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異世界設備の作り方 ~元の世界に帰るために働いてたはずなのに、なぜか世界を救うことになったんですが?!~  作者: 阿理歩
第一章 王国編

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第十六話 まぜまぜ君改③

「工場長!次はこのデザインで作ってもらえないっすか」


 システィナに町案内をしてもらった次の日、イズミは朝一番で新しいかき混ぜ棒のデザイン案を工場長に見せていた。


「以前とは形がまったく違うな。しかし、日程的にもおそらくこれが最後になるはずだ。本当にこの形でいいんだな?」


「はい。これでダメなら潔くあきらめるだけっすよ」


 イズミは軽い口調で言ってはいるが、その目には揺るぎない自信があふれていた。


「わかった!じゃあこの形状で手配しといてやる。今からだと……そうだな、明日中にはできるはずだからテストは明後日だ。そこで最終判断とする。いいな?」


「了解っす!」


 工場長はイズミからかき混ぜ棒のデザイン案の原紙を受け取ると、近くにいた部下に渡し木工職人のもとに急がせた。


 イズミは自分の原紙の行方を見届けた後、改めてみんなの前に立つ。


「あの、皆さん、今回はいろいろ心配かけてすいませんでした」


「あ?そんなこと気にすんな!別にお前一人の責任じゃねぇし、な!」


「い、痛いっすよ~」


 深々と頭を下げるイズミの背中を工場長が叩く。


「まぁ、工場長の言う通りだ。回転機構についてはお前に任せっきりだったしな。それについては悪いと思ってる」


 今度はイズミに対しアベが頭を下げる。


「ちょ、ちょっとやめてくださいよ!俺が改善の工程にこだわって勝手に自滅してるだけなんすから、先輩はなにも悪くないっすよ」


「いや、こっちの世界にきて右も左もわからない状態なのに、元の世界と同じような感覚で仕事を進めてしまった責任は俺にもある」


 イズミを追い込んでしまった責任の一端を感じていたアベは、そう言いながら眼鏡の真ん中を押し上げる。


「先輩……」


「お前らなぁ、そうしみったれてんじゃねぇ。今日はこれからやることがあんだろ?なぁシスティナ?」


「はい。今日は、以前からアベさんと進めてきた撹拌(かくはん)釜の自動加熱部分のテストを行います」


「え?かき混ぜ棒がうまくいってないのに、元の構想よりバージョンアップするんすか?!ますます失敗できないじゃないっすか!」


「そりゃだって、お前どうしてもあの工程の改善をやりたいんだよな?だったら工場長に期間交渉の武器を持たせないと、だろ?」


「……そうっすね!武器は強くないと意味ないっすもんね!」


 自動加熱のことを聞かされていなかったイズミは、驚きながらも自分を信じて行動してくれていたみんなの気持ちがうれしかった。


「では皆さん、さっそく始めましょうか」


 こうして気持ちを新たにした一同は、システィナの合図のもと自動加熱のテストを開始するのであった。



◇◇



 ――そしてついにその日はやってきた。


「俺のイメージ通りっす。いつもながらいい仕事しますね」


 朝一で工場に届けられた新型のかき混ぜ棒を、イズミは手に取りながら確認する。


 撹拌工程の改善を続行するか否か、すべてはこの新しいかき混ぜ棒にかかっており、その最終判断のテストが本日行われることになっている。


「だから言ってんだろ、王国でも指折りの木工職人だって。それにしても今回はずいぶんとかき混ぜ棒の羽が小さいんだな」


「そうっすね。今回はかき混ぜる方の羽よりもこっちの方が重要っすね」


「この板っ切れか?」


「はい。水の流れはこっちの羽で作るんすけど、その水の流れをこっちの板にぶつけることで、より複雑な水の動きができるはずっすね」


 イズミは簡単なイメージを描き説明する。


 イズミの描いた絵には、釜の中心から少しずれた位置にかき混ぜ棒が一軸あり、その軸から釜の中心を挟んだ反対側の位置に板が描かれていた。


「あっ!この板が水門の柱ってことですね」


 システィナがのぞき込んできた。


「水門ってなんのことだ?」


「そ、それは」


 アベが水門に引っかかったことで、システィナは先日のことを思い出し顔が赤くなる。


「ん~、なんていったらいいんすかね……あぁ、この町のパワースポットっす」


「ま、まぁそんなことはどうでもいいじゃないですか!そんなことより、早くイズミさんはかき混ぜ棒をセットしてください!」


「……えぇ?俺が怒られるんすか?」


 そんなイズミをみて、申し訳ないと片手をあげてこっそりと謝るしぐさをするアベだった。



◇◇



「みなさん、準備はいいですか?」


 システィナの合図に皆が問題ないと返事をする。


「それではジーナさん、よろしくお願いします」


「よし!じゃあいくよ」


 ジーナと呼ばれた水魔術師は、杖を構え詠唱を開始する。


 杖の前に現れた大きな魔法陣が淡く輝きだすと、水釜を形成するための水の塊が飛び出してきた。


「システィナちゃん、いいよ」


 水釜の形が安定したところでジーナがシスティナに合図を送る。


「はい、ではイズミさんお願いします」


「じゃあ起動用魔石に触ります」


 イズミが魔石に触れると、水釜の中でかき混ぜ棒がゆっくりと回転し始めた。


「では工場長、薬草粉末を」


「おっしゃ、いくぞ!」


 工場長が薬草粉末を水釜の中に少しずつ入れていくと、かき混ぜ棒でできた水の渦に吸い込まれていく。


 薬草粉末はかき混ぜ棒が作る水の流れにのって水釜の中を進むが、今回新たに追加された邪魔板によってその進路を阻まれ四方に拡散する。


「よし!泡はできてないっすね」


「そうだな」


 水面には以前できていたぷくぷくとした泡は立っていない。


「溶け方はどうだ?」


 アベも停止用魔石の前から様子をうかがう。


「……混ざってるな」


「そうっすよね?混ざってるっすよね?これ!?」


「あぁ、よさそうだな!」


「おぉ」


 工場長の言葉に一同が安堵する。


「お前ら、まだ安心するのは早ぇぞ。本当に使えるかどうかは、ポーションになったときの品質に問題がないか確認してからだ」


「そう……っすよね、まだ喜ぶのは早いっすね」


 イズミが浮かれる気持ちを落ち着かせようと、後ろ首に片手を添える。


「喜ぶなとは言ってねぇが、まだまだやることはあるってことだ。だが……」


 工場長はそう言いながらイズミの肩に手を置く。


「この一歩はでけぇぞ」


「そうだな、イズミよく頑張ったな」


 アベもイズミに向かってサムズアップする。


「は、はい!みなさん、ありがとうございます!」


 ――それからイズミたちは、日々のメンテナンス性も考慮してかき混ぜ棒や邪魔板位置の微調整を開始した。


 そして、何度撹拌を繰り返しても薬草粉末のダマや泡立ちがないことが確認できたところで、いよいよ本番と同じ釜を使い、加熱しながら撹拌することになった。


「それじゃああたしはここいらでお役御免かね?今回はなかなか楽しかったよ。またなにかあれば言っておくれ」


「おう、また頼むな」


「ありがとうございました。またよろしくお願いします」


 そう挨拶をかわすと魔術師のジーナは去っていった。



◇◇



 その日の午後、まぜまぜ君のテストを行っているいつもの作業場にたくさんの人が集められていた。


「えー、それではこれから、加熱を含めた自動撹拌機のテストを始めます。今回は加熱処理が終わった後、濾過、調合、そして品質検査までを行います。当然まだ生産ラインにいれることはできないので、今回は急遽集まっていただいたポーション研究開発室の皆さんに協力していただきます」


 ポーション研究開発室とは、日夜新型ポーションの開発や、既存ポーションの効果改善の研究を専門に行っている部門のことである。


 実際にポーションを作って品質確認までを行える環境が整っているため、今回協力を要請したのである。


「皆さん、よろしくおねがいします」


 システィナが代表して挨拶をする。


「工場長、研究開発室ってまさか、この前の疲労&魔力回復ポーションを作った人たちっすか?」


「あぁ、そうだ。日々新しい効能のポーションや効果を高めるための研究もやってる」


「その結果があのハイテンションシスティナさんだったんすね……」


「イ・ズ・ミさん、何か言いましたか?」


 笑顔のシスティナがイズミに圧をかける。


「いや、なんでもないっす……」


「……まぁ、ああいう新しい効能のポーション作りもそうだが、材料の配合や調合方法を見直して同じ効果のポーションを安く作るための研究もしている。正直、今はそっちの方が重要だしな」


 あとからシスティナに聞いた話では、工場長はイズミたちが道具屋で店主の話を聞く前からすでにポーションの販売価格を下げるための行動を起こしていたらしい。


「アベさん、今日は新たに研究開発室のメンバーもいますので自動加熱について改めて説明していただいていいですか?」


「はい、わかりました。今回テストを行う自動加熱の役割は主に二つです。一つは温度計測、そしてもう一つは加熱です。釜内にある液体温度を計測し、規定温度より低ければ加熱し、高ければ加熱を停止させます」


「おぉ、まさに撹拌工程のために作られたような魔導盤じゃないですか。よくそんな都合のいい魔導盤がみつかりましたね?」


「いえ、この魔導盤は本来違う動作をしていましたが、今回新たに機能を追加しました」


「は?それはどういう?」


 研究開発室のメンバーが首をかしげる。


「魔導盤の内容を任意に書き換えることができるようになったということです」


「え~!」


 今までの魔導盤の常識からは考えられないような事実を突きつけられ、研究開発室のメンバーから驚きの声が上がる。


「いいかお前ら、このことはまだ公表していい話じゃねぇ。今回の試作でお前らの協力が必要だから上層部に許可を得た上で説明している。わかってると思うが他言無用だ。いいな?」


 一同は工場長の話にうなずいた。


「それでですね、加熱機能単体については先日のテストで問題なく動作することを確認していますが、薬草粉末を入れての撹拌はこれが初めてです。異常を感じたらすぐに共有しましょう」


「わかりました」


 かくして自動加熱機能を搭載した撹拌装置、通称『まぜまぜ君』の加熱テストがようやく始まるのであった。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!

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