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異世界設備の作り方 ~元の世界に帰るために働いてたはずなのに、なぜか世界を救うことになったんですが?!~  作者: 阿理歩
第一章 王国編

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第十二話 まぜまぜ君改①

ようやくここから、異世界の設備作りがスタートします。

 システィナの魔石講義から数日、イズミ発案のかき混ぜ棒の完成連絡を受けた一同は、魔導盤を使った初めての動作テストを迎えようとしていた。


「お~、このダブルかき混ぜ棒いい感じじゃないっすか!」


 イズミは、羊皮紙に書いた新しいかき混ぜ棒の絵と、それそっくりに加工された木の棒を交互に見て興奮する。


「そりゃ王国でも指折りの木工職人に頼んだんだから当然だ」


「さすが工場長!頼りになるっすね!」


「あ?ほめてもポーションやんねぇぞ?」


「いいんすよ~、もう自分で買えるんで」


 アベとイズミがこちらの世界に来て、すでに二週間近くが経っていた。


 最初の一週間は見習い扱いだった二人も、魔導盤検証の成果が認められ、無事、正式に採用されることになった。


 そして先日、少ないながらも異世界最初の給料が支給されたイズミは、嬉しさのあまり少し浮かれていたのである。


「それで先輩とシスティナさんはどんな感じっすか?」


「撹拌(かくはん)確認用の回路はできてるから、かき混ぜ棒を取り付ければいつでも動かせるぞ」


 そう話すアベの隣では、システィナが魔導盤の刻印に間違いがないか念入りに確認している。


「わかりました!じゃあちゃちゃっと付けちゃいますね」


 イズミは、釜の上部に設置された回転軸にかき混ぜ棒を取り付け始める。


「……ここをこうしてっと。よし、できました!」


「なんだ、結構手際がいいじゃねぇか」


「あれ?ほめてもなんも出ませんよ?」


「ほめてんじゃねぇ、事実を言っただけだ、事実を!ほら、さっさと次に行け」


「わかりましたよ、それじゃあさっそく動かしますか」


「あ、ちょっと待ってください」


 起動用魔石に触れようとしたイズミにシスティナが声をかける。


「テストの前に、どのような動きをするかと注意事項について説明してもよろしいでしょうか?」


「確かにそれ大事っすね、すいません、お願いします」


 イズミは手を止め、システィナの方を向いた。


「では、まず動きから説明しますね。起動用魔石に触れると、ダブルかき混ぜ棒が回転を始めます。二本の軸はそれぞれ右回りと左回りで、互いに逆方向へ回転します。回転開始から三十分後に自動停止しますが、途中で止めたい場合はこちらの停止用魔石に触れてください」


「了解っす」


「次に注意事項ですが、今回はまだ安全用の入力用魔石の準備が追い付いていません。そのため、動作中は回転体に手や服が巻き込まれないよう、必要以上にテスト機へ近づかないでください」


「動作中に問題があってもすぐ止められるように、停止用魔石の前に人を配置しておきましょう。とりあえず最初は私が停止係を引き受けます」


 アベはそう言って停止用魔石の近くに移動した。


「それではイズミさん、お願いします」


「OKっす!それじゃあ行くっすよ!」


 イズミが起動用魔石に触れると、魔導盤の刻印が淡く光り始めた。


 その淡い光は一瞬で魔源石から繋がる模様を伝い、土属性の出力用魔石に到達する。


 そして出力用魔石が光り出した次の瞬間、回転軸の根元に突如土の塊が現れ、ダブルかき混ぜ棒はゆっくりと回り始めた。


「さすが先輩とシスティナさん!一発で動いたっすね!」


「まぁこれくらいはな。じゃあ一回止めてから釜に水を入れるか」


 アベはそう言って停止用魔石に触れる。


 出力用魔石の光が消え、かき混ぜ棒の動きも停止した。


「よし止まったな。じゃあ水を入れるぞ」


 工場長はテスト用の釜の中にゆっくりと水を注いでいく。


 釜の中の液面が徐々に上がっていき、おおよそ七分目くらいの位置で工場長が注ぐのを止めた。


「まぁ、だいたいこのくらいだな」


「ではイズミさん、もう一度お願いします」


「うっす!ではでは」


 イズミは再び起動用魔石に触れる。


 先ほどとは違い水の抵抗はあるものの、かき混ぜ棒は止まることなくゆっくりと回り出した。


「水があってもちゃんと回りましたね」


「そうですね。でも、しっかりと粉が溶けるかどうかは釜の中の水の動きが重要です。では工場長、もう一度止めますので動きが完全に止まったら例のものを入れてください」


「よし、わかった」


 アベが停止用魔石に触れ、かき混ぜ棒の動きが止まるのを確認した工場長は、釜の中に細かくちぎった羊皮紙を入れた。


 その後、周囲の安全を確認したイズミは再び起動用魔石に触れる。


「お二人とも回転体に巻き込まれないよう、気を付けて中身を確認してください」


 システィナの言葉にイズミと工場長がうなずき、釜に近づく。


「……」


「……」


 十数秒釜の中を観察していた二人だったが、なぜかリアクションがない。


「どうですか?混ざってますか?」


「ん~、なんか上のほうは混ざっているような……。工場長、どう思います?」


「……わからんな」


「ですよねー」


 確かに釜の中はかき混ぜ棒で水の流れはできており、細かくちぎった羊皮紙もその流れに乗って動いていた。


 しかし、釜の底や隅までまんべんなく水の流れができていたかというと、目視で確認することはできなかった。


「やっぱりな」


「やっぱりですね」


 アベとシスティナが声を揃えてつぶやく。


「う……いけると思ったのに」


 そんな二人の言葉を聞き、イズミが肩を落としてうなだれる。


「午後から水魔法を扱える魔術師の方を呼んでおいて正解でしたね」


「まぁ、こうなるとは予想できていましたので。だから言ったじゃないですかイズミさん」


 アベとシスティナはこうなることを見越して、水魔法を使える魔術師を呼ぶことを提案していた。


 水魔法を使えば釜の形状に水の形を維持することができるため、釜がない状態での実験ができるからだ。


 当然、釜がなくなれば目視確認が抜群にしやすくなる。


「はい、すいませんでした……」


「でもまぁ、魔術師を呼ぶのだってただじゃねぇんだ。釜がある状態で確認できるに越したことはないが、それが無理だと分かっただけでもいいじゃねぇの?」


「工場長~!」



◇◇



 昼休憩を挟み、呼んでいた魔術師が到着した。


 その魔術師は杖をついた小柄な老婆で、昔は冒険者としてAランクパーティにも所属していた凄腕らしい。


 現在は家庭を持ち、隠居生活をしているらしいが、こうしてたまに魔術師としての依頼を受けているとのことだった。


「よう!ばあさん、相変わらず元気そうだな!」


「なに言ってんだい。あんたこそちょっと見ない間に見事な頭になっちゃって」


 工場長と魔術師は、軽い挨拶をしながら握手を交わした。


「……ちょちょちょちょっ!いいんすかシスティナさん!あの魔術師の方、工場長のことイジってますけど!」


 和やかな雰囲気だとは思ったが、工場長の後ろにいたため表情が見えなかったイズミは少しドキドキしていた。


「良いんじゃないですか?だって、工場長の奥さんの叔母にあたる方ですから」


「へ?あ~、なんだかおかみさんと口調が似てると思ったら、叔母さんっすか!びっくりした~」


 修羅場になると思い胸をなでおろすイズミ。


「……フフ」


「なんすかー?」


「いえ……確かに似てますね」


 そう言うとシスティナも魔術師の方に向かって行った。


 それを見てアベとイズミも後に続く。


「ジーナさん、ご無沙汰しております。今日はよろしくお願いします」


「あぁ、システィナちゃんかい。今回はなかなか面白そうな依頼だね」


「はい。内容は事前にお伝えしていた通りですが問題ありませんか?」


「あたしを誰だと思ってるんだい?いつでも始められるよ」


「初めまして。アベと申します。本日はよろしくお願いします」


「同じくイズミです。よろしくお願いしまっす!」


「へぇ、あんたらが噂の異世界人かい。二人ともなかなかいい男じゃないか。ねぇ、システィナちゃん?」


「な、ななななにを言ってるんですか!挨拶も済んだようですので早くやりますよ!」


 顔を真っ赤にしたシスティナは作業場にそそくさと歩いて行ってしまった。


「先輩、あのおばあちゃん只者じゃないっすね」


「……なんのこと?」


 工場長だけでなくシスティナまでイジるおばあちゃんを見て、イズミは衝撃を隠せなかった。



◇◇



「じゃあいくよ!」


 ジーナはそう言うと、目をつむりながら右手で杖を構え、左手の手のひらを正面に突き出す。


 詠唱を開始すると、構えた杖のすぐ先に大きな魔法陣が空中に現れた。


 その魔法陣が淡く輝きだすと、中央から水の塊が飛び出し釜の形を形成していく。


「うおおおお!こ、これが魔法!」


 イズミが目をキラキラさせながらジーナの一挙手一投足に注目していた。


 アベも実際、魔法らしい魔法を初めて見たため内心興奮していた。


「いや、刻印魔法のときと全然反応が違うのですが」


 そんなイズミとアベを見て、システィナの本音が漏れる。


「それにしても見事だな。釜の形、大きさともに完璧だ」


 工場長の言う通り、ジーナの作り出した水の釜は先ほどまでテストで使っていた鉄の釜と瓜二つであった。


「これめちゃくちゃすごくないっすか?透明の釜ができちゃいましたよ?!」


「じゃあ次は釜の中に水を入れていくかね」


 ジーナはそう言うと、再び詠唱を始める。


 すると、釜の形を形成するための魔法陣とは別の魔法陣が現れ、その中央から飛び出した水が釜の中に注がれていく。


「あれ?普通の水を入れないんすか?」


「普通の水を入れてもいいけど、水釜を消したらそこら中水浸しになるよ」


「あぁ、魔法で出した物体は魔力の供給を切ったら消えるんでしたね」


 ジーナの言葉にアベが納得した。


「それにしてもシスティナさん、水魔法を使える方って皆さんこんなことできるんですか?」


「釜の形状を再現するなら可能ですが、それを長時間乱れなく維持することは難しいです。ましてや同時に二種類の魔法を扱うなんて、並みの魔術師では不可能ですね」


「ほめてくれるのはありがたいけど、何時間も釜の形を維持するのは無理だから早くやっておくれ」


「そうですね。ではみなさん、先ほどと同じ役割でいきましょう。配置についたらイズミさん、起動をお願いします」


「了解っす!」


 システィナの声で、全員が位置につく。


 工場長が細かくちぎった羊皮紙を魔法で作った釜に入れ、イズミが起動用魔石に触れる。


「……おぉ、いいんじゃないっすか?!どうっすか工場長?」


「そうだな。見た感じムラなく混ざってるな」


 一点の濁りもない透明な水釜の中で、羊皮紙は水の流れに乗って釜の中を駆け巡っていた。


 その後数分間かき混ぜ続けてみたが、羊皮紙が底に溜まることもなかった。


「……よし、じゃあ次は実際の薬草粉末を使って試すぞ」


 工場長から薬草粉末でのテスト許可がおり、張り切って準備するイズミ。


 このまま順調にいくと思われたテストだったが――


「……うそでしょ」


「これはダメだな」


 工場長の無慈悲な判定が下されたのだった。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございます。

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次回もよろしくお願いします!

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