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その試験の結果は

来ていただいてありがとうございます!



「やっぱり大きい!」

白っぽい岩に朝日が当たってキラキラしてる。星の聖地「岩の座」。岩のステージとも呼ばれる(テーブル)のような巨岩に沿うように星の音楽団の拠点、「星音の宮」がある。今日の入団試験の会場だ。

「緊張する……けど、頑張るぞ!」

リュラ―のケースとカバンを持ってその扉を開けた。試験会場と書いてある大きな部屋の中にはいくつもの机と椅子。リオ村の学校を思い出すけど、数がその比じゃないくらい多い。席は殆ど埋まってて、私は最後の方に来たみたい。みんな早い!私だって一時間も早く来たのに。ちょっと焦っちゃう。ポロス学園の制服を着た受験生が多いけど、私服の人やおじいさんと呼べる年齢の人もいる。静かに空いていた一番後ろの席に着いた。


そして始まった午前中の筆記試験。ペンを走らせる音が部屋の中に響く。


事前勉強をしっかりしてたから問題無し!…………だと思う。とりあえず空欄の答えは無いからきっと大丈夫!ああ、切り替え切り替え!!私の実技試験は午後からなんだから、ここからが本番だよね。今回の星の音楽団の入団試験はこんな感じで三日間行われる。フィル様とコリンナ様は明日なんだって。本当は今日マーシーがいるかなって期待してたんだけどいなかった。結局あれからマーシーとは朝の挨拶くらいしか話せてない。ノーラが言うには練習を必死で頑張ってるらしい。邪魔をしたくなかったし、私も余裕なんて無いから仕方がないとはいえ、少し寂しい。試験が終わったらまたゆっくりおしゃべりしたいなぁ。ちょっと気分が落ち込んだけど、お昼ごはんに寮の食堂でつくってもらったサンドイッチを食べたら元気が出た。厨房のローザさん、ありがとう!!







「え?登るんですか?」

目の前の長い階段を見てから、振り返った。

「ええ。実技試験はあの上で行われます」

試験管の一人の女の人、ミルンさんが案内してくれたのは長い外階段への入り口、っていうか出口。建物三階分位の階段が続いてる。そこをリュラ―を持って登っていった。登り終わると開けた視界。空が近い。ここで星の音楽団の演奏会が行われるんだ……。でも。


「高い!広い!!落ちたら死んじゃうっ!!」

「ふふふっ」

あ、笑われちゃった……。

岩のステージの上は思ったよりも広くて平たくて建物もあった。ミルンさんに聞いたら楽器や色々な道具が収納されてる倉庫なんだって。クラヴィーアも数台入ってるんだって。そうだよね。さすがに大きい楽器はここまで演奏会の度に運べないよね。なるほど、なるほど!ってそんな感心してる場合じゃなかった。


岩のステージの真ん中にはポツンと譜面台が置いてある。

「?」

他に誰もいないの?他の試験官の人は?

「じゃあ、あそこへ行って演奏を始めてくださいね、オルコットさん」

「え?え?あの、他の試験官の人はいらっしゃらないんですか?」

「ええ。私がここで見届けます」

あれ?見届ける?審査するとかじゃなくて?

「ではオルコットさんのよいタイミングで始めてくださいね」

「あ、は、はいっ!」

あ、ミルンさん、後ろに下がって行っちゃった。戸惑いはあるけど、とりあえず譜面台に楽譜を置いてリュラーをかまえた。


「いい天気」

寒いけど風が気持ちいい。どうしよう。予め演奏曲も申請してあったのに曲順も指示されなかった。

「風……」

目の前にあるのは風が吹き渡る草原。といっても今は真冬だから青々と茂ってる訳じゃない。冷たい風に故郷の山々とゲイルのことを思い出す。うん。最初の曲はこれにしよう。リオ村にいた時からずっと弾いていた曲。お母さんが好きだった曲。『雪山を巡る風』一つ深呼吸をして最初の一音をはじいた。


あれ?いつもと違う感覚がする。リュラ―の弦が違うんじゃない。音もいつも通りの音。弾き始めると精霊様達が集まってくるのもいつもと一緒。ただ……目の前に不思議な光景が見えてる。


雪の降り積もる険しい山々の間を駆け抜けるように飛んでる。晴れた山を谷を吹き渡る。木々や川面や湖面を揺らして、波立たせて、しぶきをあげて、凍らせて。私、風になってる?


いつの間にか閉じていた目を開けると、目の前には風花が舞っていた。青空に白い雪の花。そして無数の精霊様達の光。

「綺麗……」

精霊様達が踊るように飛んでる。雪の精霊様、氷の精霊様、そして風の精霊様。みんな喜んでくれてるみたい。私も楽しい気持ちになってリュラ―の音もいつもよりもっと澄んだ音になる。このままずっと曲が終わらなければいいのに。試験だってことも忘れてついつい演奏を楽しんでしまってた。


名残惜しむように最後の一音を奏でると、後ろの方で「まぁ……」と小さく呟く声が聞こえた。

「ふ、えええ?!!」

顔を上げると、そこには何人かの人と馬が立っていた。って馬はゲイルじゃない!!何でこんな所にゲイルがいるの?!驚きすぎて咄嗟に言葉が出てこない。だってゲイルと一緒に並んで立ってるのは明らかに……。

「大精霊様方がこんなに……!素晴らしいわ」

私の隣に進み出てきた試験官のミルンさんが少し赤らんだ頬に手を当てて微笑んでる。

「あ、あの、これは……?」

やっと言葉が出てきたけど未だにどういう状況なのかわからない。なにこれ?


「セシリー・オルコット」

ゲイルと一緒に立っていた人、じゃなかった、大精霊様の一人が私の名前を呼んだ。

「はいっ!」

「うむ。良い返事だ」

真っ白な体格の良い男の人の姿をしたその人は腕を組みながら笑って私に告げた。

「良い音だった。力強く疾く繊細で軽やかで。どうかそのままで。この先もそなたの音を聞かせておくれ」

真っ白な大精霊様の言葉に合わせるように、ふわふわなやはり真っ白な髪の女の子と透き通った淡い空色の青年が頷く。その横でゲイルも角をぶんぶん振ってる。なんだろ?ゲイルは喋っちゃいけないの?


「うふふ。合格ですね、オルコットさん」

試験官のミルンさんが私に笑いかけた。え?今何て言ったの?ごうかく?

「え?!合格?ですか?え?え?」

「これからも精進せよ」

そう言いながら三人と一頭は青空の中へ消えて行った。

「セシリー!まったねー!」

最後にゲイルが叫んでた気がする。残ったのは他の精霊様達とミルンさんと呆然とする私。


「さあ、試験は終了ですね。寒かったでしょう?下で熱いお茶でもお入れしましょうね」

「え?本当にこれで終わりなんですか?あと二曲あるんですけど、それは……」

「必要ありますか?大精霊様が四人も顕現なさったんですもの!十分すぎですわ!!」

ミルンさんは嬉しそうに私のリュラ―のケースを持って、私の手を掴んだ

「さ!参りましょう!新年早々良いものを見せて頂きましたわー!!」

おしとやかそうに見えたミルンさんはその後ずっとテンション高めだった。ちょっとジョディ―さんに似てるかもしれない。


その後は訳もわからないまま、星の音楽団の事務室という場所に連れて行かれて、合格の証書と今後の日程という書類を渡された。なんか書類の中の小冊子の表紙に『ようこそ、おいでませ星の音楽団へ!!』とか書いてあるんだけど、夢かな???


どうやら私は星の音楽団に入れたみたい。え?本当に?!










ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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