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「......情報を漏らさないでくれないか?」

「なら」


男の問いに白石はケースへと視線を向ける。


「っあ、お金がひつ.......」

「必要じゃない。まずはそのケースを閉めることだ。こちらにちらつかせるように開けるんじゃない。俺たちが依頼を受けるかどうか、話を聞き終えるまではその金に価値はねえよ」


「さすが白石だね」と奏は呟く。

男は焦ったようにアタッシュケースの蓋をバタンと閉じて、白石に向き直った。


「情報を他に漏らさないのは、この世界の最低限のルールだ。そこは安心しな。で、依頼内容は?」

「実は……昨日、あの学校で騒ぎがあっただろう。侵蝕獣が出たっていう……。あの混乱の最中、学校の敷地内に、あるサンプルを落としてきてしまったんだ。ファタムが本格的な調査を始める前に、何としても回収してほしい」


その言葉に、カウンターの奥で静かに控えていた創也の目がわずかに細められた。

白石もまた、タバコを咥えようとした手を止め、男をじっと見つめる。


千景が奥の部屋でまさに調査している最中の事件。

その渦中にある学校に、この男は何かを持ち込んでいたということだ。


「サンプル、ね。具体的にどんなもんだ?」


白石が探るように尋ねると、男はさらに顔を青ざめさせた。


「形は、整った小さな球体だ。……まるで何かの『核』のような、な」


男はそう言って、さらに声を潜めた。


「実は、昨日あの学校にそれを持ち込んだのは……私なんだ。だが、予想外のトラブルが起きてパニックになり、現場に落としてきてしまった。指示されてしたことなんだが今日の夜が期限だ。そして私が失敗したことを知られれば殺される......」

「自分で回収しようとは思わないのか?」


白石が冷淡に問い詰めると、男は顔を両手で覆い、ガタガタと激しく震え出した。


「無理だ、私じゃもう学校に近づくことすらできない! 昨日の思ったよりも侵食獣が早く倒されたせいで、学校の周囲にはファタムの息がかかった監視の目が光ってる。それに、私が持ち込んだあのサンプルは、一度設置されたら周囲の空間を認識してロックがかかる仕組みなんだ」


男は涙目になりながら、すがるようにカウンターを叩いた。


「あれは一定時間が経つと自己防衛のために触れた者を拒絶する。私のような一般人が迂闊に触れれば、その瞬間に肉体を侵食されて消滅するんだ……! 回収するには、怪物と渡り合えるだけの特別な力が必要になる。だから、君たちのような専門の裏稼業に頼るしかなかったんだ!」


そこまで言い切って男は机に突っ伏すようにして激しく息を荒くした。

恐怖と焦燥で完全に余裕を失っている。

みきゃん

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