」

「は?」

何故かフィル様と声が被った。


「コホン……。えっとアーデル君だっけ?どうしてセ、オルコット嬢を指名したの?」

フィル様は一つ咳払いすると、アーデル君に質問した。

「リュラ―って珍しいからです。僕はあまり聞いたことがありません。ぜひ一緒に演奏してみたいんです。だめならいいです」

ちょっとシュンとなってしまった。ああ、なんだか可哀想に思えてきちゃった。

「あの、私で、リュラ―でよければやります!」

「え……」

「フィル様?」

「いや、何でもないよ」

なんだかフィル様の顔が引きつって見えるけど、気のせい?

「では決まりですわね。セシリーさんはアーデルさんと話し合って曲目を決めてくださいな」

「は、はい!!」

あれ?よく考えたら誰かの伴奏を本格的にするのって初めてじゃない?うわー、大丈夫かな。安請け合いしすぎた?でもこれからはこういう機会も多くなるだろうし、何事もチャレンジだよね。頑張ろう!


「お姉さん、僕もセシリーさんって呼んでいいですか?」

「え?うん。いいよ」

「じゃあ、僕の事もディオンと呼んでください」

「わかった。ディオン君だね。これからよろしくね」

「はい。それじゃあ早速向こうで曲を決めましょう」

三階にある広いホールの片隅で、私とディオン君とで演奏曲を決めた。といっても私は歌の事は良くわからないからディオン君の希望を聞いて、『氷の花』という曲を演奏することになった。冬らしいタイトルの可愛い歌詞の曲で、もちろん氷の精霊様を讃える曲だ。早速楽譜を借りてきて練習を始めよう。聞いたことはあるけど、演奏はしたことない曲だから急がなきゃ。星音の宮は事務室の隣が楽譜庫になってて、事務の人が司書みたいな仕事もしてるんだ。好きな時に好きな曲の楽譜を借りることができてとても便利。


一階に向かって階段を下りていると、フィル様が走って来た。

「セシリー!」

「フィル様!演奏曲は決まったんですか?」

フィル様のハープとコリンナ様とアスール先輩のヴィオラ、そしてエンブリー先輩のクラヴィーアで、結構バランスのいいチーム構成になってる。カルテットの曲は多いし、選び放題だよね。

「ああ、うん。それよりセシリーは大丈夫だった?」

「はい。よく考えたら伴奏は初めてで、でもディオン君が歌いやすいように頑張ります」

「ディオン……君?」

「ディオン君がそう呼んで欲しいそうです」

「…………」

「フィル様?」

「フィル……」

「え?」

「フィルでいいって言ったよね?」

「え……」

そういえばそうだった……。でもやっぱり呼び捨ては厳しいものがある。

「でも、あの、やっぱりそれは」

「駄目だよ。ちゃんと呼んで」

「あ、う……」

「仕方ないな。じゃあ二人きりの時だけでも」

それなら、できるかなぁ。

「じゃあ、はい、呼んで」

確かに今は周りに人はいないけど……。

「フィル」

「うん。よくできました!さあ、楽譜を借りに行こう」

「はい」

うわぁ。恥ずかしかった……。二人きりの時だけとはいえこれをずっと?いつか慣れたりするのかなぁ。無理そう……。






「雪、全然止まないですね」

「さすがにこれは恐怖を感じる状況になってきたね」

ずっと雪が降り続いてる。冬は雪深いリオ村で慣れてるとはいえ、さすがに吹雪の時は外に出られない。じつはこれが演奏会が早まった理由。精霊様が怒っててこの異常な大雪が続いてるからなんだって。なんだかそんな理由で演奏するのはちょっと嫌だなぁ。本当に精霊様のせいなの?


「寮から通うのは危ないな。セシリーは星音の宮(ここ)に一時的に滞在した方がいい」

「そうですね」

ポロス学園の寮からは徒歩で通えない距離じゃない。だけど道の除雪が追いつかなくて、歩くのも大変になってるんだよね。フィル様の提案で今日帰ったら、学園と寮に事情を説明して演奏会までは星音の宮に住ませてもらうことになった。


寮に帰る前、星降り亭のマスターにも合格の報告とお店に働きに行けないことを伝えに行ったら、物凄く喜んでくれた。

「平民の星だ!!」

って。ちょっと恥ずかしかったけど嬉しかった。それからちょうどお店にいたノーラもお祝いを言ってくれた。

「おめでとう!良かったね。来年はマーシーも行くからそれまで頑張っててよ」

「ありがとう!マーシーとノーラが来るまで頑張るね」

「うーん、私はどうかなぁ。マーシーは絶対確実だと思うけどね」

「またそんな……。あ、そうだ!マーシーはあのおまじないの石を手放してくれた?」

「ああ、うん。あれはもう使ってないよ」

「そう!良かった。あの石以外にも変なおまじないが流行ってても絶対やっちゃダメだよ」

ノーラはおまじないを信じてないみたいだから大丈夫だと思うけど、一応注意しておいた。ノーラならマーシーのことも止めてくれるはずだよね、きっと。

「ああ、私はおまじないなんてやらないから大丈夫だよ」

ノーラはそう言って笑ってた。うん。ノーラが付いててくれればマーシーはきっと大丈夫。


その後は大急ぎで学園とマーガレットさんに事情を説明してから部屋に戻った。主に着替えなんかを鞄につめていたら、エイミーに声をかけられて受かった寮の先輩たちも先に行ったと伝えられた。私も降りしきる雪の中を星音の宮へ急いだ。









ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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